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6. 随分とふくよかでいらっしゃる


「着きましたよ、お嬢様。」

「あら、もう着いてしまったのね。」


 馬車の窓から覗くとブーランジェ王国とはまた違ったラガルド王国の景色が新鮮で、あっという間に目的のお店に着いてしまいましてよ。


「ごきげんよう。」


 店内には様々な生地や装飾品が置いてあって、所々に出来上がったドレスがトルソーに飾ってありましたわ。


「いらっしゃいませ、お美しいお嬢様。」


 出迎えたのは随分とふくよかでいらっしゃるご婦人で、着ているドレスは横ジワが入っている部分もありましたの。


「少し見せていただくわ。」

「はい。私どもの店は最高級品の生地と装飾品を扱っておりますので、きっとお気に召しますよ。」


 揉み手しながら近寄っていらっしゃるご婦人はどうやら店主で、この方が今人気だという仕立て屋のようですわ。



 店内を見て回ると、生地は思ったよりも良いとは思えませんでしたの。

 生地も装飾品も、お値段はそれなりに致しますのに価値に比べて品質が伴っていないような気がいたしましたわ。


 トルソーのドレスも、デザインがありきたりでそこまで斬新ではないしどうしてこのお店が人気なのか私には分かりかねます。


「申し訳ありませんが、また日を改めて参りますわ。」


 このお店では価値を感じられるもの話が見当たりませんでしたの。


「あら、そうでございますか?うちの商品はいいお値段いたしますから仕方のないことですわ。またご縁がありましたらよろしくお願いしますね。」


 なんだか私、この方はどうしてか苦手ですわ。



「お嬢様、せっかく人気のお店でしたのによろしかったんですか?」

「アン、あのお店がなぜ人気なのか私には理解できませんでしたの。もう少し付き合ってもらえるかしら?」

「もちろん私はかまいませんけど……。」


 馬車の中ではアンは不思議そうに首を傾げていましたけれど、私はあのお店の品が良いものだとはとても思えませんでしたの。


「この辺りで一番古くからある仕立て屋に向かって頂戴。」


 私は妃教育の一環で物の価値を見極めることを必要とされましたので、自分の目利きには多少の自信はありましてよ。


 こうなったら自分で気に入った仕立て屋を探すしかありませんわ。

 古い仕立て屋を選んだのはイライザの時の経験上、昔ながらでありながらもきちんとした仕事をなさるクチュリエが多いからですの。


「こうなったら私、本気を出して素敵なドレスを作りますわよ。」


 街中を走る馬車から窓の外に見えるラガルド王国の景色を楽しむ時間が増えたことにも、思わぬ喜びを感じることができましたわ。











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