魔法少女交流会
私の話は後にして、共通の重要事項であって今回集まった目的の魔法少女交流会とやらについてもう少し詳しく説明してもらうとしよう。
「さて、皆さん改めてお久しぶりです。以前は魔法庁に勤めていましたが、魔法庁と協会の調整なども終わりまして、私もこの魔法少女協会へと身を置く事が決まりました」
「あまりみんなには伝わって無いけど、やっぱり裏では色々いざこざがあってね。それを各所に根回しをして、上手く取り纏めてくれてのは雛森さんのおかげなのよ。どうしても、私じゃあ魔法庁関連に伝手が無いから」
じゃあ、雛森さんば魔法少女協会設立の影の立役者というわけだ。
かなりの時間離れていたのはそのためか。でも、おかげで私達は以前とほぼ変わりなく、それどころか仕事の環境自体は劇的な改善がある。
大人のいざこざに巻き込まれる心配がなく、魔法少女としての仕事に集中出来るのはとてもありがたい事だから。
私達から自然の湧き起こった拍手に雛森さんは照れて笑っている。
本当に凄いことだ。私には到底出来ないもの。
私は、全部自分でやろうとしちゃうから。他人の能力を信じられないとかじゃなくて、なんて言うんだろ。
そう、自分でやらなきゃいけないって思っちゃうんだよね。そして、稀にそれを人に強要しちゃう事もあるから、そういう人と一緒に、がホント下手くそ。
魔法少女として活動を続けているうちに、少しずつ改善出来てるような気はするけど、それでも他人を頼る事を忘れることは多いなぁ。
「さて、雛森さんのこれからの立場についてだが、主に情報収集や分析、調査に関する分野で腕を奮ってもらう事になっている。具体例をあげるのなら、ある魔獣に対して、弱点は何処か、習性はあるのか、そういったより具体性の高い情報の提示、収集、分析を行なってもらう」
「これによって、より的確に魔獣などの脅威に対して迅速な対応が可能になると私達は踏んでいるわ。【ノーブル】についての調査もそう。元々、雛森さんの魔法少女名は『千里眼の魔法少女 ヴェルター』。皆も、1度は聞いた事があるでしょ?」
『千里眼の魔法少女 ヴェルター』と聞いて全員が驚きでなんらかのアクションを起こす。
中には驚いて立ち上がり、パイプ椅子を後ろに蹴飛ばしてしまうくらいだ。
私だってびっくりだ。
何せ、その名前は世界で知られている。
世界を救った10人の魔法少女。それを陰で支えたと言われている11人目とまで評価されている。
それが『千里眼の魔法少女 ヴェルター』。調査と分析に長け、戦闘能力こそC級クラスとまで言われているが代わりに情報を集めるための魔法とそれを100%引き出す彼女自身の能力は、かの10人が真のリーダーは彼女だと言ったと言う逸話まである。
S級魔獣、『白面金毛の九尾』との戦いで命と引き換えに封印に成功した10人の魔法少女達と同じように、彼女もまたその後の消息が分からず、時折不意に成果を上げた話が出て来るだけ。
そんな偉大な魔法少女。世界を救った1人が、まさか雛森さんだったなんて。
そりゃあS級魔法少女の藤子さんや、それに近い実力を持つ番長が先輩、と呼んで特別丁寧に対応していたのも分かる。
というか、そんな人がなんで魔法庁本部じゃなくて、南東北支部なんてところにいるんだ。
功績を考えればもっともっと上のハズなのに。
「あんまり持ち上げないで下さい。私は、皆の後ろで自分なりに分かった事を伝えていただけ。作戦の指示とか、そういうのは全部あの10人でやってたんです。実際、私は見ているだけで、皆を助けられなかったですから」
ただ、雛森さん的にはその評価は正しくないらしい。
むしろ本人からは悲壮感も感じられる。自身の能力は自負しているが、望んだ結果を出せなかった。
多分、そう言う事なんじゃないかな。
「それでもよ。貴女が作戦指示や全体の指揮者として向いていないのだとしても、彼女たちは貴女を頼った。貴女が持つ能力が、戦況を打破するだけの力があると信じていた。その力をもう一度貸して頂戴。今度は、貴女達だけに戦わせない」
「当時のような、魔法少女に頼り切りの世界を終わらせるための協会です。戦いの作戦指示は私に任せて下さいよ。適材適所、です」
それでも、私達は雛森さんの、千里眼の魔法少女の力を求めた。
今と昔は違う。色んな思いと願いが交錯して、協会という組織が出来上がっていたのだと、私達は改めて認識していた。




