奇妙な噂
「えっ、えっ?!真白さん?!えっ女の子?あれ???」
「言われてみるとお顔はそのままよねぇ。元が綺麗だから、髪型と服装が変わると全然分からないわねぇ」
混乱する朱莉ちゃんと、マジマジと俺を観察して感心しながらうんうんと頷いている朱里さん
親子でバラバラの反応だが、何にせよそんなにジロジロ見ないでください。ホントにお願いします、何でもしますから
と、俺がもじもじしながら恥ずかしがっていると紫ちゃんが急かすように背中をグイグイ押して来て、二人の近くへと俺を連れて行く
うぉああぁぁぁぁぁぁぁ、無理ぃっ
「わ、近くで見ても全然わかんない。てかまつ毛なっが、目でっか、足と腕ほっそ。えっ、真白さん、年齢じゃなくて性別も間違えました?」
「流石に怒るよっ?!」
あんまりな物言いに流石の俺も顔を上げて抗議する。演劇やってた時も同じ事言われてたけどさぁ?!
「声も女の子の声出せるのねぇ。ホント、言われないと分からないわ」
「でしょ、本人にも言ったけど、モデルとしてお仕事頼みたいくらいには綺麗な顔してるのよね。身長はともかく、スタイル自体は良いし」
大人組も言いたい放題だ。そんなに俺をいじめて楽しいかね、あと誰がチビだコラ
俺がぷんすか怒っていても、元々迫力が無いのに今の姿で更に迫力が落ちている
紫ちゃんは相変わらず可愛いーと語彙を失ってデレデレしているし、朱莉ちゃんは未だに疑うようなまなざしでこちらを見ている
いい加減本人だから、認めてくれません???
「バッチリ胸もあるしなぁ。パッドらしいけど」
「ひゃんっ?!?!」
出来上がったカオスな状況に一人、黙ってニヤニヤしていた碧ちゃんがいつの間にか俺の後ろに立っていたかと思うと、後ろからむんずと俺のパッド3枚重ねで出来上がった胸の膨らみを揉みしだき始めた
突然現れた碧ちゃんと、その感触に驚いた俺は腹の底から変な声が出てしまう
「ごふぅっ?!」
「なにするのバカ!!!!!!!!」
驚いて咄嗟に出たのは右のエルボー。見事に碧ちゃんの鳩尾に叩き込んだ俺は沈む碧ちゃんからベッドのヘリまで下がってぐるるるると唸り声を上げながら威嚇する
野郎だっていきなり胸を揉まれたらびっくりするし、滅茶苦茶恥ずかしいと言うのは全世界で認識されるべき事実である。しばらくそこで苦しんでいてくれ
「うおぉぉっ、全く容赦がなかった……!!」
「いや、今のはアンタが悪いわ」
「私も今のは碧ちゃんが悪いと思うな」
蹲る碧ちゃんに、朱莉ちゃんと紫ちゃんも白い目で見ている。生憎今の行動で碧ちゃんの味方になってくれる人は一人もいない
流石にデリカシーに欠ける行為だし
「良い悲鳴が聞けたわ。見事に調教されてるわね」
「由香ちゃん、言い方」
「そろそろ真面目に怒りますよっ?!?!」
由香さんは由香さんで俺の悲鳴に関して、調教と言いやがった。誰が調教済みだこの野郎
演劇部時代にヒロイン役しかやってないから身体にしみついてるんだよ!!
※人はそれを刷り込み。もしくは調教と呼びます
「言いたい放題言ってくれちゃって、ホントに」
「でも普通にさっきの反応は可愛い女子のそれだったわね」
「朱莉ちゃんもさっきから容赦ないよね???」
碧ちゃんの味方もいないが俺の味方もいない。チクショウ、皆可愛い可愛い言いやがって
一応こちとら男なんだから、言われるならカッコいいと言われる方が圧倒的に喜べると言うのに。綺麗は共通の褒め言葉だと思うのでセーフだ
胸を触られた気恥ずかしさと、この女装している格好を見知った人に見せている恥ずかしさに未だに顔を赤く染めながら、俺は指で髪の毛をくるくると弄ばせる
「いや、その恥ずかしがり方も完全に女子だから」
「うるさいなぁっ!!」
咄嗟に出るんだから仕方ないだろ、もうっ