第四話【地下街】
別行動を始めて30分後。
オリハルコンのドアの前に戻ってきた瑠璃は、じっと月を待っていた。
「遅い。 ……正確な時間はわからないけど、そろそろのはずだよな?」
彼がいくら辺りを見渡してみるも、月の姿はない。
「ま、魔物でも倒しながら待っておくか」
というわけで、この付近にいる魔物を倒し始めるのだった。
もちろんこの程度の敵を何匹倒したところで瑠璃のレベルはひとつとして上がらないのだが、彼は経験値を稼ぐという行為そのものが癖になっていた。
敵を倒していない時間は無駄に思えて仕方ないのだが、月に出会ってからは少しだけ改善されてきている。
更に30分後。
「さすがに敵が弱すぎるだろ」
瑠璃は退屈すぎてあくびを止められないでいた。
なんせ彼の拳が当たる前に敵が粉々になっていくのだ。
「戦っている感覚がねぇ」
異空間にいた白竜はこれの何倍も強かったぞと思いつつ、瑠璃は走り出す。
「やっぱりどう考えても遅い。……けどあの月がこの程度の魔物にやられるとは思えないし、何かあったのかもしれない」
ものすごい速度で大通りを進みつつ、月を探していく。
しかしどこにも彼女の姿はない。
「参ったな。やっぱり一緒に探索するんだった」
彼はデパートのなかへと入り、動いていないエスカレーターを下りていく。
幸運なことに月と全く同じ場所へ向かっていた。
「俺の勘が、ここは何か怪しいと告げている」
地下街には本物そっくりのガラス張りのお店が並んでおり、少し薄暗い。
人は全くいないが、お店には商品がたくさん置いてある。
東○ばな奈のお菓子箱を見て、瑠璃はつぶやく。
「これって食べられるのかな」
とその時、一匹の巨大な狼が瑠璃に襲い掛かってきた。
「ガルルル」
「邪魔だ」
めちゃくちゃ手加減したジャブにより、巨大な狼が爆発した。
細かくなった血や肉が大量に飛び散る。
「月だったら、全力で殴ってもこいつをダウンさせるくらいだ──っ?」
何者かが突然彼の口元をハンカチで押さえた。
「おい、臭いからやめろ」
そう言って瑠璃は相手の腕を掴む。
「なっ……こいつ、なんで」
「これ、睡眠薬か何かなのか? こんなものが俺に通用するはずないだろ」
「ば、化け物め」
彼が振り向いて相手の姿を確認すると、そこにいたのはフードを被った獣人だった。
手の甲から毛が生えている。
顔はライオンのような見た目だ。
「月を連れ去ったのはお前だろ。さっさと返せ」
「ぐっ、離せ」
「別にいいけど、俺を相手に何か状況が変わると思うか?」
そう言って瑠璃は腕から手を離した。
「お前、何者だ……」
「それはこっちのセリフだ。俺はお前みたいに喋る魔物を見たことがない」
「魔物じゃない」
「そんなことどうでもいいから、早く案内しろ。俺の大切な仲間を攫ったのもどうせお前だろ?」
「地下大国への入り口を教えるわけにはいかん」
「なるほど、教えてくれてありがとな」
「は?」
瑠璃がアスファルトの床を殴った。
その瞬間地面に巨大な穴が空き、瑠璃と獣人は同時に下へと落ちていく。
「な、お前!?」
「入り口……あったぞ?」
「なんてことを!!」
下へと落ちながら瑠璃が周りを見渡すと、そこには茶色の街があった。
土でできた建物が立ち並び、遠くには巨大な土のお城も見える。
獣人たちが当たり前のように大通りを歩き、会話をしている。
「うわーすげぇ。これ全部土で造ってんのか? さすが地下大国とかいうだけあるな。……で、月はどこだ?」
「言うわけないだろ」
「じゃあいいや、俺一人で探すから」
瑠璃は地面へと着地するなり、そのままお城に向かって走り出す。




