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第三十二話【屋台】

 瑠璃と月は、魔女の森の大通りを歩いていく。


 左右には植物のような建物が建ち並び、魔女たちが二人の姿を見てひそひそ話をしている。

 

「そもそもなんでダンジョンにこんな所があるんだろうな」


「ふへぇ~?」


「普通は魔物とかがたくさんいるものじゃないか?」


「そぉですねぇ~」


「というか魔女たちの様子を見る限り、歓迎されているのか不審がられているのかよくわからないな」


「ふぁ~い」


「おい! さすがに羽を伸ばしすぎだろ。完全に別人じゃねぇか!」


「だって瑠璃ふぁんが羽を伸ばせって言ったんですよ?」


「誰が瑠璃ふぁんだ、こら。楽をするなとまでは言わないから、せめて話し方くらいはきちんとしてくれ。かなり鬱陶しい」


「わかりましたよ。……でも私が思うに、魔女たちに敵対心はないと思います」


「俺もそんな気はするな。魔物みたいな殺気とかは一切ないし。隠し事をしているようにも見えない」


「さすが瑠璃さん。同じ結論に至ってますね」


「おう」


「あ、瑠璃さん! 私あれが食べたいです」


 そう言って月が指さした先には、串焼きの屋台があった。


 とんがり帽子とローブを着ている小太りのおばさんが、炭の上で串を軽快に回しながらタレを塗っている。


 非常に香ばしい香りが漂ってきた。

 

「俺も食べたい」


「早速行きましょう!」


 二人はすぐさま屋台の前へ移動した。

 

「おや冒険者とは珍しいね。串焼きを買っていくかい?」


「俺はとりあえず二本」


「私は一本お願いします」


「了解。じゃあそれに見合うだけの物をもらおうか」


「物?」


「この魔女の国では、物々交換で欲しいものを手に入れるルールなのさ。あんたら冒険者が持っているお金をもらったところで、ダンジョンのなかにいる私たちにはなんの得もないからね」


 どうやら魔女たちは、自分がダンジョンのなかにいることを知っているようだ。


「こんなダンジョンの奥深くで買える串焼きとの物々交換って言ったら、金塊10個とかでいいのか?」


 どんな計算方法をしたのか、瑠璃がなんか言い出した。

 

「いやいや、金塊10個って。さすがにそこまでもらうわけにはいかないよ。あたしはぼったくりやら不当な商売が大嫌いでね。そんな量の金塊があるなら、魔女王様に頼めばものすごいレア装備品と交換してくれるかもしれないよ。あの御方は本当に(きん)が大好きだからね」


「へぇ、魔女王とやらがレア装備品を持っているのか。自分から串焼きの価値を落としたり重要な情報をくれたり、あんた良いやつだな。じゃあ金塊1個でどうだ?」


「瑠璃さん! この人の話聞いてました? 串焼きと金塊が同等なはずないでしょう」


 月がツッコんだ。

 

「いやでもここ、外の世界からかなり遠いぞ? 串焼き用の肉を輸入しようと思ったらものすごく値段が高くなると思わないか?」


「何言ってるんですか!? 肉ならダンジョンのなかでいくらでも取れますよ」


「ん? ……あ、そっか。魔物の肉って丸一日くらい消えないもんな」


「今気づいたんです?」


「わるい、なんか空回りしてた。……じゃあおばさんは何か欲しい物あるか? 正直この魔女の森とやらの物価とか知らないし」


 瑠璃が尋ねると、おばさんは少し悩むようにしつつ返答。

 

「そうだねぇ……。狼の毛皮があったら幾つかもらおうか」


「あー、それなら確かアイテムボックスにたくさんあった気がする。狼を倒すとよくドロップしてたし」


 瑠璃はメニューからアイテムボックスを開き、狼の毛皮を探していく。

 

「私も結構持ってますよ」


「あ、これか。狼の毛皮なら……98万個くらいあるぞ」


「…………はい!? 長いこと瑠璃さんと一緒にいた私でも5万個とかですよ? どんだけ集めているんですか」


 月が眉間にしわを寄せた。

 

「多分セカンドステージの第一階層でレベル上げをし続けていた時に貯まったんだろうな」


「瑠璃さんって改めて規格外ですよね」


「そんなの今更だろ。……で、おばさん。どうせ俺いらないし、よければ半分くらいわけようか?」


「馬鹿言っちゃいけない。そんなの邪魔でしょうがないよ。5つくらいがちょうどいいんだ」


「おばさんがそう言うなら」


 瑠璃はアイテムボックスから狼の毛皮を5つ取り出し、おばさんに手渡した。

 

「ありがとさん、じゃあ焼けるまでもう少し待ってな」


「了解。……それにしても、ドロップ品の毛皮なんて初めて見たな」


「私は天神ノ峰団として活動していた時によく見ていましたけど、瑠璃さんと行動し始めてからはそもそもアイテムボックスを使う機会が減りました」


「俺もトイレの紙の代用として薬草を取り出す時くらいにしか使うことがない」


「冒険者ギルドでドロップ品を売ればお金になるんですけど、さすがに98万個は受け取ってもらえないと思います。需要と供給の問題とかありますし」


「だろうな」


「でも瑠璃さんってそもそもお金を使用することがないですよね」


「まあ、食事は魔物の死体があるし、衣服も魔物のドロップ品でなんとかなるうえに、そもそも着なくても困らないし」


「アイテムボックスには魔物からのドロップ品以外が収納できないので、一度外へ出てリュックのなかに必要な物を貯め込んでからダンジョンの攻略に戻るのが普通なんですけど……」


「俺は最初から何も持たずにダンジョンへ入ったからな」


「瑠璃さん。……本当に今までよく生き延びましたよね」


「ほんとにな」

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― 新着の感想 ―
[一言] アイテムすごいことになってそうですね。無制限でよかったです。 更新お疲れ様です。応援してます。
[一言] 最初から徒手空拳で?
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