第二話【酒場】
とある酒場にて。
巨大な鎧を着た男が仲間に向かって尋ねる。
「なぁ、お前。最近レベルの世界ランキングを見たか?」
「毎日飽きもせず、よくそんなに同じことばかり言えるな。一日くらいランキング画面を開かずに生活してみろよ」
「あぁん? 無理に決まってんだろ。もしそんなことをしようものなら、気になりすぎて全身の震えが止まらねぇぞ」
「重症じゃねぇか! ……それよりも、もっと他に話題があるだろ」
「何がだ?」
「少し前のアナウンスだよ! サードステージがクリアされたってやつ」
「あぁ、そういえばなんか聞こえたな」
「ダンジョンをクリアした冒険者は地上へとワープさせられるっていう噂がある。どうせ初めてのクリア者は琥珀川瑠璃だろうから、今頃ダンジョンの入り口前とかにいるんじゃないか?」
その言葉を聞いた瞬間、鎧の男が急に真面目な表情になる。
「……てめぇ、なんでそれを早く言わねぇ」
「お前がランキングのことばかり言うからだ」
「こうしちゃいられねぇ。おい、早く行くぞ」
「そうだな。俺も琥珀川瑠璃とやらを見てみたい」
そうして立ち上がろうとしたその時、酒場に異様な三人が入ってきた。
布の服を着ている男女と、ボロい鎧を装備している金髪の男。
「なんだあいつら。汚ねぇ格好だな」
「ハハッ、案外あれがランキングトップの三人だったりしてな」
「おい! 俺の瑠璃とるなたんを馬鹿にしてんのか」
「でもあの女の子、服装はあれだけどめちゃくちゃかわいいな」
「どれどれ……おっ、確かにな。俺が頭で想像していたるなたんとほぼ同じ見た目だ」
「お前気になるんだろ? 聞いてこいよ。案外本物かもしれないぞ」
「いやでも、そんな偶然あるはずねぇだろ」
「チッ、肝心な時に根性がないやつだな。……ちょうど俺たちの隣に座ったし、会話をこっそり聞いてみるか?」
仲間の男が小さな声で言った。
「おう。なんだかよくわからないけど、ただの他人とは思えねぇ。特にあの小柄な男を見ているとなんかムラムラしてくる」
「相変わらずきもいな」
「うるせぇ」
そんな会話をしつつ、二人は盗み聞きを始めた。
◆ ◇ ◆
「いらっしゃいませぇ。ご注文は何にしますか?」
「とりあえず生三杯で」
女性店員の質問に、空蝉が答えた。
「ありがとうございます。少々お待ちください」
そう言い残して店員は厨房のなかへと入っていく。
「ふふっ、楽しみです。だってあの瑠璃さんが顔を真っ赤にして倒れるかもしれないんですよ?」
「こいつ、さっきからずっと俺を馬鹿にしてきやがって」
瑠璃が月を睨んだ。
「俺はあんたに勝って必ずレベル上げのスポットを教えてもらう。ちゃんと約束は守ってくれよ?」
「お前いつまで同じこと言ってんだ? 普通にしつこいぞ」
「それにしてもここ、人が多いですね」
「酒場は深夜からが本番だからな。大体いつもこんな感じだ」
月の言葉に空蝉が答えた。
「そういえば金髪。お前慣れているみたいだけど、酒はよく飲むのか?」
「まあ、サードステージに入って以降は一度も飲んでいないが、昔はよくダンジョンの攻略を終えたあとに仲間と飲みにきていたものだ」
「そんなことをしていたからレベルが低いんだろ」
「うるさい。あんたを基準にするな」
「でも実際瑠璃さんは禁欲的すぎると思います。その歳で大人っぽいことをした経験が全くないですよね?」
月が尋ねた。
「それは月も同じだと思うけど」
「つまり私と瑠璃さんはお似合いってことですか」
「ああ。月は世界で一番俺にふさわしい女だ」
「おい! ダンジョンのなかならまだしも、公共の場でいちゃつくのは止めてくれ」
「なんだと? 公共の場が俺に合わせるべきだろ」
「全然何を言っているのかわかりませんよ、瑠璃さん」
「生ビール三丁お待たせいたしましたー」
そんな声が聞こえたかと思えば、女性店員が机にジョッキを置いてくれた。
「追加の時はまた呼んでくださいね」
「ありがとう。……さて、始めようか。まずは全員一杯目からだ。最後まで生き残ったやつが勝ちという脱落方式でいいな?」
「なんで金髪が仕切っているのかは知らんが、まあいいだろう。上等だ」
「私、絶対瑠璃さんにだけは負けません」
「それじゃあ……」
「「「乾杯!!」」」




