第十一話【瞬殺】
「やはり獣人の体が硬すぎるせいで、私の攻撃力ではとどめを刺せないみたいです」
一応月のレベルは100万を超えている。
今現在の第三位とは比べ物にならないほど圧倒的な差をつけているのにもかかわらず殺せていないのを見ると、獣人の防御力の異常さがよくわかる。
「殺せば経験値がもらえるし、俺がやっとくよ」
そう言って瑠璃がローキックを入れるのと同時に獣人が破裂し、レベルアップの音が響いた。
「あー、ずるいですよ! せっかく私がそこまで追い詰めたのに。……せめてパーティを組んでからにしてくださいよぉ」
「今までレベル上げを手伝ってあげたんだからいいだろ。もう月の勝ちは決まっていたし」
「まったく、本当に仕方のない人ですね……」
とそこで、騒ぎを聞きつけてきたのか、たくさんの獣人たちがいろんな建物から出てきた。
「みんな、逃げろ」
村雨が全員に向けて言った。
「そうだな」
「「「はい」」」
瑠璃を含めた全員が返答し、一斉に走り出す。
「仲間がやられたぞぉ! 人間どもを追えぇー!」
「女子供以外は、全員武器を持って下等種族を殺せ」
「行くぞお前ら!」
後ろからそんな声が聞こえてくる。
「それにしても鳳蝶。お前、本当に強くなったな」
「まさかここまで戦えるとは思っていなかったぞ」
走りながら村雨と夜霧が言った。
「まあレベルが高いだけなんですけどね。上手な戦い方とかもよくわからないですし」
「それでも十分すげぇ。俺たちなんて全然勝負にならなかったんだから──」
「──む、村雨さんやばいですよ!! 後ろの団員たちが追い付かれそうです」
後方に位置する団員の一人が大声で叫んだ。
「くそ、やはり獣人相手にスピードで逃げ切るのは無理か」
「瑠璃さん! 後ろの人たちが追い付かれそうなんですけど、なんとかなりませんか?」
月が先頭の瑠璃に尋ねた。
「レベル上げにもなるし俺が全部倒してくる。全員天井に空いている穴の下まで移動しておいてくれ」
そう言い残し、瑠璃は後ろに向かって走り出す。
「おぉ、琥珀川瑠璃くんに対処してもらえるなら安心だ。……よし、みんな! 気を抜かずに走り抜くぞ!」
振り向きつつ、村雨が仲間を鼓舞した。
「「「「「はい!!」」」」」
「俺たちには村雨さんがついているぞ」
「強くなった鳳蝶もいる。やっぱりウチのギルドは最強だぁ!」
「天神ノ峰団をなめるな!」
数年前までランキング上位のほとんどを占領していた最強ギルドの団結力は、未だ健在のようだ。
「あ、盛り上がっているところ悪いけど、追いかけてきていた後ろのやつらはもう終わったから」
気づくと集団の先頭には瑠璃がいた。
「は?」
「えっ、いくら瑠璃さんとはいえ、早すぎないですか?」
「そうか? これでも結構抑えたんだけどな」
「……やっぱり人外ですね」
「自覚はある」
月以外の者は驚きのあまり声も出ない様子。
「そうこうしているうちに穴の下へ到着したな。もうかなり小さいし、急がないと全部塞がれそうだ。じゃあまずはお前らから連れていくぞ」
「えっ、ちょっ!?」
「いきなりだ──うわぁ!?」
彼は両腕で夜霧と赤松を掴み、勢いよくジャンプする。
その後瑠璃は、地下大国と地上を何往復もしていった。




