第六話【五年後】
セカンドステージが出現してから、五年が経った。
とある酒場にて。
「なぁ、お前。最近レベルのランキングを見たか?」
巨大な鎧を着た男が、仲間に向かって尋ねた。
「お前、いつもその話ばっかりだな。たまには別の話題を出せよ」
「ったく、わかったよ。じゃあ何を話そうか。……あぁ、そうだ! お前、あれ知っているか?」
「何をだ?」
「あの天神ノ峰団がとうとう明日、セカンドステージに向かうってよ」
「あー、冒険者ギルドで噂になっていたな。…………にしても、セカンドステージが現れてからもう五年も経つのか。俺たちは相変わらず酒場で飲むばかりで、全然ダンジョンの攻略は進んでいないけど」
「別に楽しけりゃいいんだよ。……それよりもさ、ランキングの話をしようぜ。ちょっと見てくれよ」
そう言って鎧の男はランキング画面を開いていく。
「昨日も聞いたって」
「まあ、そういうなよ。俺は毎日これを見るのが楽しみで仕方ねぇ。朝起きて、ランキング上位たちのレベルを確認するのが人生で一番楽しい瞬間だぜ」
「つまらねぇ人生だな、おい」
「うるせぇ」
【第五位 姫野 結 ・天神ノ峰団 Lv4552】
【第四位 夜霧 拓哉 ・天神ノ峰団 Lv4887】
【第三位 赤松 斗真 ・天神ノ峰団 Lv4965】
【第二位 村雨 刃 ・天神ノ峰団 Lv5508】
「第二位までだって十分にすごい。特に村雨刃なんて、最近はギルドで攻略を終えた後の休日に一人で猛特訓をしているらしいし」
「本当にすげぇよな」
「でも、一番はやっぱり琥珀川瑠璃だ!」
【第一位 琥珀川 瑠璃 ・無所属 Lv355540】
「昔からずっと化け物じみていたが、今の二位との差がおかしすぎだろ。……俺はもうこいつのことが好きで仕方ねぇ」
「マジで何者なんだろうな」
「きっと五年前にファーストステージをクリアしたのは、琥珀川瑠璃だ」
「それはもう間違いないだろ」
「あぁー、一度でいいから会ってみてぇなぁ。……愛しの琥珀川瑠璃によぉ」
「お前、きもいな。琥珀川瑠璃が大男だったらどうするんだ?」
「うるせぇ! というか噂によると、小さい少年だって話だぜ?」
「どこ情報だよ」
「いや、一部のファンの間で有名になっているんだって。……セカンドステージが出現した日の夜、ひとりの少年が階段を下りていき、その後、そいつが戻ってくることはなかったんだとか」
「信憑性のねぇ話だな。俺は小さな少年がこんなに強くなれるとは思えない」
「だけどそれ以外に情報がないのも事実だ。俺は一人の熱烈なファンとして、今後も琥珀川瑠璃についていろいろと情報を集めていくぜ。そしていつか絶対に会ってやる」
「マジできしょいぞ。琥珀川瑠璃について話している時の自分の顔を鏡で見てみろよ」
「なんだてめぇさっきから。殺すぞ!」
「やれるもんならやってみやがれ」
そんな会話をしつつ、二人は朝まで酒を飲み続けた。