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魔法少女はじめました


「アリウム!!アンタまた私の獲物横取りしに来たの?!」


振り返った先で視界に飛び込んで来たのは、フシャー!!と猫のような印象を与える、今にも飛び掛かりそうな威嚇をしてくる赤い髪の魔法少女『シャイニールビー』が、全身を擦り傷だらけにしている姿だった。


「横取りに来た訳じゃないわ。ルビー、貴女がまたボロボロになってるから助けに来てあげたのよ?本来なら、貴女の実力ならCランクの魔獣なんて瞬殺なのに、そんなボロボロになって。調子が悪いなら休んでいなさいと何回も言っているでしょう」


「うっさい!!野良に文句を言われる筋合いは無いわよ!!!!」


「この状況に野良も正規も関係ないでしょ。貴女一歩間違えたら死ぬところだったのよ?!自分のコンディションはちゃんと整えなさい!!」


「うっさいバーカ!!年増!!魔法ババア!!」


「……はぁ、全く、こういうところは見たまんまなんだから」


こちらの注意など聴く耳を持たず、見た目通り12~3歳頃の年頃の女の子の反抗期バリバリの反応を返してくるルビーに、俺は思わず頭を抱える。


確かに俺は、諸々の理由を考慮した結果、政府に属することなく、野良として魔法少女の活動を始めた、が窮地に陥った同職の魔法少女を助けることに、正規も野良も関係は無いだろうに、こうも反発されてはこちらも対応に困ってしまう。


「なによ!!子供だって言いたいわけ?!年上ぶらないでよ!!」


「ならせめて、自分の体調は整えてから魔獣と戦いなさいな。Bクラスの貴女が、Cクラスの魔獣に手も足も出ていない理由も、ちゃんと説明してくれるのよね?」


自己管理こそが、大人が大人たる所以だ。自分が何処まで出来るのか、自分の出来るラインを見極め、その都度、体調を含めた今の自分の状態で何処まで出来るのかを判断できるのが、大人と言う物だ。


それが出来ず、原因の説明も出来ずに唸っている彼女は、やはりまだまだ子供だ。


「はぁ、そのまま大人しくしてなさい。傷を治してあげるから」


「やーだー!!こっち来るな!!はーなーせー!!!!」


「暴れないの。全く、手のかかる子ね」


大きなため息をもう一度吐くと、俺はルビーの怪我を治療するため、彼女に近づいて行く。

俺こと、アリウムフルールは障壁魔法の他に、回復魔法も得意な魔法少女だ。


ルビーの体中についた擦り傷も俺の手にかかればさほど時間もかからずに治療ができるだろう。しかしまぁ、ルビーの方が暴れること暴れること。


あんまり暴れるもんだから、うっかり障壁で動けない様に固定してしまったが、不可抗力だろう。だって治療出来ないし。


「ふしゃー!!!!!」


「まるで病院に連れて来られた猫ね」


まさか本当に威嚇されるとは思わなかった。髪の毛を逆立ててこちらを睨むルビーだが、まぁこの程度なら可愛いものだ。


これで魔獣に殺されそうになっていた状況じゃなければ、怪我ばかりしている子を心配しながら治療するだけの微笑ましい光景なのだが、実際のところさっきから魔獣が後ろでうるさい。


「全く、うるさいわね」


文句は一言、動作もただ手を向けただけだが、それだけで魔獣は細く尖らせた障壁に心臓を貫かれ、絶命した。


なんとも障壁魔法とは便利なものだ。場所、形状は自由自在。防御も攻撃もこなせる万能の魔法ではないだろうか。


「……障壁をそんな使い方してるのは君だけだよ」


なにやら肩の上でパッシオがぼやいているが、無視無視。


それよりも怪我をしているルビーの治療だ。


「――っ!!」


「ちょっと、なんで泣きそうな顔してるのよ」


「泣いてない!!」


「泣いてるとは言ってないわよ」


再びルビーに視線を向ければ、当の本人は何故か悔しそうに口を真一文字に結んで、目尻に涙を浮かべていた。


なんか俺が泣かせたみたいじゃないか。ちょっと罪悪感あるから止めてほしいんだが。


「勝てないのが悔しいなら、まずは体調を整えること。万全なら勝てるんだから、焦る事は無いのよ?」


「うるさい……、バカ」


すっかり意気消沈してしまったルビーに何度目かのため息を吐きながら、治癒の魔法でルビーの怪我を癒していく。

身体中擦り傷だらけだ。痛いだろうに、泣きもしないのはこの子が強いのか、痛みに慣れてしまったのか。


後者だとしたら、あまりいい気分はしないな。


「はい、治療終わり。いい加減、本当に体調を整えないと病気になるわよ。他の魔法少女に任せておきなさいな」


そう注意がてら、俺はルビーの頭をよしよしと撫でてやる。さらさらとした肌触りの良い髪の毛だ。


そうしている内に、遠くからサイレンの音が聞こえて来た。魔獣を討伐したので、その後処理に来たのだろう。

彼らに面と向かって遭遇してしまうのは、野良として魔法少女をやっている以上、都合が悪い。


「じゃあね。ちゃんと、休むのよ」


ルビーの頭をコツンと小突いて、俺はその場から跳び上がり、ルビーの下を離れたのだった。


投稿2日で日刊ランキングに載って思わず笑いました


ページ数も少ないのに、読んでいただいて本当にありがとうございます


魔法少女モノが興味を惹かれやすいのか、単純に投稿数日だけのブーストなのかは判別がつきませんが、出来るだけ更新はしていくつもりではあるので、楽しんでいただけたらと思います



(出来ればメインで書いてる同じTSローファンの『俺を返せ!!』も読んでもらえると嬉しいです(小声))

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