魔法少女交流会
ウチは鼓、魔法庁大阪支部から今回の交流会に派遣された魔法少女や。
派遣された理由なんやけど、ウチんとこの支部長が「新しく出来た魔法少女協会ってのがエライ成果と高い評価もろてるから、その秘密と裏事情すっぱ抜いて来い!!」っつーしょーもないもんや。
どこのお偉いさんも自分の立場を維持するための成果と、周りを蹴落としてでものし上がろうっちゅうのに躍起なんやろなぁ。
おかげでどこの支部も上と下のいざこざが大変やってよく聞くわ。
この街で魔法少女を監督してた、南東北支部も上と下は仲悪かったみたいやしな。その上なんやスパイみたいな事までしとったらしい。それをうまーく誘い出して引きずり下ろしたのは凄いことやで。
ここの支部長が逮捕されて、南東北支部に空白期間が出来たタイミングでその隙間にねじ込んで、この街にいた魔法少女やらその監督者やら職員やらを殆ど引き抜いてったのがウチが今いる魔法少女協会って組織や。
ま、基本的に魔法庁支部とやってることは変わらへん。魔獣と戦ってくれる魔法少女を管理して、報酬を支払ったり、身辺警護したり、訓練させたりが主な仕事みたいや。
一番の明確な違いは上層部と現場の信頼関係やな。ここは世界中から色んなスポンサーが出資して運営しとるらしいけど、その一番の出資元と創設者があの諸星グループの直接の関係者。
一体どんくらい金にがめつい奴がトップなんやろと期待しとったら、がめついどころかめちゃめちゃ良い人やった。
初対面のウチでも分かる。アレは本気でウチら魔法少女の事を考えてる人や。
せや無かったらよっぽどの詐欺師やな。ま、ホンマの詐欺師なら出資金全部パクって逃げるんやろうけど。
とにかく、ここの会長さんはマジでここを魔法少女のために作って、魔法少女のために大きくしていくつもりみたいや。それが分かっとるからか、上層部と現場がめちゃくちゃ仲がええみたいやな。
上と下が仲ええなら仕事は円滑や。余計ないざこざがあらへんから、スムーズにあれもこれも進む。
スポンサーも付いとるから施設も充実しとるみたいやし、正直羨ましいわ。ウチも協会に今すぐ乗り換えたい思うもん。
そんくらい魅力的や。まぁ、それが大阪まで来るのにはエライ時間がかかるのは目に見えとるし、それまでウチが魔法少女やっとるかは正直分からんけど。
んで、まぁ、一応お上の指示や。魔法少女協会が成果を上げている理由やらなんやらを突き止めろ、っちゅうのは自分なりにやっとるつもりやけど、まあ結論はシンプルやな。
まず、金がある。次に上が信用できる。んで、最後は――。
「――ッ!!はぁっ……、げほっ!!」
「まだ諦めない?勝負はついてると思うけど」
魔法少女がバカ強いっつー、単純な話や。
今戦っとるのは魔法庁の東京本部から来た結界の魔法少女 巫っつー、防御面では中々有名やった魔法少女や。
長く魔法少女をやっとってアンテナ伸ばしてれば小耳には挟んだ事ある名前やな。
元々他の街の魔法少女とは殆ど顔を合わせる機会が無いから、あんま詳しい人もおらんけど、ウチは数少ないアンテナ伸ばしてる方の魔法少女。
さっきも言うたけど、巫っつー魔法少女はそれなりに有名で、実力もあるっちゅうのは知っとる。
得意なのは文字通り結界。エラいカッチカチな魔力の壁で魔獣の攻撃を寄せ付けへんのがウリやったらしいけど……。
「まだっ、やれます!!」
今、泥だらけになって死にものぐるいで戦っとるのが、その巫や。
攻撃なんて屁でもない、涼しい顔して受け止めている側だったハズの魔法少女が、必死の形相で駆けずり回ってどうにか反撃しようとしている光景は、ハッキリ言って異様や。
クリスなんてさっきから口一つ開かへん。コイツも巫と同じ壁を張って攻撃を受け止める防御が得意な魔法少女や。
他にも何人かそういう魔法少女が来てる筈や。防御自慢の魔法少女っつーのは案外重宝されるんや。
で、その巫が戦っとる魔法少女は最近現れたくせに、天才なんてもてはやされとった。
ウチらの中には自分の方が上やと見せつけたろ、と思っとった奴もおるやろ。
多分、巫もその1人。自分の実力を示したるために、真正面から勝ったる。嫌味やなく、天狗の鼻を折ってやるつもりやったんや。
でも、逆やった。
「そう、根性のある子は好きよ」
「ーーっっ!!」
結界を形成しようとした瞬間に真上に障壁を張られて結界が不発になる。
もう何度も見た光景や。相手をしている魔法少女、アリウムフルールは巫の魔法の欠点をあっさり見つけて、完膚なきまでにその魔法を出鼻から挫いとる。
そらそうや、ずっと展開したままの障壁とゼロから魔法が発動する結界。
どっちが早いかなんて、誰でも分かる。
巫の結界じゃ、堅さは勝ててもスピードと技術で全く敵わへん。他の防御自慢の魔法少女達もや。
「……酷いことすんなぁ。こんなん、嫌でも現実叩きつけられて、自信無くすで」
「いえ、現実を分かって無かった私達にも問題があるんですよ。本物に比べたら、私達はあくまでも平均レベルの魔法少女ということです」
そういうことなんやけどな。天才と凡才、どっちが上かなんて比べる余地もあらへん。
アリウムフルールは紛れもなく天才で、巫は凡才やった。それだけの話。天狗の鼻が伸びてたのはウチらやっただけの話。
ただそれでもや。
「一歩も動かんどころか、身振り手振りもせんで圧倒ちゅうのは、ホンマ。巫がちょっとかわいそうやわ」
「しかも手加減をされて、です。本気を出せたら、恐らく東京の魔法少女3人を同時に相手取ってみせるくらいはやりそうです」
「おっかないわぁ」
ホンマ、無慈悲やなぁ。天才っちゅーのは。




