第一話【酒場のおっさん】
とある酒場にて。
巨大な鎧を着た男が仲間に向かって尋ねる。
「おい、聞いてくれよ」
「ランキングか?」
「よくわかったな」
「お前が話すことなんてランキングだけだからな。……それに、さっきからいたる所で噂になっている」
「三年前に握手をしてもらって以降、更に好きになって応援していたんだが……とうとうこの日がきてしまった」
「ああ」
「おそらく最初の目撃者は俺だ」
「それは間違いない。お前ほどランキング画面を確認しているやつは世界中のどこを探してもいないだろうし」
「祝福してあげたらいいのか、それともこれ以上増えないことを残念がればいいのか……う~む。正直俺としてはもっと増える様子を見ていたかったんだがな」
そうつぶやきつつ、鎧の男はランキング画面を開いていく。
【第三位 空蝉 終 ・無所属 LV7923143】
【第二位 鳳蝶 月 ・無所属 LV46126434】
「うむ、空蝉くんとるなたん! 今日も結構上がっているな」
「よく考えるとこの二人も存在しているのがおかしいレベルなんだよな」
「今の俺たちにしてみれば雲の上どころか、宇宙の果てといったところか」
「ああ」
「……そして俺の推しに関しては、どう表現していいのかすらわからない」
【第一位 琥珀川 瑠璃 ・無所属 LV99999999】
「さっきからずっとこのままだし、多分これ以上増えることはないんだろうな」
仲間の男が言った。
「おめでとうと言いたいところだが、正直悔しいぜ」
「なんでだ? 別に素直に褒めてあげればいいだろ」
「なんというか、誰かに見下ろされているような気がするんだ。……お前たち人間には限界が存在するってな」
「さすがに考えすぎだろ。ランキングの見過ぎで頭がおかしくなったんじゃねぇのか?」
「まあ、普通に考えたらそんなことあり得ねぇよな」
「……」
「だが、ダンジョンが突然現れるような世界だ。別に瑠璃を瞬殺できるようなやつがこの宇宙空間のどこにいてもおかしくねぇ」
「……なんとなく言いたいことはわかるぜ」
「だろ?」
「だけど、仮にそんなやつが存在しているとしてだ。……俺たちの琥珀川瑠璃がそんなやつに負けると思うか?」
「は?」
鎧の男は眉間にしわを寄せた。
「あいつは常に圧倒的な差で人類のトップに立ち続けてきた」
「……おう」
「一番応援し続けてきたお前が信じなくてどうするんだよ」
「そう言われたら」
「俺も難しいことはわからねぇけど、琥珀川瑠璃は最強だ。……違うか?」
「ああ、その通りだ! 俺の瑠璃が負けるはずねぇよ!」
鎧の男が酒を手に持ったまま立ち上がった。
「瑠璃。たとえどんな相手が立ちふさがろうとも、圧倒的な力の差でボコしてやれぇ!」
「落ち着けって。俺たちが勝手に盛り上がっているだけで、そんなやつがいる保証はないぞ。永遠に次のダンジョンが現れ続けるだけかもしれないし」
「おい、テンションを盛り下げようとするんじゃねぇ。せっかく人が熱くなっているってのによぉ」
とその時だった。
『とある冒険者によりフォースステージがクリアされたため、続いてファイナルステージを出現させます。……繰り返します。とある冒険者によりフォースステージがクリアされたため、続いてファイナルステージを出現させます』
「おっ、とうとうフォースステージもクリアされたか。……って、ファイナルステージ?」
仲間の男が首を傾げた。
「おい、今すぐダンジョンへ行くぞ」
「はぁ?」
「噂によれば、ダンジョンをクリアした者は入り口前にワープさせられるんだ。今なら瑠璃に会えるかもしれねぇ」
そう言って鎧の男性は勢いよく走り出した。
「おい、てめぇ。俺に払わせる気かよ」
仲間の男は文句を言いつつも机にお金を置き、彼のあとを追う。
「さっき次がファイナルステージだとか言ってただろ? だから応援の声くらいかけたいじゃねぇか」
「だからってそう急がなくても。あの二人だってすぐに出発するわけじゃないだろ」
「出発する可能性もあるんだよ。瑠璃はそういう男だ」
「おい、それよりも今すぐ俺に金を返せ。飲み代も払わずに突然走り出しやがって」
「そんなのあとで何十倍にもして返してやるよ。ごちゃごちゃ言ってねぇでついてこい」
「……今の言葉、忘れるなよ?」
そんなやり取りをしつつ、二人は酔いが回った状態で走っていく。




