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JK真白ちゃん

キーンコーンカーンコーンと、数年前までは毎日のように聞いていた、ここ最近は聞くことが無くなった懐かしいチャイムの音が俺の耳に入って来る。


なんでこんな事になってるんだ、もうよく分からない。いや、確かに見た目年齢的に俺はこう言う場にいないとおかしいけれど、それにしたって手回しが早すぎないか。


大体光さんのせいだとは思う。というかこんな迅速に物事を進められそうな人は、俺の知り合いに光さんしかいない。アグレッシブル過ぎるだろあの人。


「じゃあ、先生が呼んだら中に入ってくださいね」


「1人で大丈夫か?ダメなら私も一緒に待ってるが」


「だ、大丈夫……!!」


そして何より、バキバキに緊張している。こんなに緊張しているのは、看護師の国家試験を受ける時以来だと思う。緊張のあまり、口の中がパサパサする程だ。


優しく声を掛けてくれた担任の女性教師と、心配そうにする千草を教室へと送り出し、俺は1人廊下で声がかけられるまで待つ。


そう、『教師』に『教室』だ。勘が鋭く無くとも、ここまで言えば俺が一体何処にいるのか、検討がつくと思う。


「では、皆さんの新しいクラスメイトを紹介します。真白さん、どうぞ」


ガヤガヤとにわかに騒がしくなった教室から、先生のよく通る声が響いて来た。

俺の名前を呼ぶ声、1番緊張するタイミングだ。


ガラガラと教室の引き戸を開けて中に入ると、30人以上の視線が一瞬で集まり、同時に俺の身体がピシリと固まる


以前なら、視線が集まるくらいなら屁でも無かったのだが、今ではこういった事に過剰なまでに反応してしまうようになった。


これは急性ストレス障害の症状の一つだ。発症して10日、男性にさえ会わなければ比較的症状が落ち着いているため、こうして外出もある程度は可能になった。


だけど、外に出るには誰かと一緒じゃないと不安だし、こうした視線が集まったらするのには過剰に反応して、身体が固まってしまう。


「あ、うぅ……」


極度の緊張で固まり、突然固まってしまった新顔にどうかしたのかと視線は向いたまま。その視線で更に俺が動け無くなる。


完全な悪循環。病状を一応は知っている先生が困ったような表情をしていると、見兼ねた千草が溜め息を1つして、割と後方にあった席を立って、俺の前までやって来ると、手を引いて教壇の上まで先導した。


「先生、すみませんがこのままで」


「そうですね。皆さん、諸星 真白さんです。少し事情のある子ですから、優しく声を掛けてあげて下さい。真白さん、自己紹介は出来ますか?」


手を握られたまま、千草が先生に促すと、先生も了解して、クラスのみんなに軽い説明をして、俺に自己紹介を振る。


それに合わせて視線も俺にまた集中して、飛び上がりそうになるけど、千草の手をぎゅっと握って何とか耐えた。


「も、諸星 真白です……。えっと、好きな食べ物はお餅です。よろしくお願いします……」


少し会釈して、クラス全体を見回すと、ぱちぱちと拍手が軽く起きて、ひとまず安心する。

どうやら、不躾な人はいないらしい。


まぁそれもそうか。何たって此処は『私立郡中女子学院 高等部』。

この街では1番有名なお嬢様学校なのだから。






何とか自己紹介も終えて、先生に指示された教卓の真ん前の席に座って、手に持っていたスクールバッグを机に掛ける。


その後に先生が2、3言ほど今日の予定や連絡事項を伝えると、朝のSHRの時間が終わり、周囲の生徒達がワッと俺の周りに集まって来た


「ひえっ……!!」


「よろしくねー、真白ちゃん」


「小ちゃくて可愛い〜」


「千草ちゃんの妹ちゃん?あんまり似てないね」


「バカっ、先生がワケありって言ってたでしょ」


「髪の毛って地毛なんですか?キレイですね」


「目も青いよ。お人形さんみたい」


次から次へと矢継ぎ早に複数のクラスメイト達から話しかけられて、囲まれて逃げられない上に知らない人だらけの状態で、俺はもう半分パニック状態。


再び見兼ねた千草が助けに来るまで、俺はクラスメイトの名も知らない無い女子達に蹂躙され続けた。


いや、ホントどうしてこうなったんだ……。

学生編スタート!!

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