表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ダークエルフの召喚士 ~精霊の森の生き残り、魔法学校へ行く~  作者: しゃぼてん
2章 召喚士の誕生 ~封印された記憶~

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

14/226

14 週末の予定

 数日後。金曜日の朝。

 食堂で朝食を食べながら、イーアは元気よくユウリに言った。


「やっと金曜日だー! ユウリ、明日はどうする? やっとお休みだよ? どこ行く? どこで遊ぶ?」


 ユウリは朝食の目玉焼きをナイフとフォークで上品にカットしながら落ち着いた声で言った。

 

「ぼくは、週末は師匠のところへ行くよ」


 すっかりユウリと一緒に遊びに行くつもりだったから、イーアはおどろいて聞き返した。


「え? 師匠? なんで?」


「入門するためだよ。ぼくはホーヘンハインに行って正式に弟子入りするんだ。教わりたいこともあるから、そうじゃなくても行くつもりだったけど」


「へー。ホーヘーハヒン……」


 休日に帝都の観光に行こうと思っていたイーアはがっかりした。


「週末は全力で遊ぼーっと思ってたのに。ユウリはいないのかー」


 イーアが嘆いていると、ユウリが逆に不思議そうにイーアにたずねた。


「遊ぶ? イーアは行かなくていいの?」


「え? どこに?」


「どこにって。ウェルグァンダルに。入門するんだろ?」


 イーアは首をかしげた。


「そうなの? そっか。そうだよね。入門する約束で授業料払ってもらったもんね。わたし、入門するんだった。でも、なにも知らないよ?」


 学費は全部払ってもらったけど、イーアはウェルグァンダルについては何も知らない。

 奨学生試験の日以来、ウェルグァンダルの人には会っていない。

 部屋の中に手紙はあったけど、本の説明しか書いてなかった。


 ユウリはちょっと困った顔でイーアに提案した。


「ウェルグァンダルに連絡してみたら?」


「連絡かー。そうだね。お礼もしてないもんね。とりあえず、手紙を送ってみよっかな」




 その日の放課後。イーアは部屋に戻るとさっそく机の前に座った。

 机の隅には、最初に部屋に入った時から置いてあった切手と小さなベルがついた赤い箱がある。

 

 イーアはまずは校内の売店で買った手紙用の紙を机の上に置いた。

 ペンをインクにひたして、イーアは手紙を書いた。


「わたしの名前はイーアです。グランドールの授業料を払ってくれてありがとうございました。授業は大変だけど毎日楽しいです。今度ウェルグァンダルに遊びに行っていいですか?」


 書き終えて、イーアは首をひねった。


「遊びに、じゃだめかな。勉強しに、にしないとかな」


 イーアは面接の時に会った暗くて怖い感じの魔導師を思い出した。

 あの人だったら、「遊びに、だと……?」とか言って手紙を破り捨てそうだ。

 イーアは書き直すことにした。

 イーアは最後を「ウェルグァンダルに勉強しに行っていいですか?」に変えて、もう一度手紙を書き直した。


「これでオッケー!」


 イーアは書いた手紙を封筒にいれて封をした。

 そして、最初から机の上に置いてあった<ウェルグァンダル>と書いてある切手を貼った。

 すると、封筒が宙に浮かび、端の方からスーッと透明になって消えていった。


「え!? 手紙、消えちゃったよ!?」


 イーアは見まちがいかと思って、机の上や下をよく探したけど、やっぱり手紙はどこにもなかった。


「消えちゃった……!」


 イーアはこの驚きを誰かに話しかけたかった。

 いつもはたいてい横にユウリがいるけど、今は誰もいなかった。

 だからイーアは部屋の外に出て、誰かを探した。

 廊下には誰もいなかったけど、2つ向こうの部屋はケイニスの部屋だったので、イーアはケイニスの部屋のドアをドンドンと叩いた。


「どうぞ」


 中から声が聞こえたので、イーアはドアを開けて勢いよく言った。


「ケイニス君! 切手をはったら、手紙が消えちゃったんだよ!」


 勉強中のケイニスは、迷惑そうな表情で振り返って落ち着いた声で言った。


「魔切手。それを貼れば瞬時に切手の宛先に届く。金持ちや貴族はみんな使っている」


「へー。そういう切手なんだー。知らなかったよ」


 ケイニスはイーアを無視して勉強を再開した。

 イーアも納得したので、自分の部屋に帰った。

 自分の部屋のドアをしめながら、イーアはつぶやいた。


「ふぅー。なんだか、一人部屋って落ち着かないなぁ。なんで一人部屋になっちゃったんだろ」


 キャシー達は個室ではなかった。女子も普通は2人部屋らしい。


「一人部屋だと、独り言が多い人になっちゃうよー」


 イーアが一人でつぶやいていると、突然、机の上においてあった箱のベルが鳴った。

 

「なに!? こんどはなに!?」


 イーアは急いでベルのついた箱のふたを開けた。

 箱の中に、メモ用紙みたいな小さな紙きれが一枚入っていた。さっきまではからっぽだったはずなのに。

 箱の中の紙には魔切手が貼ってある。

 魔切手には、W1027と書いてあった。

 この数字はどこかで見たことがある。

 イーアはふと気がついて、赤い箱の側面を見た。そこには、白い文字でW1027と書かれていた。


(なるほどー。このベルがついた箱は郵便用の箱なんだね)


 魔切手が貼られた郵便物が届く郵便箱だったらしい。

 イーアは箱の中に入っていたメモ用紙を取り出して読んだ。


「明日、ウェルグァンダルに来い」


 メモにはそれだけ書いてあった。

 イーアの手紙への返事のようだ。

 イーアはそのメモを見ながらつぶやいた。


「オッケー。じゃ明日、ウェルグァンダルに行こー。……どうやって?」


 イーアはウェルグァンダルがどこにあるのか知らない。

 イーアはメモ用紙をひっくり返したり透かしたり、よく見てみたけど、ウェルグァンダルの住所やどうやって行くのかは、どこにも書いてなかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ