第四十六話【最下層】
月と空蝉の二人は、オリハルコンで構成された円形の部屋にワープさせられていた。
彼女は辺りを見渡しながら口を開く。
「……ここは。て、あれ? 瑠璃さん?」
近くに金髪の男はいるが、いつも一緒にいたはずの彼の姿がない。
「なんだこの部屋は?」
空蝉が不思議そうにつぶやいた。
「オリハルコンの部屋だと思います」
「あー、ファーストステージとセカンドステージの最下層と同じやつか。……ということはここがサードステージの最下層なのか?」
「かもしれません。それはともかく、瑠璃さんがいないんです」
「え……あっ、本当だ。俺とあんただけだな」
「私と瑠璃さんは同時にあのクリスタルに触れたはずなのに」
とその時、部屋の中心に光が現れ始めた。
思わず目を瞑ってしまいたくなるほどに眩しい。
それはだんだんゴーレムの形になっていく。
サイズは全長6メートルほど。
「えっ、まさか。瑠璃さんがいない状態でボス戦を開始するんですか?」
月が心配そうな表情を浮かべる。
「あんたもずば抜けてレベルが高いし、大丈夫だと思うぞ」
「ま、まあとりあえず全部任せましたよ?」
「そうだな。……て、おい! レベルの高いあんたが頑張れよ」
「はぁ、仕方ないですね。じゃあ二人で協力しましょう」
「全く。最初からそうしてくれ」
その瞬間、ゴーレムが凄まじい速度で空蝉に近づき、力強いパンチを繰り出す。
「──っ!?」
彼は体を全力で捻り、ギリギリで躱した。
レベルに似合わないその反応速度は、天性の才能だろう。
普通であれば当たっていたはずだ。
「あぶねぇ。──魔法弾!」
スキル名を口にした途端、空蝉の手のひらから透明な物体が発射され、ゴーレムに直撃する。
あまりダメージは通っていないようだが、これが彼の戦い方だった。
素早さとMPを重点的に鍛えており、一撃必殺のような威力は持っていない。
「必殺、全力パンチ!」
そう叫びながら月がゴーレムの下半身を殴ると、その部分が大きくへこんだ。
相手はバランスを崩して斜めに傾く。
「魔法弾! 冷凍弾! 火炎弾!」
間髪入れずに空蝉の魔法が顔面へと命中していく。
ゴーレムは体勢を立て直して月へと近づき、鋭い膝蹴りを放った。
「私を傷つけていいのは瑠璃さんだけですよ?」
彼女は余裕をもって躱し、相手の胴体にハイキックを叩き込んだ。
更に拳で連打を放つ。
重い音が響き、ゴーレムの胴体がどんどんへこんでいく。
「──咲き乱れろ、切断風刃!」
複数の風の刃が相手の首元に命中。
それによってゴーレムは機能を失い、地面へと倒れていった。
「やったか?」
「ふぅ。正直地下大国にいた獣人の王様よりも動きが悪いですね」
実際、薬を飲んだ獣人の王と最下層のゴーレムが戦った場合、勝つのは確実に獣人の王だ。
そもそも獣人に見つかってお城に閉じ込められた時点で、普通は人生終わりなのだから。
いくら強い冒険者でも敵うはずのない強敵が、このサードステージには何体も存在していた。
獣人。
獣人の王。
湖のなかにいた生物。
ギロチンの通路の下にいた虫たち。
雪山の白熊と、ベッドの罠の先にいたカラフルな竜。
学校の青肌の化け物。
魔女王。
雲の世界の巨鳥。
普通であれば出会わないよう上手に攻略していくものなのに、瑠璃と月はその全てを真正面から突破してきたため、今更最下層のラスボス程度に苦戦するはずがなかった。
ゴーレムが光の粒子になって消えたのと同時に、瑠璃が出現する。
「今度は何です──って、瑠璃さん!?」
「……? おう、月」
「今までどこにいたんですか?」
「どこって言われてもよくわからない場所にいた」
「はい?」
「で、もうボス戦は終わったのか?」
「それはもちろんです。ほとんど私一人で倒すことができました」
「おい! 俺も結構活躍してただろ!」
空蝉が横からツッコんだ。
「へぇ、月がサードステージのラスボスを一人で……か。やるな」
「ふふん! いつも瑠璃さんの戦い方は見ていましたから」
「ちょっと待て! 俺もかなり貢献してたから──」
そんな空蝉の声を遮るかのように、どこからともなく機械的な音声が響く。
『とある冒険者によりサードステージがクリアされたため、続いてフォースステージを出現させます。……繰り返します。とある冒険者によりサードステージがクリアされたため、続いてフォースステージを出現させます』
その後、三人はその場から姿を消した。
Chapter 3【THIRD STAGE】~ 終 ~
ここまで読んでくださりありがとうございます!
次の章で展開されていくフォースステージの攻略はいろいろとやばいです。
もしかすると主人公たちが苦戦する……かもしれません。
ぜひ、引き続きお楽しみください!
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