第十二話【報酬】
「よし、お前で最後だ」
そう言って瑠璃は月をお姫様抱っこした。
「えっ……なんで私だけこの持ち方なんですか!?」
「残り一人だし。それに、単純にこうしたかったから」
「あ、そういえば私のことが好きって言ってましたね」
「まあな。……さて、跳ぶから舌を噛まないように気をつけろよ」
「はい」
彼は今までで一番優しくジャンプをする。
そして地上の通路へと上がり、ゆっくりと着地した。
「ふぅ、重かった」
そうつぶやきながら月を地面へと下ろす。
「……ありがとうございます」
月は少しだけ顔を赤くしながら言った。
「おう」
「て、失礼ですね! 一瞬聞き逃すところでしたよ」
「まあ気にすんな」
「気にしますぅ」
「よし、これで全員無事に帰還することができたな。もし誰か不足している団員がいると気づいた者は、名乗り出てくれ」
村雨が辺りを一瞥しつつ言った。
「俺が見た感じ、全員揃ってます」
「同意見です」
赤松と夜霧が返答した。
「わかった。…………琥珀川瑠璃くん。地下大国に閉じ込められてなお、こうしてウチの団員全員が脱出できたのは君のおかげだ。礼を言おう」
そう言って村雨は深くお辞儀をした。
同時に他の全員も頭を下げる。
「そのことについてなんだけど、報酬を要求してもいいかな?」
瑠璃が村雨の目の前に移動しながら言った。
「俺たちが払える額までであれば大丈夫だ。……で、何がいるんだ? お金か? それともドロップ品のアイテム──」
「──月」
瑠璃が即答した。
「……えっ?」
よく意味がわからなかったらしく、村雨は首を傾げる。
「天神ノ峰団に所属している鳳蝶月をもらいたい」
「そ、それは本人さえ良いのであれば、ギルドとしては構わないが。……鳳蝶はどうなんだ?」
村雨の言葉に、月は微笑んで返答する。
「ふふっ、もちろんOKです!」
すると、どこからか「ヒュ~」という口笛の音が聞こえてきた。
「というわけだから、交渉成立だ。……俺たちは今から外へと向かうから、その際に冒険者ギルドで手続きを済ませておこう。団員の退会は団長である俺が書類を書けば可能だからな」
「あー、頼む」
「よろしくお願いします」
瑠璃と月がほぼ同時に言った。
「どうやらサードステージは天神ノ峰団には早すぎたらしい。装備品もなくなったことだし、セカンドステージでしっかりと鍛えてから再び挑戦するとしよう。他の者もそれで文句はないな」
「「「はい!!」」」
村雨の言葉に全員が大声で返事をした。
「それじゃあ俺たちはこれで失礼する。……鳳蝶、今までありがとな」
「いえ、私のほうこそ、お世話になりました。団長が拾ってくれたからこそ、ここまで来ることができたんです」
そう言って月がお辞儀をした。
「気にするな。……それじゃあ、今後もがんばれよ」
「じゃあな、鳳蝶!」
「元気でやれよ!」
「琥珀川瑠璃って本当に実在していたんだな。俺男だけど、惚れちまったぜ」
「琥珀川瑠璃さん。助けにきてくれてありがとうございました」
「鳳蝶! 簡単に初めてをあげたりするなよ~?」
団員たちがそれぞれ感謝や別れの言葉を告げていく。
「おい最後に喋った赤髪! 意味はよくわからないけど、なんかムカつくからぶっ飛ばすぞ」
「赤松さん。殺しますよ?」
そう言って赤松を睨みつける瑠璃と月。
「うわっ、こわいから一足先に逃げよっと。……なんか俺にだけ当たりが強いような気がするんだけど、気のせいかな?」
そうして天神ノ峰団の全員が去っていった後。
月が突然瑠璃に抱きついた。
「瑠璃さぁん」
「うわっ、なんだよいきなり」
「改めまして、よろしくお願いします」
「お、おう。すごい今更感があるけどよろしくな」
「ふふっ、大規模ギルドからもらえる報酬でわざわざ選ぶなんて、よっぽど私のことが好きなんですね」
「ああ、人類のなかで一番大好きだ」
「……相変わらずあっさりしすぎて、少ししかドキッとしません」
「うん。そろそろ重いから離れてくれ」
「殺しますよ?」
「月ってさ、いつの間にか口が悪くなったよな」
「多分瑠璃さんの影響だと思います」
というわけで、正式に月が仲間に加わったのだった。




