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奇妙な噂

腕の中ですっかり弛緩した身体を、私へと預けてくれていらっしゃる真白様

最初にチラチラと見え隠れしていた警戒心が嘘のようです。やはり、奥様のあれが効いたのでしょう


奥様のあれはもはや天然の魔法の域です。目を数秒合わせただけで、その方の内面を看破するなど常人には出来ようもありません。私も、旦那様も、千草様もそれに救われました


同じ様に、奥様はこの子をお救いになるはずです。強く生きているが故に、脆いこの少女の精神が如何に細い糸でギリギリ保たれているのかは、私のような素人でも分かりました


でなければ、あのような慟哭が、この小さな体から出るはずもありません


「たっぷりお甘えになってください。お受けになれなかった愛は、私達が精いっぱいお渡しします。どうか、どうか、私達大人を、頼ってください」


あの慟哭の内容を疑う訳ではありませんが、もしあれが真実なのだとしたら、この子が受けた仕打ちと、数々の理不尽は世の中そのものを憎んでもおかしくない様なもの


そんな中で、政府所属では無いにしろ、魔法少女として世間を守ろうと言うのです


これは、どれほどの奇跡なのでしょうか


「ふふふ、流石のアリウム、じゃなかったな。真白も、美弥子のマッサージには形無しか。まるで子犬だな」


「えぇ、それ程に愛情に飢えていたとも言えます。元々大人ぶった口調も、もしかしたらその裏返しなのかも知れません」


「お節介焼きは、もともとの性格だとは思うけどな」


肩を竦めて笑う千草さまも、私の腕の中でボディケアを受けてまったりとしている真白様を見る目は墨亜様を見る時と同じ目になられている


真白様曰く、千草様よりは年上との事ですが、恐らくほぼ同い年でしょう


千草様も本来のご家族を失われて、諸星家にご養子として引き取られました辛い過去をお持ちである故に、真白様の境遇には自身を重ねるものがあるのかも知れません


「あっ、美弥子、真白が寝かけているぞ」


「あら?真白様、起きていてくださいね。この後ご入浴が待っていますよ」


意識を別の方向に向けていると、真白様がこっくりこっくりと船を漕ぎ始めてしまっています

元より、意識が目覚めただけで、体力も魔力も回復し切ってなさらないはず。奥様のお陰で心身ともに気を抜ける状態になれば、あっという間に眠くなってしまうのも当然と言えば当然ですね


「んー?……すみましぇん、寝てました」


「せめて10分。お身体を温めましょう。夏ではありますが、全身浴は身体の疲れを取るには最適ですから」


「はぁい」


寝ぼけ眼をしぱしぱと瞬きさせながら応える気の抜けた返事は、見るもの聞くもの全員を笑顔にさせること間違いなしです


実際、千草様も笑っておられます。どちらかというと、普段のギャップ差が激し過ぎて、それがツボにハマった様子ですが


「この様子をルビー達に見せてやりたいな。普段の様子からは想像も出来ん」


「真白お姉ちゃん、眠いのー?まだお風呂入ってないよ?」


その内、奥様と墨亜様が戻って来て、こちらに合流してくる。墨亜様は純粋に眠そうな真白様を覗き込むが、奥様はニコニコ笑いながら近づいて来ている


……あれは悪戯を考えている時の表情ですね


「真白ちゃーん。寝ても良いけど、寝ちゃうと私がチューしちゃうわよー」


「んー、ん?ぎゃあっ?!」


「あいたぁっ?!」


ふざけて真白様にキスをしようと近づいたところで、異変に気が付いた真白様が咄嗟に奥様を平手打ちして撃退しています


流石は魔法少女、害意のある行為には非常に敏感です。そして奥様は自業自得です。同じことを千草様に度々しては手痛い反撃を頂いている事をそろそろ学習するべきかと


ただでさえ、二人は多感な思春期なのですから


「目が醒めましたか?お身体を流しますので、座っていて下さると助かります」


「あっ、ハイ。よろしくお願いします」


目が醒めたであろう真白様を改めてバスチェアにしっかりと座らせ、私はしっかりと真白様の身体についた泡を洗い流していった


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