表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

594/1667

堕ちた勇者

S級魔獣リヴァイアタン。かの魔獣をデータとして具体的に見た場合、そのスペックが如何にバケモノじみているかがわかる。


鯨をベースにしたと思われるリヴァイアタンは初期観測段階で体長約300m。体長と言うのは頭の先から尻尾の先端までという意味だ。その長さが300m。


同じS級だったバハムートが30m。九尾が15m程だったことを考えると、サイズという一点に関しては文字通り他の追随を許さないほどの巨体であることが分かる。


あまりの巨体故に海中以外での生存には適さないようで、地上での活動記録無いし、活動方法も無いのがせめてもの救いではあったものの、その巨大すぎる身体は人間界の各国物流の主役であった海上貿易路(シーレーン)を徹底的に破壊し尽くした。


何せ大型タンカーですら一飲みにする。しかも海中の移動速度はその巨体に見合わず素早く、船で逃げることは敵わない。


戦艦を始めとした兵器類も当然のように一飲みだ。主砲を何発撃ち込んだところでビクともしなければ、リヴァイアタンにとって蟻を踏み潰すのと何も変わらなかった。


そして、リヴァイアタンの最大の特徴は成長するということである。或いは吸収と言うべきか。

あの魔獣は餌として食った魔獣や魔法少女の魔力を取り込み、その巨体を更に大きくさせていった。


最終的にはその体長は450mに及ぶほどだったという。


水中戦闘に適した魔法少女は空中戦のそれよりも更に少ない。水上にいようものなら海中から一飲みされて終わり。


打つ手のないこの海の支配者にどうするべきかと頭を悩ませていた人類だったが、その結果は意外な形で終幕する。


何度となく言っているように、リヴァイアタンはその巨体を活動させ、維持するだけの魔力を確保出来なくなっていったのだ。


魔獣には魔力がいる。その補充のためにリヴァイアタンは魔獣や討伐に来る魔法少女を喰らっていたが、あまりにも巨大になり過ぎた。


結果、水底で眠りに付きその活動を止めた。巨大になり過ぎた海の支配者は、肉体を維持するだけで精一杯となり、その巨体を動かすエネルギーは尽きてしまった。


医学的に敢えていうなら、食事を摂っても基礎代謝だけで全てのエネルギーを消耗してしまうようになったのだ。

そんなことになれば、身体はとてもじゃないけど動かせなくなり、緩やかな滅びを迎えることになるだろう。


そうして、リヴァイアタンの脅威は去った。生憎、生命の豊富な海では比例して魔獣の数も多く、変わらず船を出すには危険が伴う。


加えて、空輸に活路を見出した人類は現在、海上輸送には頼らず、比較的安全が担保されるようになった航空機での輸送をメインとするようになった、というわけだ。


そんなバケモノが再び息を吹き返すとなれば、活路を見出しつつある人類の今後に大きな影響を与える事は間違いない。


「そんな、バカな事を……」


「信じ難い事だと俺も思います。ですが、この目で見ました。水の底に横たわるその姿を」


絶句するしかない。ようやく振り払われたはずのS級魔獣の脅威、それが復活すればロクな事にはならない。


それが【ノーブル】の目的。神と称えるには確かに相応しいかも知れないが、それは災いをもたらす厄神。

いや、その災いをもたらすことこそが、最終的な目的か。


自らの神の力で世界を破滅に導く。行き過ぎた終末主義の末路、といったところかな。


「その場所はどこにある?場所が分かれば……」


「すまない。そこへ行くにはショルシエの転移魔法が必要なんだ。その場所がどこなのかもわからなければ、都度転移魔法が設置してある場所も変わる。少なくとも俺はそうだった」


「相変わらず用心深い魔女め……」


ショルシエらしい味方ですら信用していない徹底した情報の秘匿っぷりにパッシオは舌打ちをする。


そこまで都合よくは知れなかったか……。でも、他にも色々聞きたい事はあるし、場所のヒントを得られる何かはあるはず。


私は次の質問を投げかける事にした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] キロ単位じゃないなら、水中活動さえできるようになればなんとか対抗はできるかも?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ