2年生になりまして
遊んでるのも程々に私達はこの後予定があるので移動を始めないといけない。迎えの車の中で墨亜が首を長くして待っているだろうし、協会での話を聞くにも皆を待たせるのはあまり良くないからね。
「ごめん、悪いんだけど私達用事があって」
「言ってたね~」
こうして少し盛り上がって集まる中、私達だけが抜けるのは申し訳ないけど後で埋め合わせをするとしよう。
理由については私達が諸星ってだけで勝手に察してくれるのは楽でありがたい。まぁ、何かと放課後は忙しい生徒も多いのが郡女の特徴の一つなので、わざわざ聞かないしそういうマナーが浸透しているという都合もある。
「あ~ん、お姉さまも行ってしまうんですか?」
「だからそのお姉さまっての止めろって。しゃあねぇだろ、諸星ってだけでアレコレ呼ばれるんだから」
碧ちゃんにまたしがみついているドリルちゃんを引き剥がしながら、碧ちゃんはそそくさと私達の後ろに回る。
珍しく捌き切れない相手というか、グイグイ来るドリルちゃんにどう対応するべきか決めあぐねているっぽい碧ちゃん。
嫌がっている訳では無いので、上手く噛み合えばいい友達になりそうな気もする。
ドリルちゃんも深追いはせずに用事があるならと、既にお別れの体勢だ。
解散の雰囲気が出たところで、じゃあ明日ねと手を振って教室を出た私達は少し急ぎ足で迎えの車に向かう。
「中々騒がしい子だったな」
「面白い子だったねぇ。アオちゃんいい友達見つけたじゃん」
「友達じゃねぇって」
恥ずかしそうに唇を尖らせる碧ちゃんが可愛い。思っているよりも馴染めてそうで良かった。学校に関してはあのドリルちゃんに任せておくのが良いかも知れない。
上級生の私達が下手に干渉するのもね。波風立つだろうし。
「でもまんざらでもない感じだよね?」
「そりゃ、まぁ。悪いやつじゃねぇのは分かるからな。扱いには困るけど」
私達の中にはいないタイプで今まで関わった事もないタイプ、というよりはシンプルにドリルちゃんが変わり者なんだと思うけど、碧ちゃんは碧ちゃんなりに受け止め方を模索してるみたいだ。
それは多分ドリルちゃんも同じなので、仲良くなれそうでなにより。
「まだ2日だが、クラスの雰囲気はどうだ?普通の学校とはだいぶ違うからやりにくいと思うが」
「なんつーか、基本的にみんな動作が遅いっつーか。マイペースなのが多いな。全体的にふわふわしてる」
廊下を歩きながら、クラスの様子を聞いてみると成る程という回答が返ってくる。
私はそこまで気にする余裕が無かったけど、公立中学から郡女に来た碧ちゃんからすると、お嬢様が多いここの生徒はマイペースな子が多く見えるらしい。
勿論きびきび動く千草みたいなのもいるけど、あんまり走ったりはしゃいだりしてる子は少ないかもね。
「まだ2日だしね〜。トラブルとか起きてない?」
「そういうのはねーな。一応、諸星関係者だってのは伝えろって言われてたからそれだけは徹底してみてる。近付いて来る奴もいれば、距離取る奴もいたな」
「その辺は徹底した方が良い。下手に隠しても突っかかるバカがいる時がある。流石に高等部からは私は見てないが、初等部高学年と中等部では度々あってな」
相手をしないようにするのが大変なんだ、と千草は肩を竦める。
諸星ってだけですり寄って来る人も中にはいるし、逆に離れる人もいる。
気にしない人もいるし、からかって来る人もいる。
千差万別とはよく言うけど、からかいやイジメの材料として扱って来る相手は確かに何をするにもめんどくさい。
それは私にも以前経験がある。まぁ、あの時は私が一匹狼を気取ってたことにも問題があったんだけどね。
だからといってイジメて良いわけじゃないし、人間関係は素敵だけれど面倒も多い。
「何かあったら言うんだよ。雫先生も保健医辞めちゃったし」
「流石に学校でお袋に会いたくはなかったからホッとしてる」
学校に親がいたら気まずいのはわかる。雫さんもやりにくいだろうし、翔也さんが雫さんには家にいて欲しいって言ってたから、大丈夫なのは分かってたけどってね。
ま、気負わずやって欲しいと思う。元庶民の私と千草もちゃんと上手くやれてるしね。




