表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ダークエルフの召喚士 ~精霊の森の生き残り、魔法学校へ行く~  作者: しゃぼてん
第2部 密林の巨鳥と水竜 1章 バララセ大陸へ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

100/226

2-2 冬休みの話1

 話はイーアがバララセに旅立つ何ヵ月も前に戻る。

 イーアは、グランドールの地下の大鍾乳洞で『支配者の石板』の欠片を奪った後、そして、オレンとの決闘が終わった後、すぐにウェルグァンダルに向かった。

 そのままイーアは冬休みの間ずっとウェルグァンダルの塔に滞在していた。

 ちょうどゲオの補習の予定があったし、なにより、<白光(ロウシア)>が狙う秘宝、石板の欠片を手にした今、イーアがグランドールに戻るのは危険だったからだ。


 ウェルグァンダルの自分の部屋で、イーアはヤゴンリルを呼んだ。グランドールの地下の様子を聞くために。

 ウェルグァンダルについてから、イーアはすでに一度ヤゴンリルを呼んでいた。その時は、マーカスのことを聞くために呼んだ。マーカスの遺体は大鍾乳洞の崩落にまきこまれて、地下深くに落ちてしまったらしい。せめて遺体を家族のもとに帰してあげたかったけれど、難しそうだった。


 小さな部屋に巨大なヤモリみたいな霊獣ヤゴンリルがあらわれた。

 黒と紫のごつごつした皮膚の巨大なトカゲみたいな生き物が狭い部屋の壁いっぱいに張りついている。

 ヤゴンリルは見た目が凶悪な魔獣みたいなせいもあって不気味な光景だけど、イーアは気にせずたずねた。


『ヤゴンリル。今、グランドールの地下はどうなってる?』


 ヤゴンリルは細長い舌を出し入れしながら答えた。


『祭壇のある鍾乳洞は崩落がひどかったが、すでに落ち着いた。あれ以来、特に変化はない。もちろん、モルドー様の不在は、我々にとって大きいが……。モルドー様のお世継ぎは無事か?』


『ガリに預けたよ』


 『ギアラドを継ぐ者』と岩竜モルドーが言っていたのは、ガリのことで間違いなさそうだ。

 ガリは昔グランドールの生徒だった頃、地下でモルドーに会っていたらしい。

 イーアが岩竜モルドーから頼まれたことを話すと、ガリは『俺にギアラドの血が流れているのはたしかだが、血は水のようなもの。無意味だ』とすげなかった。だけど、岩竜のたまごの面倒はみると言って、預かってくれた。


 ヤゴンリルは言った。

 

『そうか。……そういえば、変わったことといえば、ひとつ。祭壇(さいだん)付近に紫色の、そこに浮いているのと同じ、小さい妖精がいる』


 ヤゴンリルが先っぽがふくらんだ指でさしているのは、イーアの近くに浮いている青いチルランだ。

 イーアはふよふよと浮いているチルランを手にのせてヤゴンリルにみせた。


『チルランのこと? チルランが祭壇のところにいるの?』


『ああ。精霊語を話さぬから事情がわからぬが、以前はこんな妖精はひとりもいなかった。あの事件の後、突然あらわれたのだ』


 イーアは、青いチルランをガネンの森の洞窟(どうくつ)の、祭壇の傍で見つけた時のことを思い出した。

 あの洞窟には、昔からガネンの森にいるオレンジ色のチルランはたくさんいたけれど、青いチルランは、このチルランひとりだけだった。

 たまたま青いチルランが生まれただけ、と思っていたけれど。


『チルランがいないはずの場所に紫色のチルラン……? 何か理由があるのかも。ヤゴンリル。お願い、その子のことを守って』


『造作もない。大鍾乳洞に住むものたちに見守るように言おう。それはそうと、ひとつ、モルドー様に申しつけられていたことがあるのだが』


『なに?』


『もしも祭壇の秘宝を奪いに来た者の手によってモルドー様に万一のことがあった場合、地底湖のほとりの封印扉の先にある(ひつぎ)を開けるようにと。我らは代々そうおおせつかっている。我が代でこの申し付けを実行することになるとは……』


 ヤゴンリルは気落ちした様子でそう言った。


『そこには何があったの?』


『まだ開けていないのだ。そこにあるのは、あの石板に関係することだろう。ガネンの子よ。石板の守護者として、棺の開封に立ち会うか?』


『うん』


 そこに何があるのかわからないけれど、とても気になる。

 だけど、グランドールの地下に行くためには、当然、グランドールに戻らないといけない。

 イーアはまずはグランドールに戻ってもだいじょうぶそうか、ガリに話を聞くことにした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ