第十五話【特訓】
白竜を倒してステータスとスキルのポイントを全て攻撃力に割り振った瑠璃は、拳を握る。
「本当に壊す気で行くぞ。……おりゃあ!!」
彼はオリハルコンの壁へと近づき、思いっきり殴った。
その瞬間、凄まじい衝撃と痛みが拳を襲う。
「──っ! ……マジで痛い」
しかも壁には傷ひとつついていない。
「嘘だろ。まだ威力が足りないのかよ」
瑠璃は手応えすら感じることができていなかった。
だからこそ笑う。
「じゃあもっとレベルを上げるしかないな」
◆ ◇ ◆
一ヶ月後。
オリハルコンの壁に少しだけヒビを入れられるようになった。
自動修復によってすぐ元通りになったが、立派な進歩だろう。
そして瑠璃がこの部屋で一ヶ月過ごしてようやく気づいたことだが、どうやら魔物たちは全滅した一時間後に復活するらしい。
つまり一匹でも殺せていなかった場合、魔物が復活することはない。
魔物の死体はダンジョンのシステム上、倒してから一日経たないと消滅しないため、瑠璃はずっと死体が溜まった状態で戦い続けている。
ちなみに少し汚い話になるが、魔物の死体の上で用を足した場合、なぜか一日後の死体が消えるタイミングで一緒に消滅していく。
それは拭く紙として代用していたドロップ品の薬草も同じであり、生きていないと判断される物を魔物の上に置いておくと自動で消えていくのだ。
瑠璃はこのことにファーストステージの段階で気づいており、同じ階層で何年過ごそうと特にトイレで困ることはなかった。
瑠璃はひたすら魔物を全滅させ、空いている一時間で食事を済ませたり、睡眠をとったり、ポイントを割り振ったりと、わりと忙しい毎日を送っていく。
◆ ◇ ◆
更に一ヶ月後。
オリハルコンの壁をほんの少しだけ砕けるようになった。
普通の人であれば、精神がおかしくなるような生活をしているのにもかかわらず、瑠璃はむしろ楽しくなってきていた。
なんせレベルの上がるスピードが今まで以上に早く、急成長していくのだ。
絶対に壊れないはずの壁を壊すという無茶な目標にだんだんと近づいている感覚が、瑠璃にやり甲斐を与えていた。
◆ ◇ ◆
それから三ヶ月後。
壁を殴り続けることによって、ちょっとずつ掘れるようになってきていた。
オリハルコンを殴るたびに拳が痛いのと、パンチ速度を上げたいというのもあり、瑠璃は最近素早さと防御力も鍛え始めている。
ちなみに昨日、彼は全力の右ストレートで白竜をワンパンできるようになった。




