第三十話【穴掘り】
「すぅぅぅ……おらぁぁぁ!」
瑠璃は思いっきり息を吸い、連続で地面を殴り始めた。
すると、やはり青い肌の魔物が突然現れる。
「器物破損厳禁。ルールを破った者には罰を──」
「──瑠璃さんの邪魔しないでください!」
月が相手の顔面に全力でパンチを入れた。
「逆らう者は容赦なく排除!」
人型の魔物は怯むことなく月を戦闘対象とみなして飛び掛かる。
「私に逆らったら痛い目を見ますよ?」
彼女は瑠璃と同じような笑みを浮かべつつ、ボディーや顔面に連続で攻撃していく。
「グゥゥゥ!」
相手が放った強力なパンチをギリギリで躱し、顎に全力のカウンターを入れた。
すると人型の魔物はその場に倒れ、動かなくなる。
レベルアップの音が響いた。
「ふぅ……。瑠璃さんのように一撃では無理でしたけど、余裕で勝てましたね」
「さんきゅー月!」
穴の下からそんな声が聞こえてきた。
「いえいえ、私にかかれば余裕ですよぉー」
「ちなみに俺のほうが楽に殺せるからなー?」
「男のくせに細かい所で張り合わないでください」
「月ー。今、俺の姿が見えてるか?」
彼女は穴から少し離れた場所で答える。
「いえ、上に飛んでくる土がひどくて覗けません。覗いたら目に砂が入って失明しそうですー!」
「まあ俺も目を閉じて殴っているからな。……全然次の階層にたどり着かないから、月に真っすぐ掘れているのかどうかを確認してもらおうと思ったんだが」
「無理ですね」
「て、おい!」
「急になんですかー?」
「掘りながら会話をしたせいで口のなかが土だらけになったじゃねぇか!」
「知りませんよ!? そっちから話を振ってきたんでしょ」
「月が会話を弾ませるのが悪い!」
「口に土が入るなら、喋るのを止めたらどうです?」
「そうやって逃げる気だな?」
「私は続けてもいいですけどぉー? 別に困りませんし」
「……」
「……?」
返答が聞こえなくなり、月は首を傾げる。
「……」
「……瑠璃さぁーん?」
「…………おりてこーい」
微かに瑠璃の声が聞こえた。
そこで彼女は、土が飛んでこなくなったというのもあり、次の階層へと繋がったのだろうと理解した。
「わかりましたー!」
そう返答し、月は穴に飛び込む。
しばらく下りた辺りで、行き止まりに遭遇した。
「えっ、あ……自動修復ですか」
穴が埋まっていた理由にすぐ気づいた彼女は、目を閉じて地面に軽くパンチを叩き込んだ。
すると突然足場の感覚がなくなる。
少し驚きつつも目を開けると、そこには異様な光景が広がっていた。
「えっ……」
視界に入る限り全てが街のような森だった。




