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奇妙な噂

ランニングが終わり、案内されたのは朱莉ちゃん、碧ちゃん、紫ちゃんが住んでいると言う団地の一部屋だ。本田、と表札がかかっているから、どうやら紫ちゃんの自宅らしい。それ以前に、碧ちゃんとは一旦別れて案内されているんだから、当たり前だけど


「ただいま~」


「お帰りなさい。ご飯の前にシャワーを浴びるように」


間延びした、リラックスした挨拶を紫ちゃんがすると、奥から母親と思われる女性の声が聞こえて来る。やり取りと声から察するに母親だろう


「はーい。後、お客さん来てるから」


「えっ?」


いつも通りと思われるやり取りを横で聞いてると紫ちゃんはタタタッと浴室があると思われる方へ足早に消えて行ってしまう


それに取り残された俺と、全く予想してなかった事を言われた紫ちゃんのお母さんが驚く声が聞こえて来るものの、この状況の原因である紫ちゃんは既にいない


「……朝早くにすみません」


「あー、とりあえずどうぞ」


バタバタとスリッパで駆け足する音が聞こえたと思ったら、眼鏡が印象的な女性が現れて、お互い数秒固まり、何とも言えない空気の中、紫ちゃんの住む部屋の中へと本格的に踏み入れたのだった





「娘たちが無茶を言ったようで申し訳ないです」


「あぁ、いえいえ、こちらこそこんな朝早くにお邪魔してしまって申し訳ないです」


とりあえず自己紹介。リビングのテーブルの向かい側に座っているシルバーフレームの似合う女性が紫ちゃんのお母さんの本田(ホンダ) 由香(ユカ)さん


出来る女性、という雰囲気がするどちらかと言うとクールな印象。紫ちゃんが眼鏡を掛けたらとてもそっくりだと思う


「真白さん、で良いですか?あの、朝一緒に紫達とランニングしてくれていると聞いている」


「あ、その小野 真白です。その節は娘さんにお世話になっています」


「いえ、ただ、その、想像していた方と全然違ったので、ちょっとビックリしてて。……失礼ですけど、本当に26歳なんですよね?正直、娘と同い年くらいにしか見えなくて……」


「困ったことにこの見た目でマジで26なんです……」


うん、そうなるよな。すれ違うウォーキング中のおじさんおばさんからも、どう考えても同い年に見られてるのは気付いている


見た目年齢だけはバッチリ他の三人と同じに見えるからな、そういう意味でお巡りさんのお世話になることはない、やったぜチクショウ!!(ヤケクソ


「私、デザイナーしてるんで年齢と見た目が釣り合わない人はモデルさんで沢山見て来たんですけど、真白さんレベルの人は初めて見ました」


「しょ、初対面から結構グサグサ来ますね……!!」


「え、あっ、すみません。紫の友達って思ったらつい……!!」


「辛過ぎる」


結構なレベルで人の気にしてる部分を言葉のナイフでザクザク刺してくる由香さんにもう既に俺のライフは0である


抗議の意味も込めて由香さんに視線を向けると


「……可愛い」


「なんか言いましたか?」


「いえ何も」


この母親娘よりキャラ濃いぞ。娘より濃いキャラしてるんじゃないよ。いやマジで

これだからクリエイター気質のあるデザイナー関係者は苦手なんだ!!(超偏見


高校時代に所属していた演劇部での衣装担当も、無駄に濃いキャラをしていた。アイツらめ、俺にどれだけ可愛い衣装を着せるかで盛り上がっていやがったからな


「……二人とも、何してるの?」


恨めしそうに睨む俺と、おほほほと笑って誤魔化す由香さんの勝負はシャワーから上がって来た紫ちゃんがリビングにやって来るまで続いたのだった



「それで、碧ちゃんは紫ちゃんに何を提案したんだい?」


大人のしょうもないにらみ合いは程々に、俺達三人は改めて椅子に掛け直して、この場にいない碧ちゃんが提案していった何かを聞く


あの碧ちゃんの表情から察するに、悪戯めいた何かだとは思うけど、一体何を思いついたのやら


「いきなり言っちゃうのは面白くないし、お母さんの協力が必要だから」


「私の?」


ニコニコ笑う紫ちゃんはそう言って由香さんに協力を仰ぐと言い出す。一体何をすると言うのか、由香さんが手伝わなきゃいけないような事となると、仕事にしているデザイン関係か?


何をデザインしているかにもよるけど、一体何をするつもりなのやら


「うん、お母さんのデザインした服で、真白さんに似合う服を見繕って欲しいなって!!」


その言葉を聞いた瞬間、俺は脱兎のごとく逃げ出した


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