Episode.12
◇
およそ30分後。
月が目を覚ますと、森のような景色が視界に入ってきた。
葉っぱや木の幹など、全体的に白っぽくて色素が薄い。
「……あれ? ついさっきまで海岸にいたはずなんですけど」
睡眠時間が短かったため、どうやら寝る前の記憶が残っているらしい。
「…………よいしょっ」
継続して感じる寒気としんどさに嫌気が差しつつも身体を起こした。
そこで、瑠璃の姿が見当たらないことに気づく。
「…………」
月は数秒ほど悩んだ末、メモ帳を取り出した。
そして素早く最後付近のページを開いてみると、
「!?」
驚くような内容が記載されていた。
【夫の瑠璃さんに違和感をおぼえる】
【実は瑠璃さんは偽物で、本当の正体は真っ黒い悪魔だ】
【偽瑠璃さんの狙いはわからないが、敵かもしれない】
【倒すべき?】
最初の頃のページに比べて、明らかに文字が汚い。
おそらく過去の自分が、見つからないように急いで書いたのだろうと推測する。
月はすぐにメモ帳をしまい、再び寝転がった。
それから間もなく、足音が聞こえてくる。
一応薄目で確認してみると、瑠璃の足元が見えた。
月はとりあえず寝たふりを続ける。
「…………よく寝ているな」
そう言うなり、瑠璃の姿をした悪魔? は隣に座り込んだ。
彼は月の頭を優しく撫でながら、
「このままずっと、眠り続けていいんだぞ」
優しい言葉のはずなのだが、月は恐怖心を感じる。
微妙に身体が震え始めた。
止めようとしても、止まってくれない。
「……ん、月?」
「?」
「…………まさか、起きてないよな?」
「っ…………」
「……気のせいか」
「…………」
「……まあ、起きていても別に構わないけど」
「…………」
「寝て起きたら、どうせリセットされるわけだし」
「…………」
「ただ、あのメモ帳だけが気がかりなんだよな」
「…………」
「…………さてと。もうしばらく散歩でもしてくるか」
そう言い残して立ち去っていく瑠璃の姿を、月は再び薄目で確認する。
「…………!?」
彼は途中まで普通に歩いていたが、急に悪魔のような姿に変身した。
異常に細い全身に、骨のような羽根。
禍々しいオーラが漂っており、とても威圧感がある。
悪魔は一度こちらを振り返ったあとで、飛び去って行った。
約一分後。
「はぁ……」
月はようやく気を緩めて、メモ帳を取り出した。
そして、
【できれば倒してしまおう】
とだけ追記し、収納する。
そして目を閉じると、間もなく眠気が襲ってきた。




