漫才:スマホ(ソーシャル)ゲーム
――ボケ、ツッコミ、普通に登場
ツッコミ「どーもー」
ボケ「・・・・・・」
――ボケ、手元のスマホを見たまま何も言わない
ツッコミ「ほら君、本番なんだからちゃんと挨拶して」
ボケ「・・・・・・」
ツッコミ「すいませんね皆さん、礼儀知らずで。ほら」
ボケ「・・・・・・・」
ツッコミ「お前いい加減に――」
ボケ「よっしゃあ!!!」
――ボケ、大声を上げガッツポーズを取る
――ツッコミ大げさに驚く
ツッコミ「なんだよいきなり!?」
ボケ「ああ、悪い悪い、今スマホのゲームしてて、レアアイテムがゲット出来たから思わず叫んじゃったんだ」
ツッコミ「ああ、ゲームね。ていうか本番中は止めろ。ちなみに何やってたの?」
ボケ「ザ・型抜き」
ツッコミ「また微妙なタイトルのゲームを……」
――ツッコミ呆れる
ツッコミ「それって結局スマホで型抜きするだけでしょ?」
ボケ「いや、逆。型抜き屋のオヤジになって、馬鹿な小学生から金をむしり取るゲーム」
ツッコミ「ひどいゲームだな! でもなんか逆に興味が湧いてきたわ。具体的にどうするんだ?」
ボケ「ガチャで型を集めて、それを小学生にやらせるんだよ。小学生は馬鹿で不器用だから失敗するんだけど、たまに成功するんだ。それからバトル」
ツッコミ「バトル?」
ボケ「口げんかバトルで難癖つけて、失敗だと認めさせるんだよ。ここがちょっと削れてるとか、まだ削り足りないとか」
ツッコミ「嫌なオヤジだな! でも実際そんな感じだったわ縁日の型抜き屋」
ボケ「それでさっき、レアの型が出て思わず叫んじゃったのよ」
ツッコミ「へ~。ちなみにどんなのがあるの?」
ボケ「たとえばノーマルはこれ」
――ボケ、ツッコミにスマホを見せる
ツッコミ「何か綺麗なイラストでもあると思ったら、見事に型だなこれ。俺でも描けそう」
ボケ「いや無理だろ。このイラストはあの有名な鳥山あき――」
ツッコミ「とりやまあき!?」
ボケ「――まつり先生が描いた物だから」
ツッコミ「かほども知らんわ! 一瞬ドラゴンボールの鳥山明かと思ったけど、それはむしろ鳥山先生に失礼だった!」
ボケ「いや、この鳥山秋祭先生もすごいぞ。有名な型抜きの造形師で、その複雑さといやらしさから「人間の屑」とか「型よりお前の目玉を抜きたい」と言われている、今小学生が最も憎んでいる大人だ」
ツッコミ「どんだけ嫌な奴なんだよ! 小学生の方も怖すぎるわ!」
ボケ「まあその秋祭先生が監修している型は、やっぱりすごいよ。特にこの今引いたばかりのレアを見てくれ」
――ツッコミ、スマホを見て首をかしげる
ツッコミ「さっき見たノーマルと全く同じに見えるが……」
ボケ「はあ、これだから素人は。良くここ見て見ろ、ほら、ここがちょっと尖ってるだろ」
ツッコミ「あ、ほんとだ」
ボケ「この部分が罠で、馬鹿な小学生はここを間違えて削るから、難癖がつけやすくなるんだ」
ツッコミ「ホント最低だなこのゲーム! 制作者はどんだけ小学生に怨みあるんだよ!」
ボケ「いや、そんなことはないぞ。このゲームはちゃんと小学生のための賞品もゲーム内で用意してるから」
ツッコミ「まあ賞品がないとお客さんは来ないしな。たとえば何があるの?」
ボケ「石」
ツッコミ「え、今なんて言った?」
ボケ「石」
ツッコミ「石!? ほ、他には?」
ボケ「綺麗な石」
ツッコミ「また石かよ!?」
ボケ「更に綺麗な泥団子」
ツッコミ「ことごとく商品価値ゼロだな!」
ボケ「でも小学生は馬鹿だから、「100万円の宝石の原石だよ」って言えば騙せるんだよ」
ツッコミ「本当にもうどうしようもなく制作者は小学生が嫌いなんだな! 自分がかつては小学生だったことも忘れて!」
ボケ「でもこのゲームには1つ難点があるんだよ」
ツッコミ「俺からすれば難点しかないように見えるけど、いちおう話を聞こう」
ボケ「有料ガチャで型を手に入れるんだけど、失敗しようが成功しようが型は無くなるから、その度にガチャを引かないといけないんだ。これじゃ金がいくらあっても足りないよ」
ツッコミ「つまり小学生以上にこんなゲームをして金をむしり取られる大人が、一番の馬鹿と言うことだな」
――了――