赤い髪と青灰の瞳
やって来た店員さんにこのお店のシステムを聞くと、飲食のスペースとふれあいのスペースに別れているらしい。注文をした段階でふれあいの料金が飲食代金分に加算されるらしい。
ふれあいの時間自体はフリータイムで料金は据え置き。餌やり体験だけは別途料金がかかるそうだ。
「では早速ご案内いたしますね」
「お願いしまーす」
店員さんに案内され、私達は席を離れる。愛菜さんは席に残って荷物番をしてくれるとのこと。よろしくお願いします。
ガラス戸で仕切られたスペースの中に入ると止まり木に止まったフクロウたちがお出迎えしてくれた。
大きな身体の子から、小さな子もいる。目に入っただけで6羽はいるみたいで皆思い思いの場所に止まってはマイペースに寝ている子と、興味津々な感じでこっちを眺めている子もいた。
「あ、あれ知ってるっすよ。アフリカオオコノハズクっす」
「メンフクロウにワシミミズクもいますよ」
「二人ともよく知ってるねぇ」
爬虫類を筆頭に、生き物大好き紫ちゃんが詳しいのは分かるけど舞ちゃんもよく分かるなぁ。私には全部同じに見えるよ。身体の大きさと羽根の色が違うくらいしか分からない。
とかなんとか言ってると、一番ちっちゃいアフリカオオコノハズク?だっけ。灰色で身体のちっちゃいフクロウが私の前に飛んで来た。
「ホー」
「あら、珍しいですね。この子臆病だからあんまり初対面だと近付いて来ないんですけど」
珍しいと驚く店員さんをよそに、私を見て鳴くフクロウ。なんとなくぺこりと頭を下げたら、頭を下げ返してくれた。お行儀がよろしいようで。
まずはそのまま触ってみてくださいと店員さんに言われて恐る恐る触ってみると片眼を瞑ってすりすり。おぉ、可愛い。
「……なんか頭に乗られたんだが」
「あぁ、その子は悪戯好きなんです。爪大丈夫ですか?痛いなら降ろしますけど」
「爪は平気だがこれだと何も出来ん。降ろしてくれ」
私がアフリカオオコノハズクと戯れていると、エイさんは人知れず一番身体の大きな子を頭の上に乗せていた。
正確には乗られていた、が正しいんだけど物凄くシュールだ。不機嫌そうな顔の上で大きなフクロウが我が物顔で陣取っている姿は愛菜さんに見せたら大爆笑だと思う。
すかさず朱莉が写真を撮っていたのでその辺は抜かりが無さそうだ。
「アンタ達動物に好かれるわね~。私のところにはちっとも寄って来ないわよ」
「猫だからじゃない?」
「アンタには言われたくないわよ」
フクロウにとっては天敵の一種だろうしねぇ猫。ボス猫に近付かないのも仕方ないのかも知れない。そもそもペットとは言え、フクロウが自分達から寄って来るなんてことは早々無いんだろうけど。
墨亜も私の隣に来て、一緒に触って楽しんでるし、動物好きな紫ちゃんは去ることながら、舞ちゃんも楽しそうだ。
「……ん?あれ?委員長は?」
「さっきくしゃみが出るって飲食スペースに戻ったよ」
「どうやら、軽い羽毛アレルギーだったみたいでして……。たまにアレルギーだと気付かずにご来店なさってしまう場合もあるんですよ」
あらら、意外や意外。羽毛アレルギーかぁ。もしかすると、本人が知らなかっただけで、お屋敷のメイドさん達なんかはそれとなく気付いていて、羽毛布団とかからは遠ざけてたのかな。
ほら、お高い掛布団って大体羽毛だから……。私も使ってるの羽毛だし。
というか、羽毛がダメならもしかして千草の鷹メモリーの翼もダメなんじゃ。あれは魔力由来だから大丈夫なんだろうか。
「で?これはいつ退いてくれるんだ?」
「ホォー」
「あ、すみません」
「面白いからそのままでも良いわよ」
そして大きなフクロウ君に頭に乗られ続けるエイさん。心なしか乗っているフクロウ君は誇らしげだ。
それにしてももふもふだ。犬や猫のモフモフとは違う。羽毛独特のやわらかいモフモフは触っていて心地よい。
「腕に乗せたい時は皮手袋をしてください。爪で怪我する場合もありますから」
手渡された皮手袋をはめ、手を差し出すとちょこんと飛び乗ってくれた。か、可愛い……!!
真ん丸お目目の愛らしさも加わって強烈な可愛さだ。ちょっと飼ってみたい。お世話が大変そうだから買ってとは流石に簡単には言えないけど。
「軽いな。見た目からすると10㎏ぐらいありそうなものだが」
「その子の体重は3kgくらいですね。フクロウの中でも大きな種類なんですよ」
種類はワシミミズクと言うらしい。ワシ、と名づくだけあって大きい。翼を広げると2m近くにまでなるそうだ。
まさに猛禽類の大きさ。アフリカオオコノハズクがマスコット的可愛らしさなら、ワシミミズクはワイルドなカッコよさが魅力的だね。




