魔法少女交流会
「で?詳細は?」
「あぁ、ごめんごめん。私の話は後にしないとね」
碧ちゃんに諭されて、難しい話を始めてしまった大人たちが佇まいをなおす。
雛森さんの魔法少女時代の話は、それはそれで非常に興味があるけどまた後でいつでも聞ける話だ。
またの機会に聞くことにしよう。
「で、魔法少女交流会についてだが。特に難しい事を要求するつもりはない。交流会の名の通り、あまり会う機会の無い他の街の魔法少女達と交流を深めて、お互いにいい刺激があればそれで十分成功と言えるだろう」
番長の言う通り、他の街の魔法少女達と交流が出来る、って言うのは貴重な機会だ。
基本的に、この時代を生きる人の殆どが生まれた街から一生出ることなく生涯を終える。
街の外に魔獣がウロウロしている以上は一部の人達しか街から街への移動なんてしないからね。それは街を守る魔法少女ともなればより顕著になる。
私達は街から離れるわけにはどうしてもいかないからね。そういう意味でもよく交流会なんて開けたものだ。
「そうそう、模擬戦も許可するわ。でも、ケンカは程々にね」
「止めないんですね……。まぁ、魔法少女は基本的にクセの強い子が多いので、ケンカも良く起こるのは事実としてあります。多方面の敵意を煽るような発言は皆さんはしないと信じていますが、十二分に注意をしてください」
大人らしい、というかまぁ当たり前の注意だ。ケンカは程々にとは言うけどむしろして良いのかとも思うけれどね。
雛森さんの言う通り、というか私達を見てれば魔法少女は基本的にキャラが濃いというのは頷くしかない。
「流石にあっちこっちに喧嘩を売る気は無いわね」
「朱莉、お前が一番喧嘩っ早いんだからな?」
「朱莉ちゃん、大人しくしててね」
「口が悪いからな。うっかり強い口調で喋って初対面の人間の機嫌を損ねたりするなよ」
「揃いも揃って喧嘩売ってるのかしら?」
そう言うところがダメだって言ってるんだよ。全く、すーぐケンカ腰になるんだから朱莉は。
皆から一斉に注意された朱莉がぷんぷん怒っているのを呆れながら見ていると、ほっぺをむにっとパッシオに突かれて君は無意識に人を煽ったりするから気を付けるように、と注意をされた。
そんなことは無いと思う。私は事実しか言わないもん。
「それがダメなの」
「ひゃなをふまむな」
鼻をつままれたので指を甘噛みして抗議する。何をするのだ何を。
私とパッシオがあーだこーだとわちゃわちゃしていると。
「はいそこー、イチャイチャしてないで話を聞きなさーい」
「してないでーす!!」
光さんに怒られた。話を聞いてなかったのは私達なので大人しくする。
イチャイチャってところは否定しておくけどね。別にいちゃついてたわけではないし。
なんか不服だ。私がパッシオに良いようにされてるような気がして物凄く不服だ。なんか気にくわない。
言ったらパッシオが拗ねそうだから言わないけど。
「聞いてない人がいたからもう一度言うけど、来るのが分かっているのは札幌、仙台、東京、名古屋、島根、京都、北九州、沖縄の子達が既に決まってるわ。他にもアメリカ、フランスからも一人ずつ来ることが決まっています。真白ちゃん、通訳を頼むことも多いと思うからよろしくね」
「はーい」
これはちゃんと聞いてなきゃいけなかったやつだった。私に役割が割り振られているならしっかりしないと。
英語はともかく、フランス語は久々だ。少し勉強しなおしておこうかな。
「あと2週間後に交流会の開催を予定しています。他細かな事については後日伝えますから、メールのチェックを怠らないようにお願いします」
「交流会自体は変身をした状態での参加だ。第三者の目があるからな。後日、魔法少女達だけでのパーティーの開催も考えている。楽しみにしていてくれ」
パーティーと聞いて皆が浮足立つ。美味しい料理は誰だって楽しみなのですよ。




