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ダークエルフの召喚士 ~精霊の森の生き残り、魔法学校へ行く~  作者: しゃぼてん
2章 召喚士の誕生 ~封印された記憶~

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10 入学式

 今日はグランドール魔術学校の入学式の日だ。

 イーアとユウリはグランドール魔術学校の真新しいローブを着て、入学式の行われる大講堂の建物へ向かって歩いていた。

 講堂へ向かう道をたくさんの親子連れが歩いていた。

 貴族っぽい人達もいる。

 イーアはこそこそとユウリにささやいた。


「ユウリ、貴族っぽい人がたくさんいるよ?」


「グランドールの入学者の3分の1くらいは貴族らしいよ。入学試験も別だから、ぼくらが会うことはなかったけど」


「へぇ」


 そこで、ユウリは近くを歩いていた少年に声をかけた。


「ケイニス、おはよう」


 ケイニスは奨学生試験で受験番号1番だった生徒だ。

 試験の時にずっと隣だったから、ユウリはケイニスと知り合いになっていた。

 ケイニスが振り返り、あいさつを返した。


「おはよう」


 ケイニスは肌の色が他の人より黒くて鼻が高くて、そして、とても頭のよさそうな顔をしている。

 ユウリはイーアに言った。


「イーア。ケイニスは今年の奨学生試験の成績が一番で特別奨学生に選ばれたんだよ」


「へー。すごいね。ケイニス君」


「別に」


 ケイニスが無表情にそう言った時、ケイニスの後ろで貴族っぽい少女が立ちどまった。

 そして、貴族っぽい少女は声をかけてきた。


「あーら、ケイニス。ごきげんよう」


 金髪の巻き髪のお人形さんのような少女だ。

 ケイニスは振り返ると、少女にむかって深々と頭をさげた。

 ユウリやイーアに対する態度とは、全く違った。


「おはようございます。ローレインお嬢様。ご入学おめでとうございます」


 ローレインは金色の髪の毛を触りながら言った。


「いいのよ、ケイニス。頭をあげなさい。ここは学校。あなたが使用人の子であろうと、わたくしたちは同じ生徒なんだから」


 ケイニスは頭をあげなかった。無言で頭を下げ続けている。

 イーアとユウリは何も言わずにその光景を見ていたので、なんだか気まずい無言の沈黙の時間が何秒も流れた。

 やがてローレインは言った。


「それでは、ごきげんよう。平民クラスの方々」


 ローレインはイーアとユウリの方に優雅に手を振って去って行った。

 ローレインの長い金髪が豪華な刺繍のついたローブの上で優雅に揺れるのを見送りながら、イーアは、ふと気が付いた。

 

「貴族の子たちって、ローブのデザインもちょっと違うんだね?」


「うん。クラスも違うらしいよ。学内であまり一緒になることはないのかもね」


 ユウリがそう言うと、ケイニスはしかめ面で言った。


「その方がいい。あいつらは金を積んで入ってくるだけで、能力はないんだ。俺たちとは違う」


(ケイニス君は貴族が嫌いみたい……)


 イーアは何となくそう思った。

 田舎町のオームには貴族なんていなかった。だから、イーアにとって貴族は単に別世界の人達だった。

 でも、貴族の使用人の子として育ったケイニスにとって、貴族はもっと別の存在のようだ。


 入学式が行われる講堂前の掲示板に、クラス分けが掲示されていた。

 イーアはクラス分けを確認した。


「よかった。ユウリと同じクラスだ! 成績順だったら絶対に同じクラスになれないから別のクラスかと思ったけど。よかったー」


 イーアがユウリにそう言っていると、後ろから声がした。


「ふーん。君、ちゃんと入学できたんだ」


 イーアが振り返ると、そこには奨学生試験の時に会った、何かといやみな少年がいた。

 イヤミな少年はイーアを指さして言った。


「君なんか、奨学生試験に落ちたら貧乏すぎて入学できないんじゃないかと思ってたけど」


 ユウリは、イーアのローブの袖を引っ張った。


「行こう。イーア」


 ユウリは、「こんなやつ相手にするな」と表情で言っていた。

 でも、イヤミな少年は言った。


「待てよ。同じクラスなんだから、自己紹介くらいさせろよ。俺はマーカスだ」


 イヤミな少年も同じクラスらしい。


「わたしはイーア。こっちはユウリだよ」


 ユウリは無言だったけど、イーアは愛想よくそう教えてあげた。

 マーカスは言った。


「知ってるよ。ユウリ君のことは。たくさんの魔導師から弟子入りの勧誘が来た天才だろ? 俺はイーアの妨害のせいで奨学生試験は失敗したけど。見てろよ。その内、俺が天才を追い抜いてやる」


 そう言って、マーカスは歩き去って行った。 


「なんなんだよ。あいつ」


 ユウリは小声でそうつぶやき、イーアは言った。


「マーカスって、個性的だよね」


「あれ、個性的っていうのかな……」


 ユウリは困ったようにつぶやいた。

 それから、イーアとユウリも入学式の行われる講堂の入り口に向かった。

 でも、入ろうとしたところで、ユウリは女の先生に呼び止められた。


「師匠が来てくれてるんですか?」


 人が多くてうるさいのでイーアは先生とユウリの話を全部聞きとることはできなかったけど、ユウリがそう聞き返す声は聞こえた。

 ユウリはイーアに言った。


「イーア。ぼくは師匠に会ってくるから、先に入ってて」


「うん。じゃ、また後でね」


 イーアはユウリと別れ、一人で式場の中に入った。

 入学式でも、貴族と平民の席は分けられていた。


 イーアが平民の入学者用の席に座って待っていると、隣の席に誰かが座った。

 ユウリではない。

 まだ会ったことのない、かなり背の低い男子生徒だ。

 なんとなく庶民の出だというのが、雰囲気でわかる。

 向こうもイーアに同じことを感じたようで、気軽に話しかけてきた。


「よ。おれはオッペン。おまえは?」


「イーア」


「おまえはどこから来たんだ?」


「西のオーム」


「へぇ。おれはイグランから。知ってる? イグラン」


「ううん。どこにあるの?」


「ここよりちょっと東にあるちっちぇ町だよ。都会のやつらは貧乏人の町ってバカにすっけど。いいとこだぜ? 今度来いよ。うわっ。見ろよ。あっちに貴族がいっぱいいる」


 オッペンは貴族の保護者席を眺めながら言った。

 入学者はグランドールの制服を着ているから服装の違いがあまり目立たないけど、貴族の保護者はイーアが見たことがないほど高価そうで派手な服装をしていた。

 オッペンは動物園の動物を眺めるように貴族の席を見て言った。


「貴族って変な格好だよな。男なのにでっけぇリボンとかつけてやがるぜ?」


「オッペン。大きな声で言うと、聞こえちゃうよ?」


「だいじょうぶだよ。ガヤガヤうるさいから。それに、聞こえたって問題ないだろ?」


「そうかなー」


 そんなことを話している内に入学式が始まり、なんだか色んなあいさつとかがあったけど、イーアが何も聞かずにぼーっとしている内に式は終わった。


「じゃあな、イーア。また後でな。おれ、母ちゃんにバイバイ言ってくっから」


 式が終わると、オッペンはそう言って、平民の保護者席にむかって歩いて行った。


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