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奇妙な噂


「で、俺にこんな格好させといてどうしろってのさ。噂の件と全然関係ないと思うけど」


一通り騒いで、なんかもう逆に冷静になって来たところで、俺は改めて今回女装させられた理由について聞いてみる


碧ちゃんが思いついた案だが、こんなことをしてどうしろと言うのか。正直、俺の羞恥心が振り切れた上に、黒歴史が更新された以外の効果は今のところないんだが


それに、ひらひらと頼りないキュロットスカートの丈が気になってしょうがない。太ももをこんなに見せる服装は演劇部時代にも無かったから恥ずかしくてしかたないったらない


「いやぁ、真白なら女装でもすりゃ犯人の方から寄って来そうだなって」


「俺は誘蛾灯かなんかか」


そんな発想の下で実行されたなんて知りたくなかった。もうちょっとちゃんとした理由があっても良いんじゃない?ねぇ、ちょっと


そんな囮捜査みたいなことホントに効くかもわからないのに俺はこの辱めをうけていると言うのか


「なに?その噂って」


「ほら、学校のプリントにもあった」


「あぁ、あの失踪だか誘拐だかの騒ぎになった。成る程、誘拐ならこんだけ可愛いと犯人も釣れるかもしれないわね」


「そこ納得するんですか」


大人の由香さんが納得してしまった。そこは危ないからダメとか、そういうことを言うんじゃないのか。あ、違う。この人俺がこのままの恰好でいることが楽しいだけだ。口元がピクピク笑ってやがる


許さんぞ


「とりあえず、検証してみようぜ。物は試しにってな」


「え゛っ」


「良いじゃない。ついでに朱莉ちゃんのところにお見舞いに行って来たら良いわ」


「ちょっ」


「あ、良いね。朱莉ちゃん驚くよ」


「オッケー、じゃあそれで決まりだな」


「本人の意思確認は無いんですね……」


挙句の果てにこの格好で外に出る羽目になった。いや、マジか


知り合いは街中で出会ったことはほぼ無いけど、出会わないように注意しなければ。社会的に死んでしまう


「外に出るなら女の子の歩き方も練習しないとね。男の時の歩き方のままじゃ、その格好だと違和感凄いし」


「あ、その辺は任せてください。声も、あー、あー、あー。これで良いですか?」


元演劇部の女役をやっていたのは伊達ではない。最近ではアリウムの姿でも活動しているから、女性的な動作や声の出し方は何の問題も無い


この辺りは演劇をやってて良かったな、って思える事の一つだ。自分と言う個の中に、いくつもの違う自分を引き出しとして持っているから、直ぐに切り替えられる

声の方は久々だけど、この感じだと問題ないかな


「わっ、凄い。真白さんが真白ちゃんになっちゃいました」


「いや、それは普通にスゲェな。そんな特技あったのかよ」


「高校時代に演劇部をやってたのよ。これでも女役でバリバリヒロインを演じてたから、その辺は任せてもらって良いわ」


フフンとパッドが三枚入った胸を張って見せると、へぇ~と感心したように二人が賛辞を送ってくれる

女装させられたのは個人的に大惨事だが、こう言う賛辞なら大歓迎だ


褒められて嬉しくない人間などいない。俺は褒めに関しては素直に受け止めると決めているのだ


「ホント、びっくりね。綺麗な顔だとは思ってたけど、もしかしてモデルか役者が本職かしら」


「残念ながら昔取った杵柄なだけです。今は前職の退職金で呑気に無職してます」


「専属に欲しいくらいだわ。男女両方のモデルが出来るなら、正直大歓迎だけど」


「今のところはお断りしておきます」


残念、と肩を竦める由香さんには申し訳ないが、今のところは魔法少女活動に忙しいし、お金にも特に困っていない


半分は冗談だろうけど、今回は丁重にお断りさせていただく


「それより、一旦帰っても良いですか?シャワーも浴びてないし、お腹も空いてきちゃって」


「そう言えばまだだったわね。良いわよ、ウチのお風呂場を使ってちょうだい。朝食もその間に準備しておくから」


「……じゃあ、お言葉に甘えて」


朱莉ちゃんのお見舞いに行くにも、まだ時間は朝の7時半を過ぎたところ。朝の賑わいの真っただ中だ。そんな朝早くに騒いでしまって近隣の方には大変申し訳なく思うが、アイデンティティーの危機だったので許して欲しい

ま、とっくの昔に崩壊してるんだけどさ


後パッシオ、スマンが帰れそうにないので朝食は自分でどうにかしてほしい。俺も今思い出した、スマン


そんな思考をしながら、俺は本田家でシャワーと朝食を頂いたのだった


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