第十七話【出会い】
あれから一年後。
まだ瑠璃は異空間の膜を破壊できず、オリハルコンの部屋に閉じ込められていた。
「はぁ……。かなり攻撃力が上がっているはずなんだけど、全然手ごたえがないぞ」
膜から離れつつ、瑠璃はそんなことをつぶやいた。
まだ余裕とまではいかないけど、オリハルコンの壁を破壊するのもかなり簡単になってきている。
なのに膜に関しては全くなんの変化もないのだ。
それでも瑠璃の目は決して諦めていなかった。
「早く外に出たいけど、あの変な膜が破れないんだからしょうがない。……俺は俺のできることをするだけだ」
瑠璃がそう宣言した次の瞬間。
少し離れた位置に、一人の女性が出現した。
「!?」
突然のことに、瑠璃は言葉が出てこない。
「……」
十代後半に見えるその女性は、絹のように綺麗な白髪ロングヘアーで、前髪が目の上付近で整えられている。
かわいらしい顔つきで身長は低めだ。
真っ白の鎧と、短剣を装備している。
そんな彼女がゆっくりと目を開いた。
「……っ!? 魔物の死体!?」
「……」
驚いたような表情で辺りを見渡す女性に対し、彼は何も言わない。
「ここは……どこ?」
「……」
興味なさそうにその場へ座る瑠璃。
彼はそもそも異性に関心がなく、視界に入る異性がいくら美人だったり可愛くても、昔からただの人間としてしか映っていなかった。
二十代の男であれば普通は性欲で満ち溢れているはずなのだが、瑠璃の場合はそれが全て別の欲求に変換されている。
とにかく魔物と戦いたかったり、危ないことがやりたかったり。
とそこで、女性と瑠璃の目が合った。
「……えっと、あなたは?」
そう尋ねられた瑠璃は、一応とばかりにそっけなく返答する。
「琥珀川瑠璃」
「……こはくがわ、るりさん? どこかで聞いたような名前ですね。いえ、それよりもここはどこでしょうか? それとこの凶悪そうな魔物たちの死体は、あなたが?」
質問が多いなと思いながらも、彼はひとつずつ答えていく。
「ここはどこかの部屋。こいつらは全部俺が殺した」
すると彼女は怯えたように後ろへ下がりつつ、口を開く。
「そ……そうですか」
瑠璃は無言で寝転がり、目を閉じた。
「そういえば私……団長にお願いされて、階段が罠かどうかを確認しようとしていたような……」
女性は顎に手を当てて思考していく。
実は彼女、20歳にしてあの有名な大規模ギルドである天神ノ峰団の一員だった。
罠の発見や解除を専門としていて、ゲームの職業で言うならば盗賊というやつだ。
「それで……階段の目の前で躓いたような覚えがあります。で、気づいたらここにいて。えっと、つまり私は罠に嵌まっちゃったってことですか!?」
女性は再び辺りを見渡す。
「見た感じ出口はなく、この壁は……まさか! オリハルコン!?」
ようやく状況が把握できたらしく、彼女は絶望したようにぺたんと女の子座りをした。
彼女は若くして大規模ギルドに所属していただけあり、優秀でいろんな知識を持っている。
ゆえに、罠の恐ろしさとオリハルコンの硬さを知っていたのだ。
「そんな……。まだダンジョンを出現させた元凶を見つけていないのに」
そんな女性の言葉に、瑠璃が振り向いて反応する。
「ダンジョンを出現させた元凶?」
「えっ、あ、はい。……存在するかはわからないですけど、私はダンジョンを創った人を探して復讐したいんです」
「へぇ……」
「ダンジョンのせいで両親が死にましたから」
「ま、ダンジョンは危険な所だし、入った本人たちの責任だと思うけどな」
「そんなことわかってますよ!! ……でも、ダンジョンさえなければ、二人が死ぬことはなかったんです」
「ふ~ん」
「でも、その目標も今潰えました」
「なんで?」
「私たちは今、オリハルコンの部屋に閉じ込められているんですよ? 脱出できるわけないじゃないですか!」
彼女は言い切った。




