JK真白ちゃん
教室まで戻って来ると委員長と優妃さん、美海に口々にお疲れさまーと声を掛けられては頭を撫でられる。俺は愛玩動物ではない。
普通に体育の授業を受けていたので、制汗スプレー系の独特な匂いが香って来る。確か体育館でバレーだったか、背の高い千草や見た目からしてスポーツマンの優妃さんはまだ身体が火照ったままなのか、パタパタと団扇を扇いで涼んでいる。
「身体測定お疲れ様。私達が離れて大丈夫だった?」
「身長が不服だと大騒ぎしたそうだ。保健室の村上先生は気の良い先生だし、あまり片意地を張らなくても良いからな。真白も気が楽だったんだろう」
「あっはっはっは、やっぱ身長は気にしてたか。ま、デカくなりたきゃとりあえず食って動いて寝て太るこった。土台が無いと身体はデカくならねぇからな」
「ちっちゃいからこそ真白ちゃんって感じはするけどね~」
美海さんに当たり前のように抱っこされて、膝の上に座らせられた俺は大人しくする以外に選択肢が無くなったので、美海さんに身体を預けてぶーっと抗議の視線を向けるが、全員が全員素知らぬ顔だ。
……まぁ、確かに一人暮らしにかまけて、食事に関しては適当になりがちだったのは自業自得だったから仕方がない。
それでも、魔法少女になる様になってからは、一応三食食べるように心掛けていたし、トレーニングもするようになったから、あれでも太った方なんだぞ。
「次の授業何だっけ?」
「現国。さえちゃんの授業だな」
6限目、今日の最後の授業は担任の三枝木教諭が担当する現代国語の授業らしい。
この学校、私立郡中女子学院は基本は所謂普通科の高校だ。ただ、お嬢様学校というのもあって、それなりにレベルは高いらしい。
まだ俺達は一年生だが、二年生からは成績と本人の進路希望に則ってレベルの高い大学へ進学するための進学クラスか、それ以外のクラスに分けられるらしい。
他にも選択授業で経営学、国際語学や、社交界でのマナーの講義などが隔日ごとに7限目として学ぶことが出来る。この辺りは大学のような感じで自分で出たい授業を都度選択して出席するんだとか。
授業頻度の関係上、基礎の基礎しか学べないとは説明は受けたけど、これらはお嬢様学校らしい授業カリキュラムだと思う。
ま、今日は6限で終わるので、次の授業で終わりだ。部活動への加入は自由だし、魔法少女としての活動もあり得る俺と千草は、真っ直ぐ諸星邸へ帰ることになるだろう。
「みなさーん、授業を始めますから席に着くように」
そんな感じでお喋りをしていると、チャイムが鳴って三枝木教諭が教室に入って来る。
他のクラスメイト達がそうしているように、俺達もクモの子を散らすようにして自分たちの席に座ると、クラス委員が号令を掛けて授業が始まった。
現国、現国かぁ。個人的に眠くなるんだよなぁ、この授業。
そんな事を思いながら、三枝木教諭の声と電子黒板の文字をノートに書き写していく内に、案の定眠くなって来た。いかん、初日で担任の授業で寝るのはいかん。
千草にも笑われる。耐えろ、俺。
「ふぁ……」
湧き出て来て止まらない眠気とあくびをこらえながら受ける授業は一体何年ぶりだろうか。看護学校時代も中々に眠い授業はあったけど、ここまで睡魔と戦う事は無かったような気がする。
しぱしぱする目を擦り、出てくるあくびを口で隠しながら格闘していると、三枝木教諭と不意に目が合う。
教卓前の一番近い席だから俺の動作はさぞ目立つことだろう。いや、起きようとは努力しているんです。
「初日で疲れてるのは分かりますが、寝ないようにしてくださいね、真白さん」
「ふぁい」
眠そうにしているのがバレて、釘を刺された俺の返事が明らかに舌足らずの眠そうな返事で、教室に小さな笑い声が起こったのは言うまでもない。
優妃さんと千草が一際笑ってるのは聞こえてるので、後で仕返ししてやる。