第三十四話【魔女王の館】
二人の言葉を聞いたおばさんは、首を横に振る。
「あんたらがいくら強いとは言っても、所詮人間。敵うはずがないんだよ」
「そんなのはやってみたらわかる。この世は結果がすべてだ」
「あの。どちらかと言うと、魔女王さんを心配したほうがいいと思います」
月がつぶやいた。
「何を言っているんだい?」
「瑠璃さんは本当に強いですから」
「そこまで言うなら止めはしないけど、あたしは知らないからね」
「はい、それで十分です。忠告ありがとうございました」
「じゃあな、おばさん!」
「……気を付けるんだよ」
小さくつぶやいて、おばさんは仕事に戻る。
彼女は魔女王の恐ろしさを知っていた。
だから瑠璃と月を止めたのだ。
「あの御方に歯向かえばどうなるのか。想像もつかないよ」
そうして見られるのが最後かもしれない二人の背中を視界に入れようと顔を上げると、もうそこには誰もいなかった。
「いつの間に……」
◆ ◇ ◆
瑠璃と月は大通りを走り抜けて長い階段を上っていく。
かなりのスピードで移動したため、さほど時間がかかることなく屋敷の前に到着した。
「なんだここ」
金や宝石などで埋め尽くされた壁。
金一色の扉。
オリハルコンの彫刻が庭にいくつも飾られている。
「なんというか、ものすごく悪趣味ですね」
「ああ。俺だったら絶対住みたくない」
「同感です」
「おい! お前ら見かけない顔だな。魔女王様の館になんの用だ?」
門番らしき一人の魔女が、二人を睨みながら問いかけた。
「えっと、魔女王様がレア装備品を持っているという噂を聞いて、私たちの持っているお宝と引き換えに交換していただこうかと……」
なるべく楽に建物のなかへ入ろうと思い、月がそう答えた。
「そうか。森に住んでいる魔女たちからその話を聞いて、物々交換をしにきたということだな?」
「はい、その通り──」
「──いや違うぞ。物々交換じゃなく、俺たちが一方的に奪いにきた」
瑠璃が余計なことを言い出した。
「おい、それはどういうことだ!?」
「ちょっと瑠璃さん。せっかく穏便になかへ入れそうだったのに、どうして騒ぎを起こそうとするんですか」
「なんかめんどいじゃん」
「騒ぎになったほうが面倒ですって」
「なるほどよくわかった。どうやら死にたいらしいな。──咲き誇れ、発煙花火!」
魔女が手を上に向けてそう叫んだ直後、空に巨大な花火が咲いた。
真っ赤な火花が広がり、煙が空を覆いつくす。
「うわぁ……。綺麗だな」
「ふんっ、のんきにしていられるのも今のうちだ。今この森に住む魔女たち全員に集合をかけた。これより全勢力をもってお前らを潰す」
「じゃあこっちは、全俺勢力をもって魔女王に会いに行く。月、ちょっとお姫様抱っこするぞ」
「えっ、あ……はい」
その瞬間、瑠璃と月の姿が消え、金の扉が破壊されていた。
「なっ、いつの間に!?」
一瞬うろたえるも、すぐに館へ侵入されたと判断し、魔女は二人を追いかけ始める。
なかには絶対的な存在である魔女王がいるため、怪しい者を通すわけにはいかなかった。
なのに侵入を許してしまったからだろう。
魔女の表情には焦りが感じられる。




