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魔法少女アリウムフルール!! 魔法少女を守る魔法少女の話 + 魔法少女を守る妖精の話  作者: 伊崎詩音
英雄

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抗い

風切り音が耳をつんざく。轟々となるそれを意に介さないまま、私は今自分が出来る最速のスピードで飛ぶために2度、3度と翼をはためかせた。


要との付き合いは私の交友関係の中で一番長い。


最初に会ったのは6年前の10歳の頃、諸星家に引き取られてこの街に引っ越して来た私が郡女の初等部に転校して来た事から、というのは真白達にも何度か話をしたことだ。


その度に、要は「最初は私が千草をいじめてたんだよね」と自嘲気味に笑って言っていたが、私は微妙に違うのではないかと最近は思い始めている。


主にいじめ、という点についてだ。確かに郡女特有の独特な雰囲気や、自信の境遇について上手く馴染めていなかった当時の私はとにかく周囲への当たりが強く、浮いていた。


いじめ、ないしグループからハブられるのはある種当然の措置だったというか、今まで構築されていたクラス内、学校内のグループに無駄に緊張を奔らせた私が村八分になるのは自業自得な面も大きかったと思う。


そんな中でも根気強く私に構っていたのが要だ。美海や優妃も一緒にいた物の、率先して私にちょっかいを出していたのは要だった。


今の要はそれを良くない事だったと反省しているようだが、結果として私は致命的なまでに周囲から離れることが無くなり、中学に上がるころには要達ともすっかり打ち解け、他のクラスメイト達との不和も無くなっていた。


要が引き留めてくれていたのだ。やり方は確かに良くなかったかも知れないが、当時の強情な私が真っ当なやり方で反応を示すとは到底思えないし、まだまだコミュニケーション能力の低い小学生の頃だ。


相手の気を引くためには相手が多少嫌がることでしか興味を引く方法を思いつかなかったのだろうと思う。

少し違うが、よく聞くのは小学生男子が気になる女子に意地悪をしてしまうというアレだ。


自分の事に注目して欲しくてちょっかいを出すのは良いけれど、気の引き方が分からない結果、意地悪なことをして自分の存在をアピールするというやり方は勿論良くないし、イメージとしては最悪だろう。


ただ、まぁ私達は偶然そこのところを上手く収めることが出来た。今では親友と呼べるくらいに仲が良い。


真白や墨亜との接し方についても、面倒見の良い要に何度相談したことか。根気強く、ぶっきらぼうになり過ぎず、でも姉として下手に出過ぎると良くないしと色々なことを一緒に考えてくれた。


何度も何度も私の事を助けてくれたのは要だ。要がいなかったら、私は今頃諸星の家すら飛び出していたかも知れない。

そのくらい、要の存在には救われている。ぎこちなかった墨亜との関係も、警戒心の塊だった真白との距離を縮められたのも、要の存在が大きい。


それだと言うのに、私は……っ!!


腰の鞘に納めている刀型の魔法具『翠嵐(スイラン)』の柄を握りしめる。


私はいつも一歩遅い。両親を助けられなかった時も、魔力切れを起こした真白に最初に会った時も、要が最初に拐われた時もだ。他にも細々としたのが沢山ある。


いつも一歩遅くて間に合わない。目の前で大事な物が傷付けられたり失ったりしてばかり。


「間に合え……っ」


要を、親友を失う危機に二度も晒す訳にはいかないんだ。そんなのは絶対に嫌だ。

要は私の事をヒーローなんて呼んでいたけど、本当にヒーローなら間に合うはずだ。


間に合え、間に合えっ、間に合え!!


凄まじいスピードで流れて行く景色を置いて行き、私は翼をはためかせる。

何分も経ってないだろう。精々5分かその辺り、ようやく爆発のあった場所に辿り着いた私は。


「ーー私の親友に、触るなぁっ!!!!」


傷だらけで倒れる魔法少女に変身している要と、彼女に手を伸ばすショルシエの間を目掛けて、渾身の風の刃を放った。

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