第二十三話【無限回廊】
月が目を開けると、とてつもなく広くて長いオリハルコンの通路が広がっていた。
見える範囲に瑠璃の姿はない。
その代わりに大量の死体が転がっていた。
巨大な白竜や黒竜、赤竜など、とにかく竜ばかりだ。
天井や壁にも血が飛び散っている。
まだレベルアップの音が響き続けているため、進みながら強敵を倒し続けているのだろうと月は判断する。
「今追い付きますからね」
彼女は今出せる最高速度で走り始めた。
◆ ◇ ◆
瑠璃はオリハルコンの通路を進み続けていた。
「まるで夢の国だな。経験値を大量に持っている竜たちがたくさんいるぞ」
そうつぶやきながら黄色の竜を殴って絶命させる。
レベルアップの音が響いた。
「白竜は倒してもレベルが上がらないことがあるけど、他の色は絶対に上がるし。きっと大量の経験値を持っているんだろうな」
ベッドで寝ようとした冒険者を確実に殺すために、この通路には一定距離ごとに竜が配置されていた。
今の天神ノ峰団が全員で戦えば、きっと白竜程度なら倒せるだろうが、その後にいくつも強力な竜が待ち受けているため確実に全滅する。
しかもこの通路の恐ろしいところは、ゴールがないということだ。
いわゆる無限回廊になっている。
「本来ならここでレベル上げをしたいところだけど、月が待っているし。とりあえず行き止まりまで行ってみてから、帰ろう」
一度異空間を破壊したことがあるからだろう。
瑠璃に焦りの表情は一切見られない。
「おっ、次は紫の竜か。こいつらにもいろんな種類がいるんだな」
走りながら相手の胴体にハイキックを入れて、破裂させた。
レベルアップの音が響く。
「にしてもこの廊下長いな。もうすでに結構走っているはずなんだけど」
そうつぶやいたその時、白竜の死体が視界に入ってきた。
「は? 共食いか?」
首を傾げつつ、瑠璃は無視して横を素通りする。
「竜って結構頭いいと思うんだけど。普通そんなことするか?」
◆ ◇ ◆
「全く、瑠璃さんどこまで行っているんですか」
月は全然彼に追い付けないでいた。
それもそのはず。
瑠璃も走り続けているのだから。
なんなら瑠璃のほうが走る速度が速い。
「さっきからいろんな色の竜が死んでますし。本当に化け物より化け物みたいな人ですね」
力を抜いている瑠璃とは違い全力で走り続けているため、彼女は少し疲れてきていた。
「はぁ……はぁ……。でも絶対にあきらめません。私だってずっと瑠璃さんの側にいて成長したんです」
とはいっても、無酸素運動を続けるのには限界がある。
少しずつ月の速度は落ちていった。
「瑠璃さーん! 待ってくださぁーい!」
そう叫びつつも、足は止めない。
◆ ◇ ◆
「──さーん。待ってくださぁーい」
瑠璃が竜の死体に疑問を抱きながらも、涼しい顔をして走っていると、前方からそんな声が聞こえてきた。
何年も隣で聞き続けてきた声。
瑠璃が聞き間違えるはずなかった。
「月か? なんであいつが俺よりも先にいるんだよ」
瑠璃は速度を上げる。
「まさか魔物の鳴き声だったとか言わないだろうな」
一度脳内で月を魔物っぽく置き換えてみる。
白髪ロングヘアーで小柄な体形。
猫耳が生えていて、くるくるの尻尾が生えている。
「くっ……俺にその魔物は倒せねぇ」
苦虫をかみつぶしたかのような表情でつぶやく。
そうこうしていると、月の姿が視界に入ってきた。




