Episode.13
◇
翌日。
月は衣服で作った布団の上で寝転がっていた。
起きてからすでに一度景色が変わっており、現在は辺り一面に稲が生えている。
そのため稲穂の海に埋もれている状態だ。
「まだ何も食べてないけど、平気か?」
瑠璃がこちらを見下ろしながら問いかけてきた。
「……しんどくて、食べられそうにありません」
「そうか……」
「…………」
月はぼーっと、彼の顔を見つめる。
こうしてじっくり眺めていても、到底悪魔には見えない。
しかし、過去の自分が嘘を書いているとも思えない。
そう、今日はすでにメモ帳を読み終えているのだ。
死角が多い景色だったおかげで、まだ瑠璃にはバレていない。
「…………」
「何を考えているんだ?」
「特に何も。……ただ、しんどいなぁと思っていました。ゲホッ、ゲホッ」
「ちなみに、もうメモ帳は読んだか?」
「ん? メモ帳ってなんですか?」
「……あーなるほど。まだ何も食べていないから、アイテムボックスを開いてないのか」
「?」
本当は読んでいるが、月は知らないふりをする。
「…………俺の正体が気になったりしないのか?」
「ゴホッ。気にはなりますけど、しんどさのほうが勝っているのでわざわざ聞こうとは思わないです」
「…………」
「……教えてくれないんですか?」
「メモを読んだらわかると思うぞ」
「…………ふぅ」
「辛いなら俺が代わりに読んでやろうか? ほら、アイテムボックスからメモ帳を出してみろ」
「いえ、大丈夫です。私はおそらく認知症なので、教えてもらっても寝たらどうせ忘れますし」
「……」
「それに、耳を傾けるのもしんどいんです」
そう言うなり、月は横を向いて目を閉じた。
「…………はぁ」
上からため息が聞こえてくる。
「…………」
「…………よいしょっと」
隣からそんなつぶやきが聞こえてきた。
「…………」
「暇だし、俺も寝よっと」
どうやら添い寝をするつもりらしい。
月は不快感をおぼえ、一気に眠気が覚めていく。
だが、起きようとはしない。
目を閉じたまま、いろいろと考え事を行う。
約一時間後。
とある決意を固めた月は、ようやく上体を起こした。
隣を見ると、瑠璃が寝息を立てて眠っている。
月は「ふぅ」とため息を吐き、自身に身体能力強化の魔法をかけた。
そして彼の首元に手を伸ばす。
その瞬間、瑠璃の目がパッと開いた。
「っ」
月はビックリするも、今更引き返すことはできずに瑠璃の首を思いっきり絞める。
「る……るな?」
「すみませんっ!」
「何を、して……」
「許してください」
謝りながらも力を強めると、瑠璃の顔が真っ赤に染まり始めた。
同時にとてつもない罪悪感に襲われる。
「……やめ、ろ」
そう言いつつも、瑠璃が抵抗する様子はない。
真っ赤な目に涙を浮かべているだけだ。
月は現実逃避をするために目を閉じた。




