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再戦

「おらあぁっ!!」


ウチの振る、戦斧『ヴォルティチェ』に水の魔法を纏わせて辺りの地面ごと飲み込む。


相手をしているのは狼型の魔獣だ。このタイプの特徴としては群れるということ、統率力があって魔獣にしては珍しく連携をして狩りをするって点が特徴だ。


一体一体の強さじゃなくて数の強み、そして本能で暴れまわる魔獣にしては理性的に戦うことから特にリーダー格の個体は魔法が使えることも多い魔獣でもある。


オマケの豆知識として更に追加するなら、知能が高く群れ、リーダーに従うという特徴から魔法少女の使い魔になっていることが一番多い魔獣だ。

ようは魔法少女の方が強くて従えば衣食住を確保してくれるという事を理解した一部の奴らがそうやって生きてるって訳だ。


「キャンッ?!」


とは言っても、今回のこいつらは毛頭そんな雰囲気じゃない。まるでリーダーの不在でブレーキの無くなった不良グループっつーか。

狼型にしてはやけに統率力が低い。体格は一匹一匹下手な大型犬よりも立派で犬歯も爪も鋭く、魔獣らしい攻撃性は備えているけど、それだけだ。


代わりに数だけはやたらといる。尋常じゃない数だ。まるで複数の群れを無理矢理一つにまとめたみてぇだ。

木々の間を埋め尽くすほどいるくせに、積極的に襲い掛かって来る奴は少ない。今もウチの死角から街の中にコソコソと侵入しようとした奴がノワールにぶち抜かれてる。


「ノワール、どうだ?抜けはねぇか?」


【大丈夫。ドローンも使ってるから侵入してもすぐに見つけられる】


「はははっ、魔法と最新の科学技術を併用してる魔法少女なんてお前くらいだろうな。頼りにしてるぜ、狙撃手」


【任せて】


ノワールの成長ぶりにゃ驚くぜ。『協会』所属になってからノワールは本格的に魔法と科学の併用を始めている。


具体的に言えば、肝心な狙撃を魔法が、目を科学が、それぞれ担っている。狙撃って言うのは撃つ瞬間になると集中する手前、視野が極端に狭くなるらしい。

その間に他の敵に近付かれたり、守るべきラインを突破されたら元も子もない。


そんな事態を避けるために用意されたのが、ノワール用に用意された超高性能小型ドローン。

今は闇夜に紛れてよく見えないけど、的を小さくそれでいて高機動で静音、高感度カメラとサーモセンサーが内蔵されているらしく、生き物である魔獣が仮にウチらの目を掻い潜ってもこのドローンが見つけるって訳だ。


これらのデータはノワールが持っているタブレット端末に表示されて、ノワールや番長、光さんが管理している。

んで、設定された防衛ラインを越えてきたりすると、ブザーとノワールが耳に付けているウェアラブル端末に音声が届けられるって仕組みだ。


これがまだ発展途上のシステムだっつーんだから恐れ入る。一体どんだけの研究費用をぶち込んでるんだか、バックについてるのが一体どんな人らなのかを嫌でも感じさせられるぜ。


それをあっさり使いこなすノワールの柔軟性にもビビるけどな。ウチにはとてもじゃねぇけど無理そうだ。

あのシステムに興味を示してたのは主に後衛組だな。


アメティアに最適化されたシステムがまだ出来てねぇからアメティアはそれの支給待ち。アリウムは自前の感覚の方が優秀みたいで、ガッツリ運用じゃなくて自前の天然レーダーの補助的役割を期待出来れば良いって感じみてぇだ。


まぁ、アリウムにゃパッシオもいるしな。あまり道具に頼るよかそっちの方が身軽で良いんだろうよ。


「おーおー、派手にやってんな」


そんな新装備を手にしているノワールとは別、広範囲をカバーするためにそれぞれ距離を取って殲滅戦を始めたウチらは、ウチを中心に左にルビー、右にアメティアを配置してそれぞれ腰の引けた狼どもを吹き飛ばしていた。


アメティアはまるでロボットアニメのレーザービームだな。すげぇ量の魔法が森ごと薙ぎ払ってやがる。手間だからって雑過ぎやしねぇか。


対してルビーは意外や意外、スマートに戦ってる。リオとのコンビは更に磨きがかかってそれこそ狩りってやり方で右往左往する狼どもを街に近付けずに密集したところを炎で焼き払っている。


省エネ、っつーか力加減が前よりも細かく出来るようになったって感じだな。アイツ、ガサツに見えて案外器用だしな。

アメティアは細かすぎて振り切れると雑になる。ああいう風にな。


再度視線を左に向けると、平均的な魔法少女よりもかなり多い魔力量だからこそ出来る大量の魔法が雑に狼どもを吹き飛ばしている。

アメティアなりの最適解だ。ま、確かに一匹一匹に狙いを済ませる必要もないくらいいるしな。


魔法を使えばとりあえず当たるレベルのそれだ。数さえいなきゃ、とっくの昔にあっちの加勢に向かってる。

ホント、何体いるのかも馬鹿らしいほどにいるんだ。


「……わっかんねぇな。こんな事してなんになるんだ?」


『ヴォルティチェ』を振るい、また狼どもを吹き飛ばす。水の魔法に飲み込んで押し流すだけであれよあれよって間に狼は倒されるけど、その上にもまたやって来た狼たちがやって来る。


何がしてぇんだ。時間稼ぎ?それをして何になる?あの魔獣であっちにいるアリウムやフェイツェイ達を倒そうってか?

そりゃ考えの甘い話だ。こっちだって当然力を蓄えて来た。3、4か月前とはレベルが違うのは私達自信がよく分かってる。


ウチらを分断してでもしたい稼ぎたい時間があるっつーのか?なんだか、やたらと嫌な予感がするぜ。確証が全く持てねぇってのがまたムズムズするぜ。


「一応、番長に街の監視を強めてもらうとすっか」


杞憂で済むならそれでいい。なんもなけりゃいいんだけどな。




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― 新着の感想 ―
[一言] 委員長がまた連れ去られたら悔やまれるもんね
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