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第29話 縁下と河川敷。視点、皇二

 まずい、問題起きた直後にこんな騒ぎを起こしていたらそれこそ廃部の危機だ。

どうすれば……。


「佐藤君、こっち!」


 たじろいでいると躊躇することなく、縁下さんは腕を掴んだ。

彼女が走り出すと、俺の身体も糸に手繰り寄せられるように動いた。

振り返ると、3人がこちらに手を振っているように見える。

もしかしたら、何か言い訳を考えてくれるのか?

いや、そんな楽観的な考えやめておこう。

あぁ、不良と仲がいいなんて思われたらどうしよう。


「ここまで来れば、大丈夫かな」


 彼女の足がパタリと止まると、周囲が見覚えるのある河川敷であることに気づいた。

ここは、熱士にラーメンを奢ってもらった帰りに来た道。


「助けれくれてありがとう、佐藤君」


 お礼の言葉をいう縁下さんは、いつもより笑顔が作り物に見える。

きっと、柔道部のことでまだ落ち込んでいるんだ。


「いえ、当然のことをしただけです」


 身振り手振りでお礼に対する反応をすると、彼女は俺が背に隠した覆面をジロジロと覗き込むように見つめた。

背に汗が湧き、沈黙しかリアクションがとれないでいると、彼女は小さく口を開く。


「柔道服と変な覆面、それに柔道部のチラシ......もしかして勧誘していたの?」


 ド直球に言い当てられ、思わず「はい」と間髪入れずに返答してしまった。

全身の毛穴から汗が噴き出ているのではないかと、恥ずかしさで身体極まっている。

だが数秒間、彼女から反応がなく、ただこちらをずっと真顔で眺めていた。


「あ、あの......勝手にしたのダメでしたよね。すいません」


 縁下さんが何考えているかわからないけど、絞り出してこの言葉した浮かんで来なかった。

そう言い放った後、彼女は頬を膨らませる。

そして風船を破裂させるように、「ぶっ!」と空気を吐き出した後、笑いに吞まれていた。


「ふふふ、ごめん! 佐藤君、そういうことしないと思ってたからつい」


 うぅ、変な覆面と言われたり、奇行をしてしまったからか馬鹿にされちゃってるよこれ。

いくら縁下さんでも、やっぱりこんなことしている姿軽蔑したよな。

勧誘初日にして不良と女の子からの軽蔑の眼差し、悪いが三日は寝込みそうだ。

これは逃げでもなく、戦略的な休息だから許してくれ。

まぁ、誰に言われてやってることじゃないけどさ。


「落ち込まないでよ。別に馬鹿にしたわけじゃないから!」


 いくら縁下さんとはいえ、取り繕った言葉でこのダメージは相殺できない。

なおも黙っていると、彼女はまたしても俺の腕を掴んできた。

しかも両腕をだ。

何をするのか一挙手一投足がわからない。

困惑していると、彼女は襟と腕の裾へ俺の両手を当てた。


「ごめんね佐藤君。君のギャップが凄くてつい笑っちゃったんだ。もし、本当に嫌な気分にさせたなら私を投げ飛ばしてよ」


「え!? そんな」


 彼女は真剣な眼差しでこちらを見ている。

この行動だけで充分、俺は誤解していたことに気づいた。

それにこんなところで投げたら大怪我してしまう。


「できません」


 そういうと、彼女は少し残念な表情をして俺の腕から手を離した。


「そっか。良い人なんだね、佐藤君」


 彼女は腰を下ろし、草花が生い茂る河川敷の斜面へ腰を下ろす。

オレンジ色の水の流れを眺め、再び口を開いた。


「3度目だけど、本当にごめんね佐藤君。実はさっき笑ったのは、へこたれていた自分に喝を入れて欲しかったんだ。部活が出来なくなった要因は、たしかにあいつのせいかもしれない。けど、部活ってやりたくてしているものだもんね」


 拾い上げた小石を川へ投げ、今度は縁下さんがぼーっと静かになる。

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