第十六話【異空間】
そして一年後。
ついにその時はやってきた。
「今日こそは絶対に行ける。ふぅ…………よし、始めるぞ!」
瑠璃は真剣な表情で拳を構える。
「──おりゃぁぁぁ!!」
大声を上げながら全力で壁を殴り始めた。
防御力もかなり増えたため、瑠璃の拳にかかる負担はある程度軽減されていた。
しかし攻撃力が圧倒的にずば抜けているからだろう。
殴るたびに瑠璃の拳から血が噴き出す。
「まだまだぁー!!」
瑠璃は連打の速度を上げていく。
もしオリハルコンを知っている人がこの光景を見ていれば、開いた口が塞がらないはずだ。
最も頑丈だとされている物を、素手で破壊しているのだから。
要するに現状で瑠璃が壊せない物質は、この世で存在しないことになる。
「早く外に出させろ!」
瑠璃はもうこの部屋に飽きていた。
その一番の理由は、魔物を全滅させると一時間も暇になるからだ。
最初のほうは体力を回復させるのに必死だったが、今ではステータスが強くなりすぎて魔物100体との戦闘が余裕すぎるため、毎回物足りない感がある。
その間敵を倒してレベル上げできないのが、彼にとってはすごく憂鬱だった。
「もうすぐだろ……おっ、きた!!」
バリンッと割れた感覚がしたかと思えば、オリハルコンの壁に穴が空いていた。
「て、なんだこれ!?」
壁の先には、透明な膜が張られていた。
所々が虹色に光り輝いている。
「とりあえず壊れろ!」
瑠璃が膜に向かって全体重を乗せたパンチを放つと、ほんの少しだけ拳が沈んだ。
「……おい、なんなんだよ」
オリハルコンをも破壊する威力があるのにもかかわらず、全て膜に吸収されていた。
そうこうしている間にも、壁の自動修復が行われていく。
「くそっ、いったん諦めるか」
瑠璃は壁の後ろへ下がった。
「せっかく外へ出られるかと思ったのに、何なんだあの変な膜は?」
実は、この部屋は異空間に閉じ込められていた。
これがセカンドステージの恐ろしさである。
罠に嵌まったが最後、二度と外へ出ることは不可能。
一応空間そのものを破壊できれば脱出可能だが、そんなことができる者は誰一人として存在しない。
物質の頑丈さなどという次元の話ではないのだから。
「ま、よくわからないけど、とりあえずもう少しレベルを上げればなんとかなるだろ」
そう言って瑠璃は床に寝転がった。




