魔法少女交流会
決着がついたところで待ったを掛けてクルボレレと瑞鬼ちゃんの二人を回収。ケガの治療を手早く行う。
治癒魔法は便利だけど、傷は早めに治すに越したことは無い。二人とも小さいけれど擦り傷だらけだしね。
「お疲れ様二人とも。瑞鬼ちゃんもクルボレレも巻き込んじゃってごめんね」
他の治癒魔法を使える魔法少女達にも手伝ってもらったり、力自慢や土魔法が得意な魔法少女達にはさっきの戦闘で傷んだ訓練場の地面の補修をしてもらう。
ついでに、治癒魔法のちょっとしたコツや手順を教えるのも忘れない。補修の方も、大雑把にやると上手くいかないので、魔法少女達がアレコレ意見を出し合っていていい雰囲気だ。
「いえ、私の方こそニーチェがご迷惑を……。あ、クルボレレさんもすみません。予想していたよりもずっと強くてあまり手加減が」
「良いっす良いっす!!おかげで自分がどのくらいの強さなのかが分かった気がするっす!!強くなったつもりだったっすけど、まだまだ強くなれるって分かったっすから」
ニコニコ笑うクルボレレに瑞鬼さんはホッと肩を撫でおろしている。クルボレレはこういうメンタルの強さというか、底抜けの明るさが良いよね。
常に前向きに考えられるのは見習わないとなぁ。
「ちょっと!!何仲良くしてるのよ!!敵でしょ!!」
そこにニーチェがやって来て相変わらずぷりぷりと怒っている。本当、何がそんなに面白くないんだか。相変わらず漏れ出している魔力もそのままだし、戦闘だけではすっきりしないかも知れないなこれは。
「敵じゃないですよニーチェ。何をそんなに怒っているんですか?ちょっと最近の貴女はおかしいですよ」
「何ですって?!」
「まぁまぁ、落ち着けって、な?勝負はそっちの1勝だろ。まずは仲間を労うのが先だろ」
興奮する彼女を双子のもう一人とアズールも諭すが、襲い掛かって来そうな雰囲気には周囲もぴりぴりとした空気が漂う。
ニーチェに対しては周囲の魔法少女達も警戒感や不信感が高まってしまっている。これは良くないな。
それにしたって異様とも思える興奮具合だ。感情の起伏が激し過ぎて自分でコントロール出来ていないように思う。
双子ちゃんの片割れが最近の貴女は、という言葉を信じるなら以前の彼女はこうでは無かった、ということだ。
異様な興奮、暴力や挑発行為、まさかとは思うけど……。ちょっと新田先生にも声を掛けておくか。不自然過ぎる。
頭によぎった最悪の予想にならない事を祈りつつ、治療していた瑞鬼さんの頭を撫でて治療の終了を伝える。
頭を撫でられて瑞鬼さんは恥ずかしそうだ。可愛い~。
「次は私ですね。ニーチェ、私が戦いたい人を指名しても?」
「ふんっ、勝手にしなさい」
あちらはなんとか丸く収めたようだ。不満げなニーチェから離れ、こちらに歩きながら肩を竦める双子ちゃんの片割れが私の前に立ち止まると。
「ぜひ、お手合わせをお願いしたいです。花びらの魔法少女 アリウムフルールさん」
「え?私?」
どうやら、彼女が戦ってみたい相手というのは私の事らしい。真っ直ぐに見つめて来る視線に、嘘偽りはないらしい。勝てる見込みがあるからとか、そういった打算的なものではなく、純粋に私と戦ってみたいということの様だ。
「不世出の障壁魔法の使い手と聞いています。多少違いますが、同じような魔法の使い手として是非お手合わせを」
「そういうことなら私も是非。手加減はしないわ」
「されては困りますね」
がしっと握手をして、修復が終わったらしい訓練場の内側へと歩いていく。
少し違うとは言っていたけど、私と同じ障壁魔法の使い手。一体どんな魔法を使うのか、楽しみだ。
「まずは自己紹介から。東京本部から参りました。結界の魔法少女 巫。よろしくお願いします」
「魔法少女協会所属の花びらの魔法少女 アリウムフルールよ。お手柔らかにね」
ぺこりと頭を下げ、丁寧に自己紹介を済ませた巫ちゃんに倣って私も自己紹介。彼女も瑞鬼ちゃんと同じように巫女装束のような和装の魔法少女。
この場にいる魔法少女達の中でも1割いないくらいの珍しい姿の魔法少女で、その魔法具と思われる武装も紐で繋がった10㎝程の鉄杭だろうか。
一体どんな風に使うのか、楽しみだ。
「では、模擬戦の第二試合。――はじめっ!!」
二度目のクリスちゃんの号令と共に模擬戦の2戦目が始まった。
 




