魔法少女交流会
そして来たる交流会当日。協会の中でもひと際大きな会議室の中では光さん達が中心になって、大人たちが質疑応答を繰り返していた。
「では、この組織の主目的は国際軍を作るのではなく、あくまで魔法少女を国の戦力から外させることが目的である、と」
「えぇ。魔法少女協会を立ち上げたことの主目的は魔法少女を戦争利用させない事。いくら力を持っているとは言え、彼女達は子供です。今は各国、各街が自分たちの住む地域を守る為に協力体制を敷いているという関係ですが、中には本当に軍事力として扱っている地域もあります」
「我々はそう言った非人道的行為から可能な限り彼女達を引き離すために、更にはその可能性から少しでも距離を置かせるために活動を続けていきたい」
ありがとうございます。と質問をした人がぺこりと頭を下げると、ペンをサラサラと走らせてから席に座る。
会議室を使っているけど、態勢的には記者会見が近いかな。
新しい事を始めた光さん達に、様々な質問を大人たちがぶつけて、それに明朗に答えて行く。
ヤジが飛ぶようなことも無く、粛々と進む様子が記者会見とは違うかな。
「魔法少女に質問なんやけど」
「はい、どうぞ」
そんな中で魔法少女の監督者や引率者ではなく、一人の魔法少女が手を上げて質問をしたいらしい。
他の子達が船を漕ぎ始めているのを大人たちに注意されているのもちらほらうかがえる中で、ちゃんと話を聞いている貴重で真面目な人だと思われる。
「どもども。で、質問なんやけど、ぶっちゃけ報酬とか親族の警備ってどうなん?ウチらとしてはそこのクオリティが下がるんやら、旨味無いねんけど」
「あ、それにはボクが応えるっすね」
関西弁を喋る魔法少女の質問は至極ごもっともな意見だ。そこのクオリティが下げられれば、魔法少女が魔法少女を続ける旨味は半減だ。
危険な仕事でも、リターンが大きいから続けるのは大人も子供も変わらないのだから。
質問に答えるのは私達の中でも特に庶民代表のクルボレレ。最近魔法少女になった彼女なら、この差もより鮮明に覚えているだろう。
「まず自己紹介を、疾駆の魔法少女 クルボレレって言うっす。皆さんよろしくお願いします。で、肝心の報酬とか家族の警護に関してっすけど、ボクは特に不満を感じたことは無いっす。お給料も警護も魔法庁にいた頃と差は無いというか、お給料に関しては上がってるっすね。あと、設備に関しては魔法庁にいた頃よりも数段上っすね。トレーニング設備からご飯から全部クオリティめっちゃ高いっす」
ハキハキと答えたクルボレレちゃんには脱帽だ。正直、通帳の明細をほぼ確認してないなんて言えない。いや、あんまりお金に興味ないし、頼めば出て来るし、ほら、ね?
こんなお嬢様が5人もいるので、そういう質問には答えにくいのが私達の欠点が気がして来た。生活には困ってないからね。
「それは楽しみやなぁ。後でご飯食べさせてくれるんやろ?なぁ?」
「なぁ、やあらへん。勝手に質問しとらんでおとなしゅうしぃ」
「いたっ?!ぶつことないやろ~。あ、すまんすまん。質問は以上やで。後でお喋りしようやクルちゃん」
「は、はぁ?」
関西弁の魔法少女は終始ニコニコしていて、ご飯が美味しいと聞いてじゅるりと口を拭うくらいだ。食いしん坊らしい。
マイペースな彼女は監督者と思われる女性にお尻を叩かれて、渋々と席に座っていた。
あんまりにもマイペースなものだから、クルボレレも困惑気味だ。
魔法少女、どこの街に行ってもキャラが濃いのは本当なんだなと実感した瞬間でもある。
会議というか、質問会というか、しばらくはこんな感じで進行していった。既に後ろではノワールとルビーが完全に熟睡。アメティアと変身した委員長、改めて氷華の魔法少女 グレースアが船を漕いでいる。
主催側が寝るんじゃないよ。後で番長に怒られるからね。




