第十七話【ランキング中毒】
瑠璃たちが湖でのレベル上げをやめた、その日の夜。
とある酒場にて、巨大な鎧を着た男が仲間に向かって尋ねる。
「なぁ、最近レベルの世界ランキングを見たか?」
「一時間前、お前に見せられたっての」
「ん? ああ、そういえばそうだったな」
「ランキングはもういいから、別の話をしようぜ」
「別の話と言えば、ずっと行方不明になっていた天神ノ峰団がサードステージから帰ってきたかと思えば、この一年でかなり強くなったよな。ランキングも徐々に上位へ食い込み始めているし」
「話によるとセカンドステージの第一階層でずっとレベル上げをしているらしいぞ」
「ほぉ。それは知らなかった」
「話は変わるけど、あれは今からちょうど半年前くらいだったかな」
「何がだ?」
仲間の男の発言に、鎧の男が首を傾げて聞き返した。
「天神ノ峰団がいない隙にランキングの三位、四位、五位を占領していた【蓋世三兄弟】のうち、二人が同じ日にランキングから消えた事件のことだ」
「あー! そう言われりゃーそんなこともあったな。二人はサードステージのなかで死んだって噂だったけど、あれからもう半年も経ったのか?」
「全く……。時が流れるのは早いもんだぜ」
「蓋世三兄弟の団長だった空蝉は今もずっとレベルが上がり続けていることから、サードステージのどこかで過ごしているんだろうけど」
「ほんとダンジョンから出ずに生活とか、よくやるよな。正直頭がイっているとしか思えねぇ」
すると鎧の男が眉間にしわを寄せ、大声を出す。
「おい! 瑠璃とるなたんをバカにしてんのか? こら」
「そうじゃねぇよ」
「あの二人は俺の推しなんだぞ? 次わけのわからねぇこと言ったらぶち殺すからな」
「お……おう。にしても上位二人はどっちも無所属か。……蓋世三兄弟の空蝉も実質ソロで無所属みたいなもんだし。一人でダンジョンに潜るほうが効率がいいのか?」
「俺の情報網によれば、第二位のるなたんは元々天神ノ峰団だったって話だ」
「その話は何度も聞いたからもういい」
「今では瑠璃と一緒に行動しているんだとさ」
「まあ、このレベルの桁からしてそんな気はするな」
「ようし! 最後にランキングを見てから一時間以上経ったし、そろそろ確認するか」
そう言って鎧の男はランキング画面を開いていく。
「昔からずっと思っていたが、お前完全にランキング中毒だな」
「うるせぇ、ほっとけ」
【第五位 村雨 刃 ・天神ノ峰団 Lv124308】
【第四位 海風 凪 ・雨の神風組 Lv127787】
【第三位 空蝉 終 ・蓋世三兄弟 Lv2365578】
「今見ると第三位もずば抜けているな」
「そりゃそうだろ。四位と20倍近くも差がついてんだから」
「だが、二位のせいで薄れるんだよな」
【第ニ位 鳳蝶 月 ・無所属 Lv9055540】
「るなたん! 今日もかなり成長しているな。良い子良い子」
鎧の男がにやりと笑みを浮かべてつぶやく。
「その顔で何言ってんだお前」
「ファンなんだからしょうがねぇだろ。……さぁさぁ、続いては俺が昔から大好きな子が出てくるぞ。びっくりして漏らさないように、今のうちにトイレに行っとけよ」
「一時間前と同じこと言いやがって」
「じゃじゃん!」
【第一位 琥珀川 瑠璃 ・無所属 Lv67884756】
「圧倒的なはずのるなたんと比べても、差がおかしすぎだろ。……今日も大好きだぞ、瑠璃」
鎧の男が低音ボイスでつぶやいた。
「お前一回死んだほうがいいぞ、マジで」
「あぁん?」
そんな会話をしつつ、二人は朝まで酒を飲み続けた。




