第六話【再会】
瑠璃がお城の階段を下りていくと、途中で頑丈そうな扉が行く手を遮っていた。
彼にしてみれば、頑丈でもなんでもないし、行く手を遮られているわけでもないのだが。
「どうせ余裕だろ」
彼が軽く押すと、ものすごい音とともに扉が開いていく。
実はこの扉、鍵がかかっているだけでなく、引いて開けるタイプでもあるのだが……相変わらずの人外っぷりである。
もう別の惑星に引っ越したほうが地球のためかもしれない。
「……おぉ」
扉の先には長い通路があり、左右に鉄格子がいくつも存在していた。
「なるほど、ここが地下牢か。……でも、空っぽだな」
左右を見渡しつつしばらく歩みを進めていくと、一番奥の部屋に女性の姿があった。
小柄で白髪ロングヘアー。
「おう月。さっきぶり!」
「いや、めちゃくちゃ軽い感じで現れましたね」
「そうでもないぞ。結構心配したし」
「あっ、そうなんですか?」
「まあな。というかさっさと自分で出てこいよ。月ならこの程度の鉄格子くらい壊せるだろ」
「いえ、まあ壊せるんですけどね……。普通かわいい女の子が鉄格子なんて破壊しないでしょ。それに、ついさっき目が覚めたばかりですし」
「女の子って……。もういい歳だと思うけど」
一応月は二十代後半である。
「相変わらずデリカシーないですね」
「俺は四次元の思考回路を持っているからな」
「説明になってませんよ」
「ま、悪いやつらは俺がほとんど壊滅させといたから、さっさと出てこい」
「私は瑠璃さんに壊してほしいです」
「はぁ……別にいいけどさ」
そう言って瑠璃は鉄格子を左右にこじ開けた。
「はい、どうぞ。お嬢さん」
「どうもっ!」
月はかわいい笑みを浮かべて外へと出てくる。
「さて、別の人間がこの先の発掘場で働いているみたいだし、行ってみるか」
「あ、はい」
「確証はないけど、多分天神ノ峰団だろ」
「サードステージに入る人なんてほとんどいないでしょうし、そうだと思います」
というわけで二人は通路を通って更に奥へと進んでいく。
少しして見えてきたのは巨大な穴だった。
地下とは思えないほど広く、深い。
木の足場が螺旋状に伸びている。
「深いですね。暗くて底が見えません」
「とりあえず下りてみるか」
「そうですね……て、飛び降りたりするのはやめてくださいよ? 下に人がいるかもしれませんし」
「…………」
瑠璃は視線を逸らして頭を掻いた。
「その反応……する気でしたよね?」
「バレた?」
「瑠璃さんの行動は案外単純ですから」
「そう思うのは、まだ月が三次元の思考回路だからだ」
「三次元であれ四次元であれ、単純なのに変わりはありません」
「よし行こうぜ」
そう言って足場の上を走り出す瑠璃。
「なんで話をそらすんですか」
「そらしてない」
「絶対にそらしてますよ」
「その考えに至る──」
「──時点でお前は三次元の思考回路だ! でしょ? ……何年も同じ部屋で過ごしていたら、言いたいことくらいわかりますよぉ~」
「……月って知らないうちに鬱陶しさが増したな」
「なっ、それを言ったら瑠璃さんなんて最初から鬱陶しかったですからね!」
「だろうな。自覚はある」
「あったんですか!?」
「まあいくら月が鬱陶しくなったとしても、俺がお前を嫌いになることはないけど」
「それって遠回しに告白してます?」
「ああ。好きだぞ」
「えっ?」
「親以外で初めて興味を持った人間だし」
「告白って普通そんな軽くやりますか? もっと雰囲気のある所で緊張しながら言うものじゃないでしょうか」
「いや、俺みたいに四次元の考えができるやつからすれば、そんなの一切関係ないから」
「で、好きという気持ちを伝えて、どうするつもりなんですか?」
「今まで通りだけど」
「……やっぱりそうですよね。結婚とかそういうことを言い出すんじゃないかと少しでも思った私がバカでした」
「そもそも好きだから付き合うだとか、愛しているから結婚するだとか、そんな定石に沿っているからいつまで経っても人間は人間のままなんだよ」
「全然言っている意味がわからないですが」
「だろうな。月はまだ三次元の考え方しかできないんだし」
「はぁ……。そうですか」
「ちなみに月は俺のことをどう思っているんだ?」
「えっ、いきなりですね」
「俺も教えたんだし、不公平だろ」
「まあ総合的にいうと好きですが、嫌いな部分も多いです」
「うん、知ってる」
「うわぁー、ムカつく」
お互いに好きだと伝えたのにもかかわらず、何も始まらない。
ほとんどが瑠璃のせいだろうが、月もどんどん常識から外れていっているのかもしれない。
それもこれも全て瑠璃の影響だろう。




