第十九話【好意】
「ちなみにお前レベルいくつ?」
瑠璃が尋ねた。
「ふふんっ、よくぞ聞いてくれました。こう見えても天神ノ峰団に所属していてレベルは7200を超えているんですよ? 世界ランキングで言えば9位です」
「弱っ!?」
「琥珀川さんのレベルを基準にしないでください! おかしいのはあなたです」
「おかしいと思うからおかしいと感じてしまうんじゃないのか?」
「うん。全然言っている意味がわからないです」
「早く四次元の思考回路になってもらわないと、会話が成立しないな」
「一応聞いておきますけど、どうやったらその四次元の思考回路とやらが手に入るんですか?」
「そう疑問に思う時点で不可能だ」
「舌打ちしてもいいですか?」
「お前、さっき自分が生きたいように生きるとか言ってたじゃん。別に好きにすればいいだろ」
「……ちゅっ!」
鳳蝶が口を尖らせてそんな音を出した。
「…………お前の舌打ちきもいな」
「ほっといてください!」
「話は変わるが一応俺はお前を守ってやるけど、自分でも生き残る努力をしろよ? なんせいきなり100体以上の魔物に囲まれるからな」
「ひゃ、ひゃくたいですか!?」
「ああ」
「それ、大丈夫なんですか? 私死にませんかね?」
「知らん」
「女の子相手に冷たすぎますよ」
「男とか女とか、よくそんな貧しい発想が出てくるな。……例えば、友達とかでも、あれって気づいたらなっているものだろ? どこからが友達でどこからが他人なのかっていうわけのわからん疑問を抱いている時点で、友達なんて100パーセントできないし、そんな三次元の思考回路にいる時点で真の正解には絶対たどり着け──」
「──あ、あの! 魔物を倒すんでしたら、私とパーティを組んでもらえませんか?」
「パーティ? 別にいいけど、どうやるんだ?」
「私から申請を送るので、承諾してください」
そう言ってメニュー画面を操作し始める鳳蝶。
「で、そのパーティとやらになるとどんな恩恵が受けられるんだ?」
「えっとですね。基本的にはメニュー画面にパーティメンバーのステータスが表示されたり、獲得経験値がそれぞれに分配されたり。……あっ、今申請が行きました」
「……」
瑠璃は速攻で【拒否】を押した。
「あ、ありがとうございま……って、何してるんですか!?」
「獲得経験値が分配されるってことは、要するに俺に入る経験値が半分になるということだろ?」
「えっ、ええ。まあそうですけど」
「そんなのだめに決まっている」
「じゃあ私はどうやって強くなればいいんですか!? こんな見た目の魔物、私では一匹も倒せませんよ?」
「別に倒さなくていいぞ。経験値がもったいないし」
「あなた、そうとうな自己中野郎ですね!」
「悔しかったら俺から獲物を横取りしてみろ」
「言いましたね? 絶対私が一番強いのを仕留めてレベルアップしますから」
「了解……おっ、きたぞ」
瑠璃がつぶやいた瞬間、一気に100体以上の魔物が現れた。
改めて見るとものすごい圧力である。
上下左右どこを見ても、半端ない強さの魔物で埋め尽くされている。
その刹那、この部屋に閃光が走った。
正体は言わずもがな、瑠璃だ。
特別なスキルは何も使っておらず、ただ圧倒的なスピードで行動しているだけ。
魔物が出現して五秒後。
「はいお待たせ。とりあえず一番強い白竜だけは殺さずに残しているから、あとは頑張って」
瑠璃がそう言った直後、白竜以外の魔物が全て地面に倒れ、周囲が血の海になった。
彼の頭上からレベルアップの音が響く。
「……へっ?」
「ほらどうした? あいつがこっちに向かってきているぞ」
「いつの間に倒したんですか!? というかちょっと待ってください! なんですか、あの白い竜はっ」
「白竜が吐く白い息に当たると、お前のレベルなら一瞬で溶けるだろうから、気を付けてな」
「ちょ、ちょ……、倒してくださいよ」
「いや、お前が倒すって言ったんだろ?」
「前言撤回します。お願いですから、あなたが倒してください」
「はぁ、了解」
瑠璃がため息を吐いてから一秒も経たない間に白竜が絶命し、再びレベルアップの音が響いた。
鳳蝶は彼と白竜を一瞥し、呆れたように口を開く。
「あなた……化け物ですね」
「お前も早くこっち側の人間になれ」
「あなたが敵を全滅させる五秒の間に、魔物を倒してレベル上げしろと?」
「うん」
「無理に決まってるでしょ!?」
「そう思ってしまうということは、お前はやはり三次元の考え方しかできていない」
「もうその話は結構です。わけがわからないんで」
瑠璃は生まれて初めて、親以外の他人に本当の自分をさらけ出していた。
本人は気づいていないが、鳳蝶月に好意を寄せていたのだ。
初めての感情ゆえ、他とは何かが違う子、という認識しか抱けていないのだが。




