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奇妙な噂

顔が燃えるように熱い。女装のそれなんて比じゃない


何でこんな辱めを受けなくちゃならないんだ……


「うぅぅ……」


「ふふふ、予想通り、根は墨亜並みの甘えん坊ね?良いわよ〜、幾らでも甘えなさい」


「〜〜〜〜っ?!?!?」


気が付いたら光さんの胸に再び顔を埋めて唸っていた

違う、そうじゃない、なんだこれは


俺は26だぞ?!こんな子供っぽい反応してどうする。いい加減しっかりしなくては……


「大人に甘えるのは別に恥ずかしい事じゃないわよ?特に貴女みたいな甘え下手な子は、甘えられる時にたっぷり甘えなさい」


折角、危機感を募らせて身体に力を入れたところで、見計らったように、背中をぽんぼんと叩かれてあやされる


これがまた妙に心地良くて、俺はすっかり脱力してしまう

いや、だから何でだ、なんだこれは


「諦めろ真白。お義母様はそう言う人だ。人の心にするりと入って来るような人なんだ。その上、頑なになる前に絶妙な加減で甘やかしてくる。……私もそれで懐柔された」


「魔性が過ぎませんか……!!」


典型的なお堅い性格の千草が逆らえない魔性っぷり、恐ろし過ぎる


きっとこの人にとって年も性別も関係ない。その魔性の包容力で、誰も彼がイチコロなのではないだろうか


「ヤキモチを妬かなくても、千草ちゃんにもたっぷり甘えさせてあげるわよー。ほらほら〜」


「え"っ?!いや、お義母様、今は良いです!!せめて人がいない時に……!!」


「遠慮しなくて良いのよ〜」


溜め息をつきながら、光さんの魔性さを伝えてくれた千草が、今度は光さんの餌食になっている


言葉でこそ抵抗しているが、殆どされるがままだ。成る程、手懐けられた犬とはああいうことか


「ママ、凄いでしょ。ママは、みーんなに優しいんだよ。怒ると、怖いけど」


「そうね、びっくりしちゃった。突然泣いたりしたから、驚かせちゃった?」


「ううん。千草お姉ちゃんも、最初そうだったから」


一部始終を見ていた墨亜が、頃合いを見計らっていたのか、トテトテと小走りでやって来ると、また紅茶を飲む前と同じように、俺の身体を椅子がわりにして、寄り掛かって来る


突然大泣きした事を聞いてみると、そこまで驚きはないらしい


千草も含め、もしかしたら光さんなりの対処療法的な方法の1つなのかも知れない


「人前は恥ずかしいからやめてほしいと、何度も言ってるじゃないですか……!!」


「恥ずかしい事はないでしょう?何も変な事はしてないんだから」


「確かにそうですが、それとこれとは話が別なんです……!!」


入れ替わりで甘やかされていた千草が顔を真っ赤にさせて、光さんに抗議しているが、暖簾に腕押しとはこの事だろう


殆ど効果がないのは見ての通り。何も間違った事を言っていないのが、あの人が魔性たる所以の様な気もする


ただ、年頃の子が人前であれをやられるのは、確かに精神的に来そうなものがある。それ以上に光さんに浄化されてそうでもあるけど


「何というか、凄いところに来ちゃったな……」


「チチッ」


どうしても、光さんに勝てると言うか、逃げ出せるビジョンが浮かばない。何処かであっさり懐柔される未来しかない気がする


早速、暗礁に乗り上げたのでは?と思いながら、スコーンをかじるパッシオに視線を向けると「僕に頼られてもどうしようもないからね」と言う顔をされた後に、そっぽを向かれてからまたスコーンをかじり出した


食いしんぼめ


「さてさて、真白ちゃんもしっかり元気が出たところだし、親睦の意味も込めて後でお風呂でも入りましょうか」


「えっ」


「えっ」


「やったー!!」


そんな言葉の無い会話を相棒と交わしていると、元気溌溂とした光さんの発言に、俺と千草が驚いた顔を、墨亜が喜びの声を上げて賛同する


えっ?風呂?JKとJSと人妻と?一緒に?


ど う 考 え て も 事 案 で す


「えっ、や、ちょっと、待ってくださ……」


「そうと決まれば美弥子!!真白ちゃん用に車椅子を用意して!!」


「かしこまりました」


止める間もなく、テンションアゲアゲの光さんが美弥子さんに指示を飛ばし、それを迅速に実行に移す美弥子さん


あぁ、止めようもない。止まりようもない、どうするこれはどうやって回避する?!


とりあえず、一緒に風呂に入ろうと画策しているであろう、鼻の下を伸ばしたパッシオは是が非でも部屋に置いておくとして、俺が回避する術が全く思いつかない


今の肉体は確かに女子のそれだけど、バレたらヤバい。どう足掻いてもヤバい


小野真白、人生最大のピンチが、唐突に訪れた 

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