2年生になりまして
そして放課後、クラスメイト達に囲まれて根掘り葉掘り聞かれてげっそりとした千草とケラケラと笑う委員長、苦笑いの美海ちゃんに我関せずの優妃ちゃん、そして千草に抱きかかえられて後頭部に顔を突っ込まれている私という非常にカオスな構図が出来上がっている。
「なにこれ」
「千草、恋バナとかそういうの苦手だからね~」
だからと言って人の頭に顔を埋めないで欲しい。猫吸いじゃないんだから。
抵抗を試みるけど全く腕が動かない。痛くはないけど動けないのはそこそこの苦痛なんだけど。
「千草は千草で妹らにべったりだよなぁ」
「ダメお姉ちゃんの典型例かな?」
「やはり姉は私であるべきだね」
「「「それはない」」」
なんでや!!私が姉でもええやろ!!
なんてアホも程々に千草にはさっさと動いてもらわないと困る。この後一年生の教室で私達を待ってくれているはずの碧ちゃんを迎えに行かなきゃならないんだから。
墨亜も待ってるだろうし、何よりこの後協会に行くことになっている。
なんでも話があるとかで学校が終わり次第集まるように言われてるんだから、あまり寄り道もしていられないんだけど。
「お~ね~え~さ~ま~」
「だーかーらー!!ウチはお前の姉じゃねぇってーの!!離れろ!!」
教室でこのダメ姉をどうしてくれようかと思っていると、教室の外が騒がしくなっている。
二人分の声だ。そのうち一つは聞き覚えのある碧ちゃんの声だ。
なんだか嫌がっているように思える。どうしたのかと視線を向けると、ちょうどその騒がしい二人が教室にやって来ているようだった。
「そんなこと冷たいことを言わないでくださいお姉さま!!私、お姉さまに触れられなければ死んでしまいますわ!!」
「キモイ!!」
「……また随分キャラが濃いのが来たねぇ」
委員長の呟きを耳に入れつつ、教室の入口にいる二人に視線を向ける。一人は碧ちゃんだ。郡女の制服に身を包んだ姿を見たのは今日で二回目。
いつもはぼさぼさの髪は多分新しく着いたメイドさんか雫さんにやってもらったのかな。櫛を通され、本来あるべき姿だったショートカットの女の子らしい髪型になっている。
で、問題の一番騒がしい子。茶髪で髪の毛をくるりと丸めている、なんだっけ?ドリルヘアー?
なんか違うな。まぁいいや、とりあえずドリルちゃんと呼ぶことにしよう。
その子が碧ちゃんの腰辺りにしがみついて離さないようだ。碧ちゃんの事をお姉さまと呼んでるみたいだけど、学年を示すリボンタイの色は同じ。二人は同学年同年齢だということだ。
「見てないで助けてくれ!!」
「いや、だって面白いし」
「めんどくさそうだし」
「見捨てんな!!あと千草はせめて一回こっち見ろ!!」
しょうがないなぁ。と言っても、私は千草が離してくれないので何も出来ない。千草~、いい加減再起動して欲しいんですけど。
主張ついでに肘打ちをして離すように促すと、うめき声と一緒にようやく解放された。あー、疲れた。
「知ってる人~?」
「あっちの色黒な子だけね。もう一人のドリ、じゃなかった茶髪の子は知らないかな」
「コイツ絶対ドリルって言おうとしたぞ」
まぁまぁ、名前知らないから特徴でしか言えないじゃん?で、碧ちゃんは迎えに来ない私達に痺れを切らしたんだとして、もう一人の子はどうしたのか。
とにかく、これから移動もしなきゃだし離れてもらわないと。そう思って、二人に近付いてみる。悪い人では無いとおもうしね。
「ごめんね、これから碧ちゃんと私達用事があるから――」
「誰ですかこのちんちくりん。初等部の校舎はあちらです。私のお姉さまに対して馴れ馴れしくしないでください」
「バッカお前っ?!」
碧ちゃんに見せていた表情とは全く違う見下した顔と口調。何よりその内容に、その場の空気が凍る。
碧ちゃんは顔が真っ青だ。大丈夫だよ碧ちゃん、貴女にはなんにもしないから。
「――ヒッ?!」
遅れるようにして、碧ちゃんに抱き着いている子の表情も真っ青になる。
どうしたの?私、まだなーんにもしてないよ?




