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第42話 落ち着く相手。視点、皇二

「皇ニさん、もう腕限界です! 降ります!」


 彼女はゆっくりと下降し、ハワイと思しき離島の一つに向かう。

まさか本当に8時間かけて太平洋を横断し、ハワイへ来るなんて。

空から見下ろす透き通るような海、点々と見える白い砂浜。

ジャングルが至る所にあるが、空港もあってタイムスリップしているわけではないことを気付かされる。

思えば彼女に抱えられた俺は大して苦労はなかったが、長時間人を抱えて飛行するのはかなりの労力だろう。


 ピタッと8時間ぶりに足を土の上に乗せ、周囲を見渡してみた。

ここはハワイ......なんだよな?

スマホで場所と方角は確かめていたが、もっとこう賑やかな印象があった。

しかし、実際目に映る光景は沖縄に田舎風景と大して変わらない。

俺はもう一度スマホでマップを確認した。

確かにハワイ島に現在地が示されている......だが拡大するとパハラという日本人の俺には聞き馴染みのない地名だった。

ていうかハワイって島が何個もあるんだな。

ということは1週間以内......というか実質あと6日以内に皇気のいる場所を特定しろっていうのか?

無謀すぎるし、たとえ6日という制限がなくても探せっこないぞ?

いや、天使の能力を使えば何かしら手がかりが見つかるかもしれない。


「メリディアナ、疲れてるところ悪いんだが」


 振り返ると、ヤシの木の下に腰を下ろしている彼女がいた。

近寄ると吐息が聞こえており、明らかに眠りに入っている。

うーん、疲労困憊の彼女を無理やり起こすのも忍びない。

仕方ない、今度は俺が彼女を背負ってどこか泊まれる場所を探すか。

力を入れてメリディアナを背に乗せると同時、とんでもない事実に気づく。

背中に、彼女の柔らかな膨らみが押しつぶされて接触するのだ。

おまけに彼女の頭が右肩に乗っかり、汗と甘い匂いが鼻を通る。

ダメだ、ここまで運んでくれたメリディアナになんて邪な感情を抱いるんだ!

俺は両頬を叩いた後、日差しで熱されて鉄板のようになった道路脇を歩いた。

夏ということもあってか、延々と木々が続く道は身体に堪える。


「ヘロー!」


 恐らく30分ほど無心に近い感覚で足を前へ出し続けた。

脳内では水を欲する声が鳴り止まないタイミングで、現地人らしき人物がトラックから腕を出して話しかけてきた。

俺は拙い英語を駆使し、トラックの行き先まで運んでくれないかと交渉を試みる。


「オーケー!」


 なんでも頼み込んでみるもんで、交渉は無賃で済みパハラの中心部までたどり着いた。

途中、観光客用の宿屋についても情報収集できた。

ここが中心部......なんだよな?

やはり印象としては沖縄の田舎風景とさほど変わりがなく、違いがあるとしたら行き交う人々がアジア人ではないことぐらい。

観光地というより、現地人の住宅地という感じなのだろう。


 またしばらく歩くと、青いペンキで塗りたくられた木造の長屋のような建物が現れた。

1階の屋根の上に置かれた看板には、「パハラホテル」と英語で表記されている。

地名が使われてるとか、もしかしてここしか宿屋がないのかな?


 ふぅ、なんとか1部屋借りることができた。

外貨両替機があるか不安だったが、田舎とはいえ観光客用のホテルだけある。

しかし......ツインとダブルを間違えて連呼してしまった!

ダブルベッドがどしんと佇む部屋とか、男女2人でここに寝るとか。

天使でなければ完全に引かれていたな。

俺は未だスヤスヤ状態の彼女をゆっくりとベッドの上に、横にして降ろした。

ま、まぁ誠実な男であればこんな状況へっちゃらだよな。

そうだ、シャワーを浴びて臭いをとっておかないと。

流石にこの汗臭いままで隣に寝るのは、モラルがない。


 水からお湯になるのが5分ほどかかる欠陥シャワーを浴び、俺はふと冷静になった。

俺たち2人、完全に不法入国者だよな。

パスポート持ってないのバレたらヤバイどころの騒ぎじゃない。

あぁ、しょっぴかれることに怯えながら皇気のこと探せるのかな?

それに、1週間以内に探さないとメリディアナが......ん?

なんで俺は1週間以内にここまで執着しているんだ?

メリディアナが帰ってしまっても、皇気の捜索はできるのに。

彼女にちゃんとした気持ちで謝りたいから?

それだけの理由でここまで固執するのか?

いや、違う。


 タオルを両肩にかけ、俺は再びベッドで眠る彼女の安らかな顔を眺めた。

なんだろう、縁下さんに抱いていた感情と似ているようで違う気がする。

というかそもそも、縁下さんに関しては変人じゃないし優しいから......だから、好意を持ったはず。

そう、メリディアナみたいな変人じゃない女性が俺は好きなんじゃないのか?

確かに慰められた時はグッときそうにはなったけど。

けどだからといって。


「皇二さん、泣かないでください。辛い時は天使を、私を、頼ってくれてもいいんですよ」


 メリディアナは寝ぼけてそう口にした。

恐らく、俺が不良に絡まれた時の夢を見ているんだろう。

思えば進路が差し迫った時、こいつは現れた。

最初はこいつといると不安ばっかがよぎったのに、なんでなんだろうな。

彼女といるこの瞬間が、人生で最も落ち着くように感じる。

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