第三十五話【魔女王】
瑠璃と月は、広い屋敷のなかをを真っすぐ突き抜けて一番奥のオリハルコンの扉を蹴って吹き飛ばした。
するとそこに広がっていたのは、きんぴかの部屋。
金色の天井、壁、床。
中央にある黄金の椅子に向かってまっすぐ敷かれている金のカーペット。
「悪趣味にもほどがあるだろ」
瑠璃の口から真っ先に出た感想がそれだった。
「お前たち、何者だ?」
黄金の椅子に座っている魔女王らしき者が、瑠璃と月に尋ねた。
若い見た目で非常に落ち着いた表情をしている。
肩の部分が露出している黒いドレスには金の薔薇の刺繍がたくさん施されており、帽子も黒と金のツートン。
「何者って言われても……冒険者」
「何をしにきた」
「魔女王とやらが持っているという噂のレア装備品を奪いに」
「ほう。この私の前で随分と大きな態度をとるではないか」
「だって俺は自分が世界最強だと思っているからな」
「まあいい。とりあえずその不遜な態度には目を瞑ってやろう。……さて、レア装備品が欲しいのなら金目の物と交換だ。お前は何を私に差し出す?」
「……瑠璃さん。屋台の人の話覚えてます?」
月がボソッと尋ねた。
「……ああ。あいつはレア装備品を渡す気がないってことだろ?」
「そうです」
「俺はこう見えても記憶力がいいほうだからな。馬鹿にすんなよ?」
「ならよかったです。あ、あとそろそろ下ろしてもらえませんか? 魔女王からの視線が恥ずかしいんですけど」
お姫様抱っこをされた状態の月がつぶやいた。
「もうちょっと待ってろ」
「……わかりました」
「何を相談しているのだ? ほら早く決めんか」
「あぁ、そうだな。金塊800個くらいでいいか?」
「き、金塊が800個だと? ……うふふ」
魔女王が突然不敵な笑みを浮かべ始めた。
「どうする? 別の物が欲しいなら何か他に探すけど」
「いや、それで十分だ。……だが、本当にそんなにも持っているのか? 嘘をついていた場合、お前は殺す」
「嘘じゃないって。逆にあんたこそレアアイテムとやらを持っているんだろうな?」
「当たり前だ。……ほら、これを見ろ」
魔女王は自身の薬指についている指輪を瑠璃に見せつける。
「ありがと! それじゃ俺たちはもう行く。お礼としてお前たちの命は取らないでおいてやるよ」
そう言い残し、瑠璃は月を抱っこしたまま天井を突き破ってどこかへと飛んでいった。
「魔女王様! ご無事ですか!?」
ようやく門番の魔女が到着した。
「……今まで何をしていた? なぜあんな羽虫が私の屋敷に忍び込んでいたんだ?」
「も、申し訳ございません。これでも急いだのですが」
「ふっ、まあいい。壊された分の屋敷の金は、どうせあいつを捕まえれば手に入るだろ。なんせ金塊を800個も持っているらしいからな」
「今魔女の森に住んでいる全員に集合をかけました。もう少しだけお待ちください」
「いいかい。必ず生け捕りにしてくるんだよ?」
「わかりました」
「それにしても、先程あいつはなぜ私にお礼など言ったのだろうか……」
魔女王はなんとなく自分の薬指に視線をやる。
「…………はぁ!?」
そこには、あるはずのものがなかった。
「ど、どうされましたか?」
「あの指輪がない! あいつ、羽虫の分際でいつ私から盗んだんだ?」
「えぇ!? あの世界にひとつしかないと言われている指輪が……ぬ、盗まれたのですか?」
「今すぐあいつを探し出すぞ!」
「はいぃ!」
こうして魔女王を含めた魔女たちは、全勢力をあげて瑠璃と月を探し始めた。




