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第26話 愛菜、話しかける。視点、皇二

 チャイムが鳴り、またしても放課後が訪れた。

教室は今朝のように騒がしさが途切れることがない。

はぁ、いよいよあの作戦を結構する時が来たか。

あの作戦というのは、昨夜試案した部活勧誘のことだ。

普通にポスターやビラ配りなどをしても、集まらないのは明白。

となれば、奇策を持ってして挑むしかないのだ。

柔道という体育会系しか目を引けないものを、俺みたいなもやしでも参加できるぐらいハードルを下げる。

その為には実演販売や試食売り場のように、体感してもらうのが手っ取り早い。

だが、考えたはいいものの俺にできるのか?

緊張し、席に佇んでいると騒ぐボリュームは段々と減っていった。

早く校門の前に行け俺!

急がなきゃみんな下校してしまう。

そんなこと頭ではわかっているが、恥ずかしさが勝っている。


「ねぇ、佐藤」


 あぁ、俺はなんでこんな度胸がないんだよ。


「佐藤!」


 心の中で嘆いていると、右耳から左耳へ突き抜けるような声が頭に響いた。

思わず机を膝でガタつかせ、ビビり散らかす。

振り向くと、相羽(愛菜)が仁王立ちしていた。

こちらを睨みつけるような眼光に、目線を反らさずにはいられない。


「佐藤、メリちゃんのこと何か知らないの?」


 メリディアナのこと......あの後、海外にいる身内の訃報で葬式のために帰国した。

という言い訳で彼女は消息を絶って、次の日。

彼女の動揺も無理はないか。

でも、どうして俺に聞いてくるんだ?

隣の席ではあるが、同じ家に住んでいることとかは伝えてないはず。


「ちょっと、ちゃんと話聞いてる? メリちゃんいつもあなたの話してたから、もしかしたらって声かけたのよ? ねぇったら!」


 胸倉を掴まれ、ノーリアクションでいるのも限界がきた。

何か言わなければ......ていうか、メリディアナが俺の話をいつも?


「いつ戻ってくるかは知らないです。俺も、今日知らされたので」


 そう言い返すと、彼女は襟から手を離した。

ため息をつき、背を向ける。

たくっ、偉い愛されようだな。


「そう、ごめんね。メリちゃん、あなたと出会ってから毎日が楽しくなったっていってたのよね。自分に似てるからって。ほんと、このもやしと似ても似つかないのにおかしいわ」


 謝った後に罵倒かよ!

あの記憶改ざん事件以降、彼女は整った喋りから少しトゲも隠さず話すようになった。

ストレートな喋りがメリディアナには伝わるとあって、誤魔化すような口調を止めたようだ。

クラス内での人気度がガクっと下がったが、同時に以前と比べて同姓と仲良くしている場面をよく見る。

それにしても、メリディアナが影で俺の事そんな風に言っていたのか。

だとしたら、柔道部に強引に入れたのも本当に俺への恩返しだったんだ。

それを踏みにじって、挙句の果てに酷い別れ方をした。

あぁ、俺はなんて醜い生き物なんだ。


「じゃあね佐藤。受験も近いし、お互い頑張りましょう」


「うん。相羽さん......ありがとう!」

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