路地裏の攻防
人間の魔力じゃなくて、妖精の魔力。とはどういう事だろうか
パッシオ以外の妖精に未だ出会ったことは無いが、パッシオがそうであるように妖精は小動物型の姿をしているんじゃないのか?
少なくとも、俺が対峙した三人は人型だ。身長は170㎝はあっただろう、全身をローブで包んでいたのでそれ以外の人相は殆ど分からないが、それでも人間の男だったように思う
「妖精ってのはお前みたいに小動物型じゃないのか?」
「んー、必ず僕みたいな姿って訳じゃない。妖精って言うのは魂を核に魔力の肉体を得た生物でね。一般的にはこちらの世界で言う動物の姿に近い形で肉体を形成しているんだけど、その気になれば人型になることも出来ると思う」
「ってことは、アイツらは人型の妖精?」
俺の疑問にも、パッシオはうーんと首を捻る。どうやら何か引っかかる部分があるらしい。魔力と妖精の事に関してはコイツの知識に頼るしかないから、答えを待つしかない
「それはちょっと考えづらいんだよね。僕らからすると、人間界の魔力は薄いんだ。魔力で肉体を形成している僕らは、生きているだけで魔力を消耗していくんだけど、妖精界の姿のままでいるには人間界で得られる魔力が少なすぎて、大人の人間程の大きさはとてもじゃないけど維持できないよ」
「簡単に言うと、人間の姿になるには魔力が足りない?」
「そういう事。仮に僕が真白くらいの大きさに変わったら、僕は魔力不足で一歩も動けなくなるはずだよ」
「そりゃキツイな」
パッシオの言葉をまとめると、妖精って言うのは姿形をある程度は変えられるが、その大きさによって、燃費が変わる、という事だと思う
人間で言うところの空腹感に近いんだと思う。体格が大きければ、それを維持する為には寝ているだけだとしても、それなりの栄養を摂らなければ、人間だってあっという間に動けなくなってしまう
「パッシオも、今は本来の姿じゃないって事か」
「省エネモードってところかな。本当なら、真白を乗せて移動出来るくらいの大きさなんだよ?」
魔力が足りなくて、とてもじゃないけど出来ないけどね、と肩を竦めて言うパッシオの本来の姿
気になるところだが、現実的に無理だと言う話だし、今議論するのはそれじゃない
「とすると、アイツらは一体何者だ?人間の男で、妖精の魔力を持ってるって事になるが……」
「そうだとしても、手段も方法も、目的も全く分からない。隠れの魔法少女を狙った理由もサッパリ。とにかく情報が足りないね」
何から何まで不可解過ぎる
奴らは人間なのか、妖精なのか
仮に人間ならどうやって妖精の魔力を操っているのか
仮に妖精なら人型になる程の魔力をどうやって集めているのか
そして、共通する隠れ魔法少女を追い回していた理由。どう見ても捕まえて何かしてやろうって魂胆だった筈
だけど、それをする理由が分からない
どう考えても、予想にもならない想像の中だけのお話にしかならない以上、話は八方塞がりになりつつあった
「ともかく、どうにも妙な連中がウロついているのは確かだね。もし、隠れの魔法少女を敢えて狙っているなら、戦いに慣れていない彼女達じゃとても危険だ」
「その隠れを探す方法ってのも分からないんだよな……。兎に角、警戒しておくくらいしか、今は出来ないか」
「後手後手に回ってしまうけどね」
ああいう連中に後手に回ってしまうのはもうどうしようもない。魔法庁には一応、この件についての情報は伝えている筈だし、動いてくれるだろう
俺たちは俺たちなりに、やれる事をやるしかない
とは言うものの、思い付くのは見回りくらいなのが世知辛いところだ
漫画やアニメでは都合良く進む物事も、現実になればこうも上手くいかないってのは、やっぱ現実とフィクションの差なんだろうなと無駄に実感した
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