魔法少女交流会
案の定後ろから順番に小突かれて、会議室には魔法少女を注意する声とそれに不満を漏らす大人たちの声があちこちから聞こえて来る。
基本的に魔法少女はどこまでいっても子供。高校生くらいの年齢の子達でも、大人たちのするお堅い話は退屈でつまらないものだ。
学校の先生の話や親の話を全く聞かないと思えば概ねその通りだろうか。
それが子供の憎たらしい部分でもあり、可愛らしい部分でもあるのだけど、引率の大人達は大変だ。
「大人の苦労はどこも変わらないようで」
思わず出た光さんの言葉に大人達はため息を吐きながら頷いている。
これには私も苦笑い。個性的な魔法少女達をまとめる苦労というのはどこに行っても大変らしい。
勝手に代表して謝っておきます。毎度お騒がせしてすみません……。
最終的に、大人は大人で、子供達は子供達でまとまった方がいいという結論に至り、私達はぞろぞろとしめて1クラス分ほどの大人数で移動を始める事になった。
「なぁなぁ、これからどうするん?お昼はまだ早いしなぁ」
「どんだけお腹減ってるの。ごめんなさい、この子は昔から食い気ばかりで」
これだけの人数となると、収めるところも限られて来る。一先ず、訓練場に行って、皆に施設の説明なんかをするとしてさてはてどうしようっかな。
と思っていると、隣にやって来た2人の魔法少女。
さっきの関西弁の子とその子と顔見知りらしい背の高い子が話かけて来た。
「よそ様のところに来て良い子ぶってもしゃーないやろクリス。あ、ウチは大阪支部所属で音撃の魔法少女 鼓や。よろしゅー」
「よそ様のところなら尚更襟を正すべきでしょう?失礼、私は甲府支部所属の水晶の魔法少女 クリス。鼓とは家族付き合いがあって、魔法少女を始める前からの知り合いなんです」
「そうなんですか。私は花びらの魔法少女 アリウムフルールと言います。よろしくお願いしますね」
鼓ちゃんはお祭り衣装に近い様な、法被や小さなしめ縄が衣装にあって、腰には太鼓のバチの様なものが二本ぶら下がっている。
クリスさんは全体的私の姿に近い。全身真っ白な私に対して、彼女はシースルー、つまり衣服は着ているけど透けて見える服を着ている感じだ。
あ、勿論変なところは透けてないよ。袖とか、手袋、ロングスカートの裾5cmくらいが透けてるかな。
水晶、というだけあって透明感がある感じ。
「お、アリウムフルールなら噂に聞いとるで。野良出身で障壁魔法と治癒魔法しか使えんのに、めちゃくちゃに強い魔法少女がおるってな」
「何度か全国ニュースにも流れましたもんね。後で見せてもらっても?」
「あはは、尾鰭が付いてると思うけどね。訓練場についたら、その時にでも」
県外、しかも遠方から来ている2人にすら私の名前は知られているらしい。
最初期の頃、まだ野良でやってた辺りでは野良出身なのに優秀な魔法少女として、メディアに何回か取り上げられた事があるみたいなんだよね。
当時は、というよりは今もそうなんだけどテレビはあまり見なかったし、自分のことが流れてても知らん顔をしていたから、どうにも私の中では印象が薄い。
「やっぱり!!貴女が花びらの魔法少女 アリウムフルールなんですね!!」
「私達、治癒魔法を教えて欲しくて無理を言って来たんです!!」
「障壁魔法の使い方も是非!!」
「わっ、わっ、皆!!後で後で!!」
自己紹介が終わったところで、周囲で聞き耳を立てていたのか、他の魔法少女達も話しかけて来る。
特にグイグイと来るのは治癒魔法や障壁魔法を使うのだろう、後方支援を主とする魔法少女達だ。
変に有名なせいで、彼女達に教えを請われているけどそんなに期待されてもなぁ。みんなの実力知らないし、私の方がレベル低いなんてのもあり得るかもよ。
「有名人は大変やなぁ」
「で、出来れば助けて欲しいかな」
「金取るで〜」
「そんなぁ」
囲まれてあたふたしている私を楽しそうに見ていた鼓ちゃんに助けを求めたら、お金を請求されてしまった。
別にお金には困ってないけど、言外に助ける気はないぞ。面白いから。と言われてしまったので何とか自分で切り抜けるしかない。
「ハイハイゴメンよ君達。アリウムは人混みが苦手でね、あんまり知らない人に囲まれると緊張しちゃうんだ」
その中、身体をヒョイと持ち上げられて、脚にも腕を通された私はいつもの流れで腕を伸ばして相棒の首に腕を掛ける。
「パッシィ、遅い」
「ごめんごめん」
いつも助けるのが少し遅いパッシオに文句を言ってから周りを見ると、皆が目をキラキラさせながらこちらを見ていた。
……なにごと?
「あ、アリウムさん。彼氏いるんですかっ?!」
「へっ?」
これは、厄介な事になる気がした。
1年があと4か月で終わるなんて信じない




