第六話【謝罪】
階段を下りる途中で、突然月が瑠璃の首元から両手を離す。
それと同時に彼女は目に涙を浮かべ始めた。
「……る、るりさん」
「ゲホッ……はぁ、死ぬかと思った」
「………瑠璃、さん」
「おう、月。気づいたみたいだな。大丈夫か?」
「ご……ごめんなさい」
「なんだお前、覚えているのか?」
「ずっと……記憶がありました。どうしてか、瑠璃さんが憎くて……嫌いで」
「そっか」
「…………私、こんなに瑠璃さんを好きなのに」
「俺も悪かったな。一度お前を潰しかけた」
「私がしたことに比べたら大したことありません。……壁にぶつけたその頭の傷、大丈夫なんですか?」
「全然痛くない」
「嘘つきですね」
「正直月のパンチのほうが痛かったぞ」
「……本当にごめんなさい」
「大丈夫だって。むしろもっと強く殴ってくれても良かったのに」
「何を言っているんですか」
「なんせ俺は世界最強──っ!? ゲボッ」
いきなり瑠璃が横を向いて大量の血を吐いた。
月の攻撃が予想以上に効いていたのだろう。
「瑠璃さん!?」
「なんとなくトマトジュースを吐きたい気分になった」
「それはさすがに無理があります! 今すぐ私を下ろして横になってください」
「抱っこをやめるのはいいけど、別にこの程度なら休まなくても大丈夫だ」
そう言って瑠璃は彼女を地面へと下ろした。
「だめです。私が膝枕をしてあげますのでしばらく寝てください」
「月の膝枕は捨てがたいけど、魔物のいる階層へ移動するほうが先だろ。でないと食料と水分を確保できない」
「それはそうですが……次の階層には何が待っているかわからないんですよ? 第一階層ですらあれでしたから」
「実際、結構やばかったな」
「それにしても瑠璃さん、よく自我を保っていましたね。私なんてすぐにおかしくなりました」
「俺は四次元の思考回路を持っているからな」
「……なんか初めてその言葉に説得力を感じました」
「とにかく大丈夫だから」
「…………瑠璃さん」
「なんだ?」
「改めて本当にごめんなさい。……暴言を吐いてしまったり、手を出してしまったり」
「気にすんな。俺はそんなところも全部含めて月が好きだから」
「……はい」
「お、そうこうしていたら扉が見えてきたな。次が第二階層か」
「次は絶対に足を引っ張りません!」
「仮に足手まといになったとしても俺が絶対に助けてやるから安心しろ」
「いえ、いつまでも助けてもらってばかりでは嫌です。私だって瑠璃さんの役に立ちたいですから」
「なら期待している。……頑張れ」
「はい。任せてください」
二人は扉を開けて中へと入っていく。
◆ ◇ ◆
第二階層。
さきほどと同じで、オリハルコンで構成された円形の部屋だった。
正面に大きな扉が見える。
「今回は煙は充満していないようだな」
「ということは強敵が出てくる感じでしょうか?」
「可能性はある」
「もし何か出てきたらとりあえず私が──」
喋っている途中で突然月が意識を失い、地面に倒れた。
「月!? お前、どうし──」
彼女と同じようにして、瑠璃も意識を失って倒れた。




